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「我らの王は、今もなおただ一人。そうではないか?」
そう聞いてくる男に、クロノの瞳は揺れた。
「その問いは何の関係がある?」
「我らはウィルソン暗殺を目的とする“忠義の徒”として活動している。貴殿にとっての王がヴィジェーン様お一人ならば、ぜひとも力を貸して欲しい」
「レジスタンスかっ!」
クロノは唖然とした。
前王・ヴィジェーンは多くの国民にとって愚王そのものだったかもしれない。
だが、王宮に仕えて居た者は少なからずヴィジェーンに尊敬と敬愛を捧げていた。
狂気的なカリスマ性が、彼を取り巻く周囲を惹きつけてやまなかったのだ。
そして革命によって名を上げ、王座についたウィルソンを“忠義の徒”なる彼らは認められなかった。認めるはずもなかった。
自分たちの唯一の王を、殺されたのだから。
その火種は彼らを、今やっと自由を手にして喜ぶ人々の生活を崩壊させる、レジスタンスへとしてしまった。
いや、なにも“忠義の徒”に賛同しているのは前王に忠義心を持つものだけではないだろう。
今二人がいるこの路地裏。
革命時に権力を喪失した者、家族を失って行き場をなくした者、ささやかでも確かな生活を守りたかった反革命派だった者。
そういった世界にはじかれてしまった者の行き着くこの狭い路地裏。
ここにいる者も、救ってなどくれない現王に不満をもっているのだ。
彼らの気持ちは痛いほど分かる。
けれどクロノにとって、今の生活は決して辛いだけのものではないのも事実だった。
さらに、クロノ自身が彼らに後ろ暗い事があるのも大きい。
「すまないが、協力はできない」
目を逸らし言うクロノに、慌てて男は縋りついた。
「なぜ!?貴殿ほどの魔法使いがいれば、我らの勝利は揺るがないだろうに!
貴殿はヴィジェーン様の無念をなんとも思わないのか!?」
「……っ、すまない」
クロノの気持ちが変わらないと見ると、男はのろりとクロノから手を離した。
そして一歩、二歩と距離を取ると、徐に両腕を上げクロノに向ける。
「貴殿に怨みはない無い。だが、店で貴殿が連れていたのは現魔法師団の制服を着た者だった。貴殿が我々と共に来ないならば、早くに消えてもらわねば計画に支障が出てしまう。
……悪いが、先にヴィジェーン様の下へ行ってくれ。
光刃!!!」
男が叫ぶと電撃のように光がクロノに襲いかかった。
「ぐ……っ!」
すんでで大きく右によけるも、狭い路地裏の壁にぶつかってしまう。
クロノを外した光の刃は大きな音を立てて奥の店の壁を破壊する。
当たっていればひとたまりも無かっただろう。
さすがは元魔法師団団員である。
いきなり始まった騒ぎに、路地裏にいた人々は我先にと逃げていく。
あっという間に路地裏はクロノと男の二人きりになった。
世界観がフランスやイタリアイメージなので、魔法の技名もそっちに合わせています。
馴染みのない感じになっててすみません…




