第八話:当日
月曜日。
今日は祝日だ。
日比谷公園のトイレに、午前六時十分待ち合わせ。
俺は手袋をはめている。
佐藤からは時限装置を受け取り、俺はペットボトルを渡した。
用心のため、俺と佐藤は距離をとる。
近づかないし、話さない。
前日に俺は、
「明日は祝日で休みだろ。空のペットボトルで、どれくらい騒ぎになるか、早朝の地下鉄で実験しようぜ」と佐藤に言った。
「じゃあ、俺は時限装置を用意する。お前はペットボトルを用意しろ」
「ああ」
偉そうな態度だな、このバカは。
計画は丸の内線霞ケ関駅から、それぞれ逆方向に一駅移動。
佐藤は国会議事堂前駅、俺は銀座駅で降りて、また地下鉄ですぐに戻って来る。
霞ケ関駅で降りる寸前に、紙袋の中の時限装置を点けて、そのまま逃げる。
午前六時三十一分。
霞ケ関駅を荻窪行に佐藤、池袋行に俺が乗って、同時に出発。
祝日の早朝なんで、列車内はガラガラだ。
向こうの列車で、佐藤の奴は手を振っている。
間抜けな顔だなと俺は思った。
もちろん、俺は銀座駅では降りず、その次の東京駅まで行って、山手線に乗り換えて、上野駅で降りて家に帰った。
途中で、ペットボトルと時限装置、紙袋、手袋は捨てた。
念のため、バラしていろんな場所に。
家に帰って、テレビを点けて、ニュースを見る。
『霞ケ関駅で爆発事故。男子中学生一名、意識不明の重体。丸の内線は全線ストップ』
自分の部屋に戻り、ゲラゲラと一人笑い続けた。
四時間くらい。