22
心の叫びも、沈みゆく感情も、すべてお構いなしに時は進んで行く。
体の芯が凍えるような恐怖を抱えたクロノに、オウドーは尚も言葉を投げかける。
「それだけじゃない!噂じゃあお前は――」
「ちょっと、おしゃべりが過ぎるわよ。
クロノちゃんのことは、もう口出ししないでって言ったわよね?」
言いかけたオウドーの声を遮ったのは、意外にも冷たい口調のルーエンだった。
「私が聞いたのは“忠義の徒”に加担した理由だけ。それ以外は言わなくていい。
言いたいなら魔法師団の詰所での尋問中にしなさい」
クロノの心情を読み取ってか、ギノアとの間に入ったルーエン。
その表情は厳しいが、瞳は誰へのものか、哀しみを滲ませている。
「……今回の件、止められなかった私にも責任があるわ。だから怨むなら私にしなさい。それがせめてでも、私が上司として部下にできることだわ」
そう、ルーエンはまっすぐにオウドーを見て言った。
「……」
オウドーは何かを言おうと口を開いたが、すぐに言葉を飲み込んだ。
やがて重い沈黙が続いた部屋に応援が駆けつけ、オウドーを連行して行く。
部屋を去る前、オウドーは一言だけルーエンに残した。
数人の魔法師団の団員に囲まれてオウドーは研究所を後にする。
研究室のドアを開けて遠巻きに彼を見ていた研究所の職員達は、眼鏡の奥で涙をためるルーエンの姿をとらえた。
「ルーエン……」
「大丈夫っすか?」
心配してくれる二人に、ルーエンは涙を拭って笑みを湛えてみせた。
ほんの少しだけ眉を寄せて、困ったような、やんわりとした微笑みを。
「えぇ、大丈夫」
どこかで道を別った人が、この先報われる日が来ることを願って。
・・・・・・
『――…貴方の部下になれてよかった』




