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闇に映える銀髪をなびかせ、馬の上から炎に包まれた村を見渡したその人物は、
やがて座り込んだままのクロノへと顔を向けた。
切れ長の瞳は宝石のように美しい紅だが、その射貫くような視線は厳しさも感じ
させる。
「これはお前の魔法か?」
その問いに、クロノはただ頷いた。
言葉を発するのも憚られるほどに目の前の人物が持つ雰囲気は、村人たちが出す殺気とは比べ物にならないほど鋭く、また重圧的でもあったのだ。
彼はクロノの肯定に、馬上から軽やかに降りるとクロノへ一歩、歩み寄った。
風になびく銀色に、鋭い瞳に、彼の一挙手一投足に、クロノは視線が外せない。
そんなクロノを意にも介さず、彼は再び淡々と燃える黒き炎を見て問うた。
「これは、どんな魔法だ?」
どんな魔法か、など問われてもクロノにもわからなかった。
けれど、ただ一つだけ確かに言えることがある。
黒き炎に先ほどの地獄を思い浮かべ、胸に苦痛を抱きながらクロノは答えた。
胡麻化さず、ただまっすぐに、目の前の人物を見つめて。
「ただ、殺すだけの魔法、です」
それだけが、すべてで。
それだけが、真実だった。
殺すためだけの魔法を使ったと、つまりは殺したと、言い切ったその姿に。
ひどく傷つきながら、それでも逸らされないその瞳に。
そして何よりその答えに。
彼はふっと笑みをこぼし、満足そうに目の前の座り込む子供に手を差し出した。
「気に入った。我が名はヴィジェーン。この国の王であり、貴様の王だ。
小さき魔法使いよ、俺のもとへ来い。
俺のためにその力を使い、俺のために生き、そして死ね」
高慢に、不遜に、王者にのみ許されるその態度でヴィジェーンは告げた。
一方でクロノは、ヴィジェーンという名に少なからず動揺した。
エイトが殺そうとした人であり、自身が殺すよう言われた人物だ。
ヴィジェーンを殺す気などなかったうえ、それをクロノに命じた人物たちは皆跡形もなく消えた。
けれど彼がここにいるということは、ここが彼を殺めようとした人物の居た場所だと知り、滅ぼすために来たということだろう。
ならば何故、彼は殺す力を持つクロノをその懐に抱え込もうとするのだろうか。
クロノには目の前の王の考えがわからなかった。




