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01-001 あれって、なんだろう

09/01 投稿


 白井卯花は中学の下校時に近所の雑木林の中をぼーっと歩いていた。


 今日、中学校の担任教師から

「三年生のこの時期に進路希望が決まっていないのは、あなただけよ。しっかりしてちょうだい」

と怒られて、少し落ち込んだ気持ちになってしまったので寄り道をしての帰宅途中である。


─━うーん。母一人で妹も居るから私立高校は無理だし、トモとアヤは私よりも頭が良いから一緒の学校は無理だし。


 卯花が進路を決めかねているのは、小学校から仲良しの友人達と離ればなれになることが解ってしまっているからだ。


─━あまり悩んでも結果は同じよね。先生は近くの公立高校には合格出来ると言っていたし。あれ?


 卯花が心ここにあらずで歩いていた先で、淡い光の束が降り注ぎ周囲の空気が一変した。




 卯花は小さい頃から不思議な光るものが見える。


 それを家族や友人達に話しても不思議がられ、何度か眼科などの病院に連れて行かれそうになったので、小学校高学年くらいから人に話さないようにしていた。


 光る物はだいたい小さな珠のような感じで、卯花は「ちょっと、かわいい」と観察することが多く、光るものはただ漂っていたり、卯花が見ると逃げていったりしていた。


 たまに光るものが卯花を追いかけてくることもあったけど、なんとなく嫌いではない。


 このせいで「卯花はぼーっとした子」と評価されているのだが、本人は気付いていなかった。




─━うわ。ひさびさにあれの大物かも。逃げた方が良いかな。でも、大物なら危険そうか確認だけしておかないと、かえって危険になっちゃうよね。


 と、少し悩んだが、卯花は木に隠れるようにしながら、なるべく音を立てずに光を放った方へ向かう。


 卯花は50メートルも進まずに木の陰から見渡すと、大きな光る大型犬のようなものが3匹と女の人が対峙しているのを見つけ。


─━あんなに大きな光るもの見たことが無い!しかも動物の形を模しているなんて、かなり危険かも。


 光る犬に警戒心を懐きながら、対峙する女性に目を移し。


─━あの人は人間よね?なんか回りが光っているし、変な服装だけど。


 その女性は20代前半くらいの年齢に見え、パーティードレスのような恰好で淡く光っていた。


 住宅街から少し外れた雑木林には異質で隔絶感が強く、人間と違うようにも感じる。


─━あの人が人間なら、私以外で光る物を見れる人、初めて。でも、大丈夫なのかな?


 卯花が息を潜めて木の陰から様子をうかがう。


「まったく、変な用事を押し付けるから、こんなのが抜け出してきちゃうんじゃない」


 女性はたいそう立腹しているみたいだけど、いい大人がドレス姿で地団駄を踏むのは止めて欲しい。


─━うん。普通に喋っているし、雰囲気も人間っぽい。それに面倒くさがっているだけみたいで余裕がありそうだから、たぶん大丈夫。


 卯花は警戒心を少し緩め、逃げるよりも様子見を優先させることにした。


 なによりも女性が光るものを知っているみたいだから、光るものが何なのかを教えて欲しかったのだ。


 卯花が女性の方を観察していると、1匹の光る犬が女性に向かって飛びかかろうと突っ込む。


 しかし、女性はひょいと横に避けながら右手をかざしポンと光る犬に触ると、音にもならない波動が響き渡る。


 その光る犬はノイズが走り明滅しながら5メートルくらい吹き飛んで着地。


 卯花は、と言うと、突然の戦いに茫然自失していた。


 が、後の2匹が女性に向かっていくのを視界の端で見ているところで、最初の1匹が脱兎のごとく逃げようと卯花の方に走ってくる。


─━え、うそ・・・。


「あ、こら、まちなさい」


 女性が不機嫌そうに怒鳴る。


 卯花は光るものが動物を模しているのを見るのも初めてだし、人に襲い掛かっているのを見るのも初めてだ。


 その光る犬3匹のうち、1匹が卯花に向かってくるのだから、卯花は自分が来た方向に猛ダッシュで逃げるしかない。


 しかし、雑木林で整地もされていないため、卯花は20メートルも走らないうちに木の根に足を取られ他の木に衝突してしまう。


「あう。痛い・・・」


 卯花は木にぶつかって擦りむいたおでこをさすりながら、自分の向かってきた光る犬を探すと、卯花がよろけた拍子に上手く光る犬を避けたみたいだ。


 卯花を追い越した光る犬が10メートルくらい先で、また卯花に向かってUターンしている。


 どうも逃げるのではなく、卯花を標的として狙うことにしたらしい。


「なんで、私を狙うのよ!」


 卯花が毒突いても、光る犬は明らかに攻撃態勢だ。


 光る犬は大型犬くらいの大きさがあるので、卯花は足がすくむ。


─━最初から逃げていれば良かった・・・どうしよう・・・住宅街に逃げたらかえって逃げづらくなるだけだし、あの人に助けてもらうしかないよね・・・。


 女性が光る犬を逃したくなさそうだったことに希望を掛けて時間稼ぎに徹するのが良いだろうと、卯花は光る犬の様子を見ることに決める。


─━こういう時に目を見つめちゃいけないのは、本当の犬の時よね・・・


─━光るもの相手はどうすれば良いのよ!光るものって目が有ったの?他の光るものは小さな珠でぷかぷか浮いているだけで可愛いのに!


 などと、卯花が一人なみだ目でグルグル考えていると、光る犬が勢いをつけて卯花に飛びかかってくる。


 卯花が体をひねりながら横に避けると、光る犬が普通では無い速度で通り過ぎ、また、10メートルほど先でUターンするのが見えた。


─━あれ?もしかして。


 それから2度3度と光る犬を卯花が避ける。


─━やっぱり、大きいし速いけど、飛びかかる前に前足で地面を叩く癖があるし、速い分だけ方向転換が出来ていない。


 分かりやすいタイミングに猪突猛進するだけなので、卯花は少しだけ余裕が出来た。


 卯花は時間稼ぎなら出来そうだと、先ほどの女性と周囲の様子を気にし始めたため、光る犬の突撃タイミングを逃した。


 卯花が気が付いた時には光る犬が凄い勢いで迫ってきていて、慌てて体をひねり、またも足を何かに引っ掛けて転んでしまう。


「最悪。光るものは何処?」


 卯花は手を擦りむいたが、光る犬を見失うと危険だと、向かったはずの方向に光る犬を探すが何処にも姿が無い。


─━逃げちゃったの?いえ、そうだ、光るいつものは空中を漂っていたんだから、あの光るものも空を飛べるのかも。


 光る犬が普通の動物のような動き方をしていたため、卯花はすっかりと失念してしまっていた。


 卯花は素早く立ち上がり、頭上を含めてキョロキョロと光る犬を探すが見つからない。


 卯花は周りの雰囲気から光る犬がまだ近くに居ると、なんとなく確信する。


─━何処なの?近くに居る気がするんだけど。あっ。


 卯花の3メートル先の木の裏側からイヤな気配が沸き起こり、ものすごい勢いで向かってくる。


 卯花はいつのも光るものが壁などを素通りしていることに今更ながら気が付き。


─━駄目。避けられない。



長い目で見てください。


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