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ウィルソンが近衛騎士と魔法師団詰所訪れたのは、争う音が消えてまもなく。
連絡を受けて出迎えたアイジスは内心「またか」と苦笑しつつも、快くウィルソンを招き入れた。
目の前にいる王の真意を即座に汲み取ったアイジスだが、表面上は今回の作戦の成果について尋ねられた事になっている。
なるべく早くお帰り願わなければ厄介な事になりかねない。
アイジスはさっそく表面上の本題について話し始めた。
「今回の作戦で目星をつけたのは計8名。全員無事確保の報告を受けています。
その他に怪しい動きをした者、逃げ出そうとした者はいませんでした。
後は捕縛した容疑者に聞くしかないかと。
色々と騒がしくしたうえ、一部宮内を破損させてしまい申し訳ありません」
「いや、今回の作戦がなければいずれ事を起こされていただろう。その程度は構わない」
「そう言っていただけると幸いです」
「あぁ」
「……」
「……」
表面上の本題しか言われていないアイジスは、決してそれ以上しゃべらない。
たとえ分かりきっていたとしても、王の心中を勘ぐるのは不敬だからだ。
そんなアイジスに業を煮やしたウィルソンは、恥ずかしそうに、申し訳無さそうに、視線を外しながら小さく言った。
「……その、あいつはどうしている?」
あいつ、という抽象的な言い方につっこむほどアイジスは野暮ではない。
「変わりありませんよ。相変わらず仕事はサボってばかりです。
でも、そうですね……あいつに教育を任せた新人の影響か、嫌々ながらもするようにはなってきていますね」
「そうか、上手くやれているならいい。先日怪我をしたと聞いたが、大丈夫そうか?」
「陛下もご存知でしょうが、副団長のレイルは治癒魔法にかけては最高峰といえる腕前です。痕も残っていないですから、ご心配なく」
そう聞くと、ウィルソンは安心したように肩の力を抜いた。
ただ、とアイジスはウィルソンに言う。
「あの“忠義の徒”の男は元あった魔法師団の団員で、あいつのことも知っていたそうです。これは本人が言っていた話ではありませんが、恐らく勧誘にあったのかと」
「勧誘……そうだな。あいつほど“忠義の徒”にふさわしい者はいないのかもしれないな。やはりまだ、俺を許してはくれないのだろうか……」
自嘲気味に苦笑しながら、否定など求めていない問いを投げかけるウィルソンに、それでも否とアイジスは首を横に振った。
「そのまま“忠義の徒”に参加することもできたはずです。けれどそうしなかったのは……」
「多少は、期待しても良いのだろうか?」
「どうでしょう。けれどあいつも、昔のままでいるわけではないと思いますよ」
そうであって欲しい、というのが本心ではあった。
アイジスから見て、確かにギノア達と共にいる間の彼は今を生きている。
けれど、特にウィルソンの話がでたときなどの彼は……
どちらが本当の彼なのか、あるいはどちらも彼であるのか。
人の心はわからないものだと、アイジスは出かかった嘆息を飲み込んだ。




