7
レイルの言った刻限は午後三時。もうすぐ二時間をきる。
大通りに戻ってきた二人は王宮への道を歩いていた。
ギノアの手には先ほど露店で買ったたっぷりのクリームが入ったクレープが。
クロノの手には同じく露店で買った揚げたて熱々のドーナツが。
すっかり二人は休日気分でおつかいを満喫していた。
「先輩っ!こっちの一口あげるんでドーナツも一口くださいっ!」
「やだよ。もうあんま残ってねーし」
「えーっ!ケチッ」
「ケチでいい。お前はクレープだけ食って満足してろ」
そう言うとクロノは残っていたドーナツをすべて口の中にほおってしまう。
「あぁっ!ひどいっ」
あまりにショックだったのか、握りつぶされたクレープからあふれたクリームが地面に落ちて、ギノアはまたも叫ぶのだった。
・・・・・
「あ、なんかやってますよ!」
「ん?劇か」
大通りの一角に簡易的に造られた舞台の上で、なにやら演劇をやっているらしく、街の人々が集まっていた。
二人もとりあえず寄って観ることにし、人ごみに近づいていく。
「さぁさぁ覚悟!この騎士団長ウィルソンが、悪魔のその首いただいてやる!」
威勢のいい騎士の格好をした役者の声が響き、その前で跪いている役者へと剣の模型を振りかざす。
観客はそれを見て大いに盛り上がり、拍手喝采を役者へ浴びせている。
「これ、王様の話ですね。王様って元は騎士団長っだんすよね」
賢王と名高い王・ウィルソンは、革命以前は王宮騎士団の団長をしていた。
革命後に多くの部下達に推されて名乗りを上げ、王座についたのだ。
王宮にいる騎士達は王宮騎士団という王直属の騎士達で、現在は元ウィルソンの部下が多く在籍している。
そのために自分たちが革命の功労者と驕る者もいて、そういった者がレイルの嫌う騎士の多くだ。
革命は国民の意思だった。
“愚王に制裁を。我々に真の自由を”
それを合言葉に成功を収めた革命は国民の誇りであり、自由の象徴だ。
劇を終え挨拶をする役者に沢山の街の人々の笑顔と拍手が沸き起こる。
たいして興味もなく、ただそれを眺めるギノア。
クロノの視線は舞台の上から動かない。
その瞳は、物言いたげに揺れている。
愚王、愚王と前王を卑下し、賢王と現王を称える人々。
「あぁ、なんて憎たらしいんだ」




