第四話:四日前
木曜日。
昼休み。
眠い。
教室の一番後ろの席で、うつらうつらしていたら、また佐藤がやって来た。
「いろいろと考えたんだが、実験の必要性があるな」
「何の話だ」
「お前、記憶力が無いな。東京都民皆殺し計画だよ」
佐藤は、まだふざけてんのか。
何を実験するんだ。
「ネットで見たんだよ。ある国で、十五年くらい前に地下鉄で自殺しようとした奴がいるんだ。なんで地下鉄なのかわからんけど」
「ふーん」
佐藤はスカイツリーで、『携帯電話、ネットなど足がつくのは一切使わない。紙にも書かない』とか言ってたはずなんだが。
もう忘れたのか。
やはりバカだな。
俺も忘れっぽいけど。
「地下鉄でペットボトルに入れたガソリンを撒いて、火を点けたようだ」
「へー、随分、無茶なことするねえ」
「自殺するためで、他人を殺すつもりはなかったらしいけどな。その結果、二百人近く死んだらしい。本人は怖くなって逃げたようだ。ちなみに捕まったけど、死刑にはならなかった」
「十三人どころじゃないな」
「そうなんだよ。例のカルト教団は何億円かけて毒ガス作って、十三人。それにくらべて、どれくらいの大きさのペットボトルかしらんが、仮に五百ミリリットルのガソリンっていくらだ。百円もしないだろ。それで二百人をぶっ殺した。すごいコスパだよな」と佐藤がゲラゲラと笑う。
変な顔だなと俺は思った。
「しかし、たかがガソリンでどうやって、東京都民を皆殺しに出来るんだよ」
「だから、とりあえず実験だって言ってんだろ。お前は本当に頭が悪いな」と佐藤は、いつものようにニヤニヤしながら言った。
こいつはアホだ。
それはともかく、ガソリンか。
一気に現実的になってきた。
これはまずいんじゃないかな。
佐藤の奴は、どこまで本気なのか。
佐藤が捕まったら、俺は共犯扱いになってしまう可能性がある。
人生終わり。
もし、佐藤が本当に実行するつもりなら、どうするのが一番良いだろうか。
その前に、佐藤を殺すしかないな。