表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花のない薔薇  作者: 愁
第二章 賢王と愚王
37/142

24

 結局窓を開けて風をうけ、服や髪を自然乾燥させたクロノは、気づくとまた窓の外を眺めて思考を始める。


ふっと影を落とした表情に、ルーエンはクロノが何を思っているのかを察した。

そして、進むこともできずに立ち竦んでいる姿に、ルーエンは口を出さずにいれなかった。


「クロノちゃん、ギノアちゃんを信じたら?」


「……え?」


振り返ってルーエンを見たクロノの表情は驚きに満ちていた。


「昔の事、ギノアちゃんに知られたくなかったんでしょう?

でもね、あの子はきっと昔の貴方を知っても変わらないでいると思うわよ」


「なんでそう思えるんだ?」


どこか一抹の希望を見たかのようなクロノの瞳の奥は、まだ深い怯えを抱えている。


「あの子が優しくてまっすぐで、貴方のこと、大好きだからよ」


どこか寂しそうに微笑んだルーエンは、絶対的な想いに縛られ、些細な心の変化に鈍感になった彼を優しく抱きしめた。


「きっとね、あの子は貴方が話すのを待っていてくれるわ。だから、今じゃなくていいのよ。話せるとクロノちゃんの心が感じたとき、思うままに話せばいい。

ギノアちゃんは全部、受け止めてくれるわよ。

貴方の大切な後輩を、信じてあげましょう?」


「……」


全て都合のいい事。確信なんてない憶測。

けれど知る限りのギノアという人間の性格は、心は、その憶測を限りなく真実になりうることだと思わせた。


力強い言葉に背中を押されて、クロノは暗い思考を振り切った。


「俺、あの馬鹿みたいにまっすぐな後輩を、信じてみようかな」


呟くように言ったクロノの言葉に頷いたルーエンは、ぱっとクロノを離すとくるりと扉に向かって向きを変えた。


「さ、私にできるのはここまで。

ギノアちゃ~ん!入ってらっしゃい、そこに居るのはわかってるわよ?」


「「えっっっ!?」」


扉に向かってそう言ったルーエンに、クロノともう一つの声が重なる。

そろ……と扉を開けて顔をのぞかせたのは、髪を若干湿らせたギノアだった。

クロノは困惑して一歩後ずさる。


「い、いつから」

「あ!べ、別に盗み聞きとかはしてないっすからね!

ただ先輩とルーエンさんがその……だ、抱き合っていたので、入れなかったといいますか……羨まムカついていたといいますか……」


「うらやま?」

「な、なんでもないっす!!!」


頬を染めたギノアは、拗ね気味にそう言うとズカズカと部屋の中に入る。

ルーエンはそんなギノアを見てくすりと笑ってから入れ替わるように部屋を出て行く。


「じゃあごゆっくり。クロノちゃん、ファイトよ~!」


そう言い残してルーエンがいなくなると、部屋は途端に静寂に包まれた。


クロノがおず、とギノアを見ると、ばちっと目が合って二人は慌てて視線を外す。


斜め上に顔を向けながら、横目でクロノを見たギノアはぼそぼそと話し始める。


「あの、先輩はルーエンさんが?」


「へ?」


質問の意味が理解できずに首をかしげるクロノ。

ギノアはそれを見て何やら唸ってからクロノの肩を掴んで意を決したように口を開いた。


「先輩はっ、ルーエンさんが……す、好きなんですか!?」

「好きだが?」

「ぐはぁっ!!!」


ギノアはその場に崩れ落ちた。

羨まムカついた、は羨ましい+ムカつくです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ