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床に崩れ落ちてじめじめとした暗いオーラを撒き散らすギノア。
クロノはその姿に思わず引いてしまう。
「ぐずっ、まさかお二人がそういう関係だったなんて俺……うう~」
今度はよく分からない事を言いながら泣き出した駄犬にクロノはどうしたものかとおろおろする。
「お、お前のこともちゃんと好きだぞ?」
「……は!?」
いきなり顔を上げてクロノを凝視したその目は見開かれていた。
「す、ストップ!そういう意味!?人間的に!?」
「他になんだよ?まさか、俺とルーエンが恋人同士にでも見えたのかよ!?」
「見えちゃったから聞いたんじゃないっすか!」
「この馬鹿っ!」
クロノは自分とルーエンが付き合っている姿を想像して顔をしかめる。
「ありえないだろうが!あるとしてもお前のほうだ!」
「やめてくださいよ!俺にはちゃんとっ、す、すすすす好きな人が、いるので!」
「え、誰?」
「い、今は秘密です!」
後輩の思わぬ発言に驚くクロノ。
誰だろうかと考えてみるが、そもそも自分に四六時中くっついているようなやつが一丁前に恋しているなんて想像できなかった。
そして、誰かの隣で幸せそうに笑うギノアを想像するのも何だか癪で、クロノは無言でギノアの頭を殴った。
「いてっ、えっ、なんで!?なんでっすか!?」
「知るか、ボケ」
殴られた頭を抱えて唸るギノアを見て、クロノは無言でしゃがみこむ。
そして目の前に来たギノアの少し高い頭を撫でる。
「えっ、先輩!?これはどんなご褒美なのでしょうかっ?」
「ご褒美じゃないっつの」
頭を撫でられて嬉しそうに目を細めて笑むギノア。
クロノの瞳に映る、前と変わらない後輩の姿。
「お前、俺のこと好き?」
その言葉は零れ落ちるようにクロノの口をついて出た。
静かな部屋に響いたその言葉に、ギノアは思わずクロノを見つめたまま固まってしまう。
どこか不安そうな、微かに揺れる黒い瞳。
いつもの彼らしくない様子に、ギノアはその言葉が冗談でもなんでもない、クロノの心の底からの問いなのだと察した。
頭を撫でていたクロノの手をギノアはとる。
すこしひんやりとしたその手を温めるように包みこんで、ギノアはしっかりとクロノの瞳を見つめた。
目の前の大切な人の体温を感じて、ギノアの胸の内に温かいものが満ちていく。
ギノアは溢れ出てくる想いに自然と顔をほころばせて言った。
「好きですよ、クロノ先輩。俺は、貴方のことが大好きです」




