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「せんぱーい、タオルここに置いとくっすよ」
「おー」
色々と思うところのある三人だったが、一先ずは煙によって付いた汚れを落とすため、研究所の上にある建物に来ていた。
そこは休息がとれるように、寝室からキッチンからわりと何でも揃っている。
備え付けられたシャワールームは二人が同時に使える構造ではあったが、激しい論争の末一人ずつ交替で使うという結論に至り、一番汚れが酷かったクロノが真っ先にシャワーを浴びているところだ。
扉の向こうからギノアの気配が消えると、クロノは深い溜息をついた。
白くなった髪を水がもとの色へと変えていく。
流れ落ちる水滴を眺めながら、クロノは答えなどみつからない思考を続けていた。
オウドーによってクロノの過去の断片を知ってしまったギノア。
今は変わらずに接してきているが、心の中まではわからない。
もしかしたらもう笑顔で駆け寄ってくることもないかもしれない。
裏切りは事実であり、それはクロノ自身が痛いほど理解している。
今こうして生きていることさえも、きっと……。
どうすることがいいのかなんて、わからなかった。
どうすれば彼が変わらずにいてくれるのかなんて、わからなかった。
いっそ全てを話してしまえばいいのかもしれない。
けれどそれはクロノの心が悲鳴を上げながら「できない」と告げている。
クロノが過去と向き合うことは、まだできそうにないようだ。
クロノがシャワールームから出て二人の待つ客間に行くと、ギノアは頬を赤く染め、ルーエンは意味深に微笑んだ。
「お、俺!次行って来ます!」
「え、あぁ」
ばっと椅子から立ち上がって一目散に駆けて行くギノアに、クロノは「嫌われたか」と内心思った。
が、ルーエンの一言で思考が止まった。
「あ~ん、もう!クロノちゃんってば誘ってるの?」
「……は?」
目を丸くして首を傾げるクロノをよそに、ルーエンはしゃべり続ける。
「そんな格好されたら、ギノアちゃん派の私も心が揺らいじゃうわぁ。
うぶうぶなギノアちゃんなら耐えられなくて当然よね~」
「まてまて。どこをどうみたらそうなる?」
「え、無自覚?今のクロノちゃん、全てが凶器よ?」
「……」
そう言いながらルーエンはクロノの姿を頭からつま先まで見回す。
所々湿ったシャツは肌を透けさせている。
晒された肌は火照ってうっすらと赤みがかり、濡れた黒髪から落ちた水滴は細い首を撫でていく。
「……はぁ、えろい」
「しみじみ言うな!」
もともと美しい容姿をしているが、どこか大雑把で粗暴な印象のあったクロノ。
その雰囲気に隠されていた妖艶さが今や惜しげもなくあらわれている。
格好どうなろうと、中身に変化はないのが残念だ。




