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穏やかな昼過ぎ、短い栗色の癖毛をゆらして王宮を走っているのは魔法師団の一人、ギノア。
まだ新人の彼はよく先輩の使いっぱしりをしている。
今日もまた、魔法師団団長の鬼のような形相に背中を押され、姿が見えないある人を捜し回っているのだった。
ギノアがすれ違うメイド達に好奇の目で見られながら辿り着いたのは、王宮の北にある書架塔と呼ばれる塔。
中は本で埋め尽くされ、王宮の図書館のような役割を担っていた。
重厚な扉を開け中を窺うと、捜し人は窓辺の本に埋もれたソファで眠りに落ちていた。
丁度陽光が差し、実に寝心地が良さそうだ。
その人物の穏やかな寝顔にギノアは思わず見惚れてしまうが、ぶんぶんと頭をふって切り替える。
「先輩っ!クロノ先輩!おきてく~だ~さ~い~っ!!!」
クロノと呼ばれた男は、突如耳元で発せられた色気も何もないモーニングコールに不愉快そうに目を開けた。
肩近くまで伸びた艶やかな黒髪がゆれ、白い肌をなでていく。
視界にわんわん喚くうるさい後輩をうつしたクロノは、普通にしていれば美しい顔を盛大にゆがめて嫌悪を表した。
「なに。うるさい。喚くな駄犬」
「駄犬!?」
クロノは駄け……ギノアに辺りを見るよう促す。
ここは書架塔。つまりは図書館である。
大声で喚いていたギノアは、周りにいた利用者に思いっきり睨まれているのだった。
・・・・・・
「先輩のせいでしばらく出禁になったっす」
ぶっすーと、くりっとした目が特徴的な整った顔を膨らませながら、ギノアは数歩前を歩く黒髪の青年に文句を言った。
「いや、大声出したのお前だし。てか俺まで出禁とか意味分からんから。どうしてくれんだよ、この駄犬」
「さっきらか駄犬駄犬ってひどくないっすか!?さすがの俺でも傷つきますよ!?」
「じゃあ少しは大人しくすることを学べ」
すたすたと前を行くクロノはシャツにズボンとラフな格好。一方のギノアは右腕に魔法師団の薔薇のエンブレムのはいった制服に身を包んでいる。
クロノも一応は魔法師団の一員だが、堅苦しいと言って制服は滅多に着ない。
だがこれでもちゃんと王の前に出るときや祭典・式典のときなどは、地味にしつこい魔法師団の副団長の努力あって、制服をきちんと着るようにはなったのだ。
まずそれらに顔を出すほうが珍しくはあるのだが。
新人というだけあって、ギノアはまだ二週間前に魔法師団に入ったばかり。
一方のクロノは王宮に仕えている期間自体は長く、ほとんど仕事をさぼりがちにも関わらず、魔法師団団長にも一目置かれている存在だった。
そんな不真面目が歩いているようなクロノの矯正もかね、ギノアの教育係はクロノになったのだが、最早どちらが教育されるべきか分からない状態である。
「せんぱ~いっ!歩くの速いっす!おいてかないでくださ~い!」
「置いてこうとしてんだよ、馬鹿」




