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身なりを整えたクロノは、アデルに連れられてヴィジェーンの執務室の前へとやって来た。
「陛下、お連れしました」
ノックをしてアデルがそう言うと、程なくして執務室の大きな扉が開かれた。
「ご苦労さん」
「ヴァニエスト様!」
ひょいと顔を出したのは、ヴィジェーンと見間違う銀髪の持ち主。
ただその銀髪はヴィジェーンが長髪なことと対照的に耳にかかる程度の長さで、両耳には金で出来た飾りがつけられている。背丈はヴィジェーンより少し高いくらいだろうか。
そして何より目を引くのが、その瞳だった。
右目はヴィジェーンと同じルビーのような真紅だが、左目は色を失い、同時に光も失っているように見える。
アデルが丁寧に腰を折って挨拶をしている後ろで、思わず彼の姿を凝視して
しまったクロノは、それに気づいた彼に苦笑された。
「初対面の相手に熱視線を送るのはどうかと思うぞ、ガキ」
「す、すみません」
急いで謝ったクロノにさして気にした様子もなく彼は「次から気をつけろよ」とだけ言うとアデルに向き直った。
「特に他に用件はないから仕事に戻れってさ。あいつ人使い粗くて悪いな」
「そういう仕事ですので。では、失礼させていただきます」
「はいはい、お疲れ」
わざわざクロノにも礼をしてから、アデルはその場を離れていった。
「お前はこっちな」
ちょいちょい、と手招きをされ、幾分か緊張しながらクロノは執務室へ足を踏み入れた。
「失礼します」
一度頭を下げてから入った執務室は、一面に赤い絨毯がひかれており、派手な調度品こそないものの、そこにある一つ一つが質感からして高価な物と伝わってくる。
そしてその奥、執務室からバルコニーへ続くガラス張りの扉の前に、クロノへ値踏みするような視線を寄越しながらヴィジェーンは立っていた。
「……少しはマシになったな」
頷きながら発せられたその言葉に、クロノはひとまずほっと一息つく。
「なぁ、お前が紹介したいって言ってたのはもしかしてコイツか?」
クロノを指さして彼がそう言うと、ヴィジェーンは短く「そうだ」とだけ返す。
ヴィジェーンの肯定に、彼は大げさに驚き目を見開いた。
「え!?わざわざ俺に紹介したかったのってガキかよ!いつの間に父親になってたんだよ、てか誰との子だよ!」
「俺の子なわけがないだろうが」
「養子?」
「違う」
眉間にしわが寄り眼光をさらに鋭くしたヴィジェーンに、彼は心底楽しそうに声を上げて笑った。
「そんなに怒るなって、冗談だろ」
「……」
肩をすくめた彼に、ヴィジェーンは不機嫌そうに目を細めたまま詰め寄る。
そして鋭い視線をクロノに向けて言った。
「あれはこの前の暗殺者の息子だ。魔法使いであることぐらい、お前ならば見ただけでわかるだろう」
暗殺者、という言葉に、わずかにクロノの肩が震えた。
脳裏に浮かんだエイトの姿に、無意識に拳を握り締める。
そんなクロノの様子に僅かに苦笑しながら、彼はヴィジェーンへ問うた。
「まぁな。けど、本当に連れて来るとは思わなかった。魔法師団に入れるつもりか?」
「いや、しばらくこいつは行儀見習いの名目でお前のもとに通わせるつもりだ」
「っ!?」
驚きを隠せないクロノとは対照的に、彼は引っ掛かりのある言葉遣いに首を傾げた。
「名目、ってことは真意は別か?」
「あぁ」




