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01-003 生徒会へ

09/01 投稿


 卯花が影山に続いて教室に入ると、何かおかしいことに気付く。


 生徒達の人数が少ない。20人くらいの生徒達が教室の前の席に座っている。


 卯花は同年代に比べて容姿が幼く、色々とスリムでコンプレックスになっているのだが、生徒達は卯花ほどではないにしても幼くスリムな人ばかりだ。


─━なんで、こんなに緊張感が有るの?


 誰もしゃべらず、微動だにせず、影山や卯花を見ようともせずに真正面を向いて銅像のように固まっている。


 生徒達がそろって「私は空気、私は空気」と唱えている気がする。


「気にするな。今日は事情があって、みんな大人しいだけだ」


 影山が卯花だけに聞こえるような小声でつぶやくと。


「新入学した白井だ。白井、簡単に自己紹介しろ」


「今年入学した白井卯花です。この学園のことは全く解りませんので、何か有れば教えてください。よろしくお願いします」


 卯花はペコリと頭を下げて挨拶するが、生徒達は卯花を見ていない。


「白井の席は、廊下側から2列目で後ろの空いている席だ」


 と、影山が卯花の席を指示する。


 卯花は廊下側2列目の後ろへ向かうが、生徒達は微動だにしない。


─━ちょっと怖いよ。


 容姿が優れている人ばかりのため、蝋人形が並んでいる様に見える。


 だが、廊下側1列目の後ろの卯花の隣の席に一人、机に頭を付けて寝ている女の子を見つける。


─━銀髪?絹糸みたいに艶々していて、すごく綺麗。あれ?制服じゃない?生徒じゃないの?


 女の子はすごく小柄で、椅子が大きすぎるために足が地面に届いていない。


─━小学生が迷い込んだと言うことはないよね。顔も可愛くてお人形さんみたい。


 卯花は歩きながら様子をうかがい、隣の席に座ろうとした瞬間に、女の子がパチッと目を開く。


─━目も大きくて、瞳の色が同じく銀なのね。これで口元からよだれが垂れていなければ完璧なのに。


「はじめまして。今度入学した白井卯花です。よろしくね」


 教室に電流が走る。生徒達は前を向いたまま身動きをしていないが、急に腰を浮かせたためガガッと多数の音が鳴り響く。


 卯花は影山と自分しか音を立てずに息を潜めていた教室の急な変化に驚いて、キョロキョロと見まわし。


─━あ、もしかして、この子が緊張感の元なの?制服着てないし、不良さんなのかな?


 卯花はよく有る学園物の最初から問題児に絡まれる話を思い浮かべて冷や汗をかく。


 が、女の子はすぐに目を閉じて、くぴゅーくぴゅーと寝息を立て始める。


「白井、どうせ、この後は中間テストにちゃんと集まれと言う連絡事項くらいしかないから、生徒会に行け」


 影山が面倒そうに卯花へ指示を出す。


─━えー!始業式も無しに中間テストまで、これで終わりなの?本当にクラスの意味が無いじゃない!まだ、一人も名前を聞いてないのにお友達とかどうするのよ!


 そんな胡乱な目で影山を見る卯花を無視し、影山は女の子に近づき。


「サテナ様、白井卯花が生徒会に行きます。白井はサテナ様と一緒に生徒会室に行ってくれ」


 と、影山がいままでの態度を一変して女の子に話しかける。


─━悪い子じゃなくて、なにか貴族のお嬢様みたいな子なのかな?


 卯花は影山の急変ぶりに戸惑いながら席を立ち、一緒に行くはずの女の子を見ると。


 女の子はゆっくりと起きだして、卯花に向かって子供が「だっこ」と言うように両手を向けてくる。


「え、えーと?」


 卯花が困って影山を見るが。


「ああ、連れて行ってくれ」


 と、影山に見捨てられた。


 卯花はしょうがないと、鞄を手に持ち女の子に背を向けてしゃがみこみ、おんぶの体制になる。


 ふさっと女の子が背中に乗るが軽い。軽いけど、身動きがとりずらい。


「第一生徒会室はこの廊下の突き当りだ」


 影山が生徒会室の方向を指さし、影山と生徒達から音にならない喝采が起こる。たぶん、卯花の気のせいではない。


「先生、ドアを開けてください。ああ、くすぐったいから首筋に顔をグリグリしないで」




「高校一年一組の白井卯花です。手がふさがっているので、どなたかドアを開けてくれませんか?」


 やっとたどり着いた第一生徒会室で、どうにかドアをノックし、卯花は泣きそうな声でお願いをする。


 すぐにドアが開き、卯花よりも頭1分以上背の高い男子生徒が顔を見せる。ただし、男子生徒がにこやかだったのはドアを開けた瞬間だけだ。


「中に入って。話は聞いているよ。俺は赤坂猛。君が白井卯花ね。と、七の魔女も一緒か」


「はい、はじめまして赤坂さん。影山先生から第一生徒会に所属しろと言われて、サテナちゃん?と一緒に来ました。七の魔女って何ですか?」


 卯花は寝たままのサテナを空いている椅子に座らせながら、聞き覚えの無い事を質問する。


「サテナ様の通称が七の魔女、あまり名前で呼ぶ人は居ないな。普通の魔法使いとは別格の存在だよ」


 赤坂の説明で、卯花は少し青ざめ。


「さっきから結構失礼している気がするんですけど、まずいんですか?」


「いや、機嫌の悪い時はすぐに分かるから大丈夫だ」


 赤坂が卯花とサテナを見比べながら納得顔になる。


「私達も挨拶させてよ」


 と、赤坂の少し離れたところに座っている女生徒が赤坂をにらみ。


「そうだな。今日は人数がそろっていないけど、ここに居るメンバーだけでも自己紹介しておくか」


「まず、俺は高校二年一組の赤坂猛で第一生徒会長だ。何か質問は有るか?」


 赤坂が矢継ぎ早にまくしたてる。


「赤坂さんはこの時期の二年生で生徒会長なんですか?一年生から生徒会長ってことですよね?」


 卯花は赤坂が二年生だと言うことにちょっと驚く。


「そうだよ。一般の外部からくると不思議に思うよな。この学園は中学と高校がほぼ一貫になっているから、高校生なら上級生で、その中から会長とかを選んでいる。第一生徒会にも中学生が半数くらい居るよ」


「分かりました」


「じゃあ、次は私ね。私は高校二年一組の青山静。第一生徒会副会長よ。第一生徒会所属の女子の面倒をみているから、卯花ちゃんも、よろしくね」


 青山はちょっと勝気そうだが優しいお姉さんと言う感じの女生徒だ。


「はい、よろしくお願いします」


 卯花は相談しやすそうな人で良かったと笑みを見せる。


「おいおい、そういう生徒会内に派閥を作るような言い方は止してくれよ」


 赤坂は慌てて抗議した。


「赤坂がデリカシー無く、かまい過ぎるから下級生の女の子達が困るんでしょ。あと、説明が長すぎよ」


 青山はジト目で赤坂をにらむ。


「え、うーん・・・」


 赤坂は思い当たることが有るらしく、簡単にやり込められてしまう。


「赤坂は卯花ちゃんみたいな珍しいタイプの魔法使いを玩具か何かと勘違いしているから、気を付けた方が良いわよ」


 青山が何気にひどいことを言うが、二人は仲が良さそうだ。


「そんな・・・楽しみにしていたのに・・・」


 ただ、ひどい言われようよりも、玩具を取り上げられたと言う反応が、赤坂の全てを語っている。


「でね。この子が菫ちゃんね」


 青山は自分の少し後ろに座って卯花をジーッと観察している女の子の方を見て自己紹介を促す。


「あの、中学三年一組の音無菫です。よろしくお願いします」


 菫は卯花よりも幼い感じで、少しだけ制服の作りが違う。


─━あの制服が中学なのね。でも、なんだろ?敵意や悪意は無い気がするけど、私のことをすごく見ているのよね。


「はい、よろしくお願いします」


 卯花は不思議に思いながら挨拶をすると。


「菫ちゃんと寮が同室になるらしいわ。それでわざわざ会いに来たのよ。それに状況は違うみたいだけど、菫ちゃんも妖精が見えるのに魔法が使えないの」


 なんとなく察した青山が卯花の疑問に答える。


「あれ?妖精が見えれば魔法が使えるって言われていたんですけど、見えて使えないことも有るんですか?」


 卯花は、自分が魔法を使えないのは使い方を知らないせいで、使えない可能性が有ると思っていなかった。


「ああ、絶対じゃないけど、魔法を行使するには自分の身を守るため妖精や上位契約者と契約している必要が有るんだ」


 落ち込んでいた赤坂が、チラッとサテナを見てから、いきなり元気になって説明を始める。


「上位契約者とは、強い妖精とすでに契約していて、その人の加護を借りて護身するんだよ。魔法使いは幼い頃に親が上位契約者となって護身することが多いんだ。軍も高レベルで同じスペックに揃えるため、上位契約者との契約をさせる」


 赤坂がもう止まらない。これでは同好の士以外逃げ出す。


「音無さんは魔法適性が曖昧で、妖精が契約しようとしないし、なぜか、家族とも契約できなかったらしい。音無さんくらい魔力が有れば、普通は契約してくれるんだけどな」


 赤坂が首をひねり「理由が解らない」と考察を始める。


「でも、白井さんは契約が済んでいる。周りの妖精の動きから契約しているのが分かる。契約しているのに、なぜ魔法のことを知らないんだ?それに何か変なんだよな。なにと契約したんだ?」


 赤坂が卯花をにらむように見つめる。


「私、妖精と契約しているんですか?契約って、なにをするのかも知りませんけど」


 卯花はキョトンとして、「なにか、余計なことしちゃったのかな?」と、いままでのことを思い返す。


「契約の仕方は流派や妖精によって違うけど、少量の血を与えて魂の匂いみたいなものを覚えてもらう方法が一般的だな」


 赤坂が逆にキョトンとし、すぐに納得顔で説明する。


「小さい頃に膝小僧を擦りむいた時ですかね?」


 卯花は血を与えるなど記憶に無かったので、なにかの怪我の時しか思い浮かばない。


「ぶっ、あははは。それで契約は無いよ。契約して魔力などを与える代わりに守ってもらう意思が無いと契約にはならない」


 赤坂が腹を抱えて大笑いする。


「じゃあ、分かりません」


 卯花は少し頬を膨らませて、赤坂をにらむ。


「ごめんごめん。白井さんの状況を分かりやすく例えると、お金を稼いだこと無いのに10億円手に入りましたが、預けた銀行口座番号もお金を使い方も知りませんと言っている感じかな」


 赤坂はなおも笑いがこらえられない様子だ。


「色々とひどい状況なのは分かりました。銀行口座番号って何ですか?」


 卯花はぷっくり膨れた頬に口を尖らす。


「契約した妖精をイメージして願い奉ることで力を貸してもらうのに、契約した妖精が分からないんじゃあイメージできない。複数の妖精と契約したりするけど、目的の妖精をイメージできないと力を借りれないんだ。まあ、白井さんと契約したくらいだから、そのうち接触してくるんじゃないかな」


 赤坂はやっと笑いから抜け出したようだ。いや、まだ、口元が引きつっている。


「それって、私にはいい迷惑なだけじゃあ。あ、ごめんなさい。音無さんは契約できなくて困っているんでしたね」


 卯花が不機嫌そうに赤坂へ抗議しようとしたが、菫が目に入り、自分が贅沢を言っていることに気が付いた。


「あの、気にしないでください。白井先輩も大変そうですし」


 菫が恥ずかしそうにうつむく。


「そうだぞ。学園の生徒は、まだ、親との契約で代替しているヤツも多いし、妖精と契約していても弱い妖精との契約が多い。白井さんは仮にも10億円持っているんだから、確実にねたまれるし、どうにか利用しようとするヤツもでるだろうな」


 赤坂がサラリと卯花の不幸な未来予想をぶっちゃける。


 卯花は「うーっ」とうなりながら上目遣いで赤坂をにらむ。


「伯が呼んでる」


 存在をすっかり忘れ去られていたサテナが目を覚まし、ささやくような小さい声だがハッキリと教室に響く。


「はい、裏山ですね。白井さん、生徒会で白井さんの相談に乗るけど、魔法自体を教えることは難しい。七の魔女が学園の裏に住んでいるから、これから顔を出して相談してくれ。それが済んだら、初日で疲れているだろうし、今日はもう終わりにして寮に行った方が良い。明日また生徒会室においで」


「卯花ちゃん、時間内なら生徒会室に来れば、私か赤坂が居るはずだから。また明日ね」


 赤坂と青山が優しい笑顔で別れを告げる。しかし、卯花がサテナを見ると、また、だっこを要求している。


─━裏山までおんぶしていくの?子泣き爺じゃないだけマシなのかな・・・


 卯花は鞄片手によっこいしょとサテナを背負い。


「赤坂生徒会長、ドアを開けてください。ああ、くすぐったいから首筋に顔をグリグリしないで」



長~~い目で見てください。


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