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街で一騒動あった、という報告を受けたレイルは、王宮の門前でつかいにやっていた二人を気が気じゃない思いで待っていた。
「遅い。もう三時を過ぎてるじゃないか」
いっこうに見えない部下達に焦りが募る。
レイルが門前を三往復ほどした頃、やっとぼんやりと走る二人組が見えてきた。
何かを大事そうに抱えて先を来るギノアの後に、走ってはいるがだいぶ気を抜いているクロノがしっかりと確認できたとき、レイルは走り出した。
「遅いっ!」
がばっと二人を抱きしめながらも、レイルの口をついたのは悪態だった。
「わわっ、すみません副団長っ」
「……遅くなりました」
らしくないレイルに驚き、大人しく抱きしめらる二人。
しばらくして二人から離れたレイルは二人が無事か見回し、包帯の巻かれたクロノの右手をがしっと掴んだ。
「この右手はどうしたんだい!?」
「いやぁ、ガラス片でちょっと」
「副団長!先輩に治癒魔法かけてあげて欲しいっす!」
「そのつもりだよ。二人ともついておいで」
「え。いいですから、このくらい」
申し出を断ろうとしたクロノに、隣と正面から同時に異が唱えられた。
「「良くない(っす)!!!」」
「お、おぅ」
物凄い二人の勢いに、クロノは頷くしかなかった。
・・・・・
結局背中をギノアに押されながらクロノはレイルの仕事部屋まで連行された。
「大人しく座ってるんだよ。なるべく動かないこと。わかったら手を出して」
「はいはい」
ソファに座らされたクロノの前に膝をついたレイルは、すでに血の止まっているクロノの右手をとる。
「恩恵」
レイルが唱えるとクロノの右手を温かな光が包み、ゆっくりと傷を塞いでいく。
ほんの十秒ほどで手の傷はすっかり治癒され元通りになる。
「軽く動かしてみて違和感は無いかい?」
「大丈夫です」
「よかった。そうだ、買い物はちゃんとできたかな?」
「あ、これっす!問題ないっすよね?」
ほっと胸を撫で下ろしたレイルにギノアは茶葉などの入った袋とケーキの箱を差し出す。
それを受け取って中身を確認したレイルは頷くと、ちゃんとおつかいを果たした二人の頭を子供の様になでて褒めた。
「あぅ、副団長のなでなでもなかなかに……でもやっぱ先輩が一番っすね」
「どうでも良い情報ありがとな」
「ふふ、一息つこうか。買って来てくれたケーキと茶葉もあることだしね」
「あ!副団長、俺に紅茶の淹れ方教えてくださいっす!」
「いいよ、おいで」
クロノにお茶を淹れられるようになったら飲ませる、というギノアの約束は吹っ飛んではいなかったらしい。
らんらんとギノアはレイルについて給湯室にお湯をもらいに出て行った。




