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「あぁそうだ。コレを買ったとき、お店の人が『疲れてるようなら無理なさらないで下さい』って伝えてくれって。いつも買うのと違うとも言ってましたけど?」
「そう。わざわざありがとう。これはフレーバーティーでね、ラベンダーの香りがするだろう?僕はあまりフレーバーティーは飲まないから、店の人も不思議に感じたんだと思うよ」
「じゃあなんでまたこの茶葉を選んだんすか?」
チョコケーキを平らげて紅茶の香りをくんくんしていたギノアが聞くと、レイルは少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「これはクロノに飲ませようかと思ってね。ギノアのこともいきなり任せてしまったし、最近色々あったしね。この香りで少しでもリラックスできたらと思って」
「……どうも」
「すっとぉっぷ!!!え、え、副団長も先輩のことっ!?」
「いや、ギノアの考えてるような事は無いからね」
「何の話?」
「秘密だよ。ね、ギノア」
「はいっす!」
意味深な目配せをしたギノアとレイルは笑い合う。
一人放置されているクロノはそんな二人をクエスチョンマークいっぱいに眺めるしかなかった。
「あとで君よりストレス溜まってそうなアイジスにもあげなきゃだね」
「そうしてください」
・・・・・・
一息つき終わると、レイルは本題を話しはじめた。
「さて、僕が報告を受けたのは街で魔法使いが暴れて辺りを破壊したこと。
そこに君たち二人が居合わせてたってこと。詳しい話を聞かせてくれるかな」
「……俺が」
そもそもの男の目的を知らないギノアも、背筋を伸ばして話を聞く体勢をとる。
「騎士に連れてかれた男は、元魔法師団団員でした。って言っても、抜けたんじゃなくてそのものが解体された魔法師団の団員って意味です」
それでレイルには大方の事情は伝わったようだが、まだ魔法師団に入ったばかりなギノアは理解できていないようだった。
むむむ、と考え込むギノアに苦笑を向けて、クロノはわかりやすく説明する。
「えっとな、革命前にあった魔法師団は現王の即位と共に解体されたんだ。
今あるのは、そのあとにつくられた別物の魔法師団なんだよ」
「えっ、そうなんすか!?」
「ん。で、男は自分たちを“忠義の徒”と呼ぶレジスタンスだったんです」
それより先の事情を口にすることをクロノはためらった。
おそらくレイルには事情がわかっているだろうから構わないが、視界に映る無垢な後輩にクロノは「知られたくない」と強く思ったのだ。
自分が王宮内で呼ばれている“裏切り者”の意味も、きっと彼は理解していないのだから。




