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二人はしばらく瓦礫を椅子に座って、あたりを眺めていた。
建物には大きな穴が開き、瓦礫は山の様だ。
大通りからも野次馬が見物に来ていて、騎士団が必死に場を落ち着かせようとしている。
こてん、とギノアは無言のままクロノの肩に頭をのせてきた。
お互いに何か言うわけでもなく、ただ沈黙が広がる。
その状況に耐えられなくなったクロノは渋々口を開いた。
「……悪かったな」
ぼそっと告げた謝罪の言葉に、ギノアはふるふると頭を横に振った。
「先輩は悪くない。でも、ちょっと悲しいっす」
「悲しい?」
クロノの問いに答える前に、ギノアはぎゅっと温もりを求めるようにクロノを抱きしめた。
「俺、無力っすね。先輩にまだ頼ってもらえない」
「それは……」
そっと、血に濡れたクロノの右手をとってギノアは瞳を伏せた。
「怪我、痛かったですよね。もっと早くに駆けつければよかった」
「お前は何も負い目に感じなくていいんだよ。俺の自業自得だし。
来てくれただけで……助かったよ」
「ホントっすか?」
切実そうな瞳でクロノをみつめるギノアに、クロノはふっと笑みをこぼした。
さっきまでとは別人だ。
「ほんとだよ。ちゃんとお前の事頼りにしてる。
……お前は忠犬だしな!」
「忠犬っ!?あぅ、でも頼ってもらえるならそれで良いような……でもなぁ。
てゆうかコレって格上げされた?」
一人でわたわたと考え込むギノアにクロノはすっかり毒気を抜かれてしまった。
「ははっ、お前ってほんと俺専用の犬ってかんじ。尻尾と耳見えてきそうだ」
「せ、先輩専用……!俺、犬でいいです!」
「いやただの冗談だから」
・・・・・
右手の応急処置を済ませたクロノは、そういえば、と今日の外出の目的を思い出した。
「おいギノア、買った物はどこだ?」
「あっ、夢中だったんでつい放り出しちゃって……」
あたりを見回したギノアは、野次馬をおさえている騎士の足元に転がった袋類を見つけた。
当然、放り出された袋の中身は散乱している。
「茶葉と魔法に使う物はセーフっすけど」
「あぁ、どうしようもねぇな。それは」
二人の視線の先には、ぐちゃっと潰れたケーキの箱が。
中身は想像するまでもない。
「今何時だ?」
「えっと、二時半っす!」
「よし、ダッシュで買いなおして帰るぞ!」
「はいっす!」
二人は勢いよく路地裏を抜け出すと、大通りのスイーツ店を目指して走った。
客入りのピークをむかえていたスイーツ店に、再び男二人で入るという恥ずかしさを抱えながらもなんとか同じ物を買い揃えた二人は、今度こそレイルの待つ魔法師団詰め所へと急いで帰ったのだった。




