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王都・ウィンドムリスは王国随一の人口を誇り、国中から人々が集まる賑やかな街だ。
一年と少し前、“革命”が起こったときにはこの街も多大なる被害を受けたが、今ではすっかり元の通りに復興がなされ、商人たちの声も街中に行き交っている。
相変わらずラフな格好をしたままのクロノと、魔術師団の制服姿のギノアは人ごみの中を流されながら歩いていた。
「えーっと、まずは……茶葉?ってこれ超私的なおつかいじゃないっすか?」
「茶葉、菓子、あとは魔法関係の消耗品か。確かにだいぶ私的だな」
「ちょ、先輩近いっす!!」
ギノアが持っていたおつかいメモをのぞくために身体を密着させてきたクロノに、ギノアはたじたじになる。
「人が多いんだからしょうがないだろ。つか、自分は散々くっついてくんのに、俺はダメなのかよ?意味わかんないぞ」
「う~、そうっすけど、そうなんすけど~っ!」
「あ、指定されてる紅茶店だ。いくぞ」
「は、はい……」
大通りを少し抜けたところに建つ、落ち着いた雰囲気の紅茶店に二人は入る。
そこは客のほとんどが女性で、男二人のクロノとギノアはかなり目立っていた。
「アウェーだな」
「そうっすね。副団長はいっつも一人で来てるんすかね?あ、でも副団長なら違和感ないかも」
「それ、本人に言ったら殺されるぞ」
レイルの女性的な見た目は美しいが、本人はかなり気にしている。
なんでも、よくそれを騎士達にからかわれていたらしい。
そこからくる騎士への怨みはかなり根深く、レイルは騎士を毛嫌いしている。
まぁ誰であれ、見た目が女っぽいことに関する言葉を発したものは半殺しにされてきたが。
クロノとギノアは店内を見て周り、指定された聞いたこともない名前の茶葉を探す。
「けっこう色んな種類あんだな」
「ですね。あっ、先輩!みてみて!これ、花びらが入ってますよ!」
ギノアがぐいぐいと腕を引っ張るので、しかたなくそちらを見たクロノは、すぐに興味深そうにその茶葉の入った瓶を手に取った。
「すごいな。あ、薔薇も入ってるんじゃないか?これ」
「俺たちにぴったりっすね!」
魔法師団の紋章に描かれた薔薇をクロノに見せながら笑うギノア。
なんとも無邪気なその姿に、微かに痛む胸を隠してクロノは笑った。
「ふふ、それは花びらの入ったフレーバーティーなんです」
口元を隠して上品に笑いながら話しかけてきたのはこの紅茶店の店主の女性だった。
「すみません、うるさくして」
「いいえ、大丈夫ですよ。魔法師団の方でしょう?レイル様には御贔屓にしてもらってますから」
「そうですか。実はそのレイルの使いなんですよ」
「あら、そうだったんですね!じゃあいつも買われる茶葉かしら?」
いつも、がわからずに苦笑したクロノは、ギノアに持っていた買うものが書かれた紙を店主に渡させた。
「あら?違ったみたい。こっちですよ」
店主は店の端にあった背の高い棚から一つの瓶を取る。
「カルチェラタンです。レイル様、お疲れのようでしたら無理なさらないようお伝え下さい」
「はい。ありがとうございます」
二人は頭の中をクエスチョンマークでいっぱいにしながら紅茶を買うと、次の店に向かった。




