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花のない薔薇  作者: 愁
閑話 先輩と呼び捨て
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 仕切り直し、と淹れなおした紅茶に口をつけながら、ギノアはふと浮かんだ疑問を投げかけた。


「そういえば、先輩って俺の他にも後輩っていたことあるんすか?俺が魔法師団に入る前とか」


もしいたら……と考えて、ギノアの胸の奥はモヤモヤとした。


今まで自分に向けてくれていた、笑顔も、信頼も、全部他の誰かにも向けられていたら。

想像するだけで嫌になるくらい、自分だけであって欲しいと思う。

もし後輩が他にいたとしても、自分だけが特別であって欲しいと思う。


そんなギノアの独占欲なんて知りもせず、クロノは首を横に振る。


「お前より前に魔法師団に入ってきた奴ならいるけど、直接関わったのはお前が

初めてだな」


「じゃあ、先輩の後輩は俺だけ?」


「まぁ、そうなるんじゃないか?」


期待した通りの言葉に、ギノアはへにゃりと破顔する。


「まてまて、何だその顔?俺に後輩がいなかったら何なんだよ?」


怪訝な表情を浮かべたクロノに、ギノアは嬉しそうに言った。


「先輩にはヒミツっす!」






今はまだ、たった一人の後輩でいい。

けれどいつかはもっと違う形の“特別”になりたい。


そしてその時は改めて、先輩後輩とは違う関係を表して。



「いつか、先輩が呼び捨てを許してくれたら教えてあげますっ」



あなたの名前を呼ばせてください。

次章以降過去編に戻ります。

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