日曜日には気を付けて!!
僕は芹沢信幸45歳、介護歴9年の中堅だ。神戸にある小規模多機能型居宅介護施設「ディオーサ愛の園」と言うところで、常勤として勤めている。
さて、いきなりだけど、日曜日の街には感じの悪い人が多い気がする。
ついさっきもいた。
僕が利用者宅への訪問支援から帰ってきて、施設の駐車場に車を停めようとしたら、その前にでかい乗用車が停車していた。その車は、僕が運転する施設車が、今からバックして入庫しますよという位置に行ってもビクともしない。仕方ないので、僕は車から降りて言いに行った。
「すいません。駐車場に車を停めたいので、ちょっと前に出てもらえませんか?」
僕はそのように笑みを浮かべ、非常なる低姿勢で言った。車の中を見ると、幼稚園くらいだろうか?ちっこい子供も2人乗っている。運転手は35歳くらいだろうか?短髪で眼鏡で明細柄のズボンを履いていたのだけど、その人は僕を一瞥すると、なにも言わず表情も変えず、車を走らせて行ってしまった――。
こないだもこんなことがあった。
僕は訪問するために利用者宅に行こうと団地の中をしばらく歩いていた。季節はいよいよ春めいてきて、暖かで静かなご機嫌な朝だった。
「すいません」
すると不意に呼び止められたので、声がする方を見てみたら、10メートル程離れた所に、ちょび髭メガネで中肉中背の40歳くらいの男が、携帯を持ってこちらに向かって歩いてきていた。
「はい」
僕が立ち止まって返事すると、ちょび髭は携帯を見ながら聞いてきた。
「ちょっと聞きたいんですが、南落合1丁目1番てどこですか?」
「いやあちょっと住所だけでは分からないんで地図とかないですか?」
僕はそう聞き返したのだが、ちょび髭は、すぐには答えず携帯を少しいじってから言った。
「ここは南落合には違いないんですね?」
「はい」
僕は答え、ちょび髭が携帯をいじり続けていたので、地図を出そうとしているのかもしれないと思い、しばらくそこに止まった。するとちょび髭がようやく口を聞いた。
「分からないんですね?」
「はい」
僕が答えると、ちょび髭は口をとんがらせて5回程小さく頷くと、なにも言わずに自分の車が停めてある元いた位置に行ってしまった――。
そうなのだ。日曜日の感じの悪い人たちは、なにも言わずにどっかに行ってしまうのだ。それにしても、どうしてなにも言わないのだろう?「すいません」とか「ありがとうございます」とか、ちょっと一言添えれば良いだけなのに――。それともあれだろうか?日曜日は休みだから、そんなことを言う程のエネルギーも使いたくないのだろうか?
しかし、例え今日が感じの悪い人が街にやって来る日曜日で、彼らが駐車場を塞いだり、道を訊ねてきたりしたとしても、訪問と送迎が本日のメイン業務である僕は、街へ行かなくてはいけないのだ。なので、その後も僕は利用者宅を巡り、必要物品を買うためにディスカウントショップコーナンに行った。すると日曜日ということもあり、車がいっぱいで駐車場を出ようとする列にも沢山車が並んでいた。出口は1つだが出ようとする車の列は2列であり、僕は違う方の列を見ながら、合流地点では僕の車より後に来た車よりは先に行こうと考えていた。さて出口近くになった合流地点で、僕の車より後に来た向こうの列にいた車が、先に行こうとしてきた。なので僕は、お前は後から来たんやからすっこんどれと思い、引かずに車を出した。するとその車はなかなか引かなかったのだけど、ようやくギリギリで停まった。道に出てから、ちょっと強引やったかなと僕は思ったけど、あの車は僕より後に来たのだから、向こうが間違っているのだ。
さて施設に戻ると、管理者からクレームの電話があったと、早速僕は伝えられた。「強引に割り込んで来て、その後睨まれた。あんな職員辞めさせろ」と怒っていたらしい。で、管理者からどういう状況であったのか聞かれたので、そのクレームの車より、僕の車の方が先に来たから先に行っただけですと説明した。
「施設の車なんで、1歩引いて運転するようにお願いします」
すると管理者にそのように窘められた。
「すいません」
仕方ないので、僕は一応謝っておいた。
しかしその後、ムカッ腹が立ってなかなか収まらない。後から来たクセに、強引に先に行こうとしたのはその車の方だと言うのに、挙句の果てにクレームの電話までして来るとは、一体どういう神経をしているのだろう?
腹が立つので、どういう神経をしているのか考えてやろう。
まず、自分の車が僕の車より後から来たことを認識出来てないのは間違いない。けれどそれ以前の問題として、僕の運転していた車のドアには思いっきり「黒山会館。小規模多機能ディオーサ愛の園」なんて書かれてある訳で、当然そんな車は譲ってくれるものと思っただろうし、お客様と店員の関係のように下に見て来たに違いない。
なるほど。確かに管理者の言う通り、そんな車に乗っている限り、一歩譲らねばクレームにすぐ繋がるだろう。例え相手が認知能力に欠ける馬鹿だとしてもだ。いや、馬鹿と言うより、自分が早く外に出ることしか考えてなくて、まわりが見えなくなっているだけかもしれないけど、いずれにせよ、そんなのには道を譲らないと、今回のようなことになるだろう。
とにかく、なぜか日曜日にはそのような輩がウジャウジャと街をうごめいている訳であり、こちらとしては、関わるとろくなことにならないので、一歩も二歩も譲る他ないだろう。
まあ仕方ない。仕方ないんだけども、もし僕の願いが叶うとしたなら、全ての施設車を車高が低くて黒くて大きな車にしてもらって、「黒山会館。多機能小規模ディオーサ愛の園」なんてドアに表記するのは辞めてもらいたい。そうすれば、なめられることもなくなり、今回のようなことは起きなくなるだろう。
後、うかつに道を聞かれたら嫌なので、服装はジャージにしてサングラスをした方が良いかもしれない――。




