21話 迫害の理由
「――――っ。うるっさいわねぇ!!!気安く私に話しかけないでくれる!?」
「………へっ?」
突然、目の前の少女が華奢な体躯からは想像も付かない大音量の怒鳴り声を撒き散らす。
なんせ、先ほどのクラスメイト達の発言からしてイジメられっ子っぽい少女だ。
「わ、わたし……〇〇っていうの。よろしくね……」なんて気弱なイメージを描いてたもんだからあまりの剣幕に気圧され何を言っていいのか分からない。
声の大きさもその苛烈な口調も、言ってることも、その清楚な外見とはかけ離れ過ぎていた。
「ご……ごめん。なんか気に障ること、言っちゃったかな……」
「気に障るも何も、あなた年下でしょ?馴れ馴れしいのよ!飛び級だかなんだか知らないけど、ちょっと魔術が使えるからって調子に乗らないでよね!!」
「ちょ、調子に乗ってるなんて……」
「いーや、調子に乗ってる! ……何をしたか知らないけど、王子様とも仲がいいみたいだし? その歳でそんな恥ずかしいコトしちゃって恥ずかしくないの?」
……すごい言われようだ。
やっぱり王子様と仲良くってのは、嫉妬の的になるのか……
ていうか、君もまだ9歳じゃん……どこでそんな恥ずかしいコト覚えてきたのやら。
周りの子達も何言ってるのか分かってないみたいだし。
「そんなこと言ってるとまた班に入れてもらえなくなるぞー」
「ただでさえ見た目が悪魔なのにな」
「性格も悪いとかどうしようもないよなぁ」
そう言って囃し立てるのは男子3人組。
なんていうか、典型的な悪ガキって感じだな。
こいつらさっきから悪魔悪魔言ってるけど何を以ってしてこの子を悪魔呼ばわりしてるんだろうか……
尻に尻尾でも生えてて人を誘惑したりするのかね?
そんな淫魔はそもそも学園に入れる訳がないと思うんだけど。
それはさて置き、悪意は目の前の少女に向けられているものの、やっぱりいい気分じゃない。
確かにこの子はこの子で敵意丸出しの野良猫って感じだし、「お前こそ生意気じゃねーか!」って思う。
でも、それとこれとは話が別だ。差別が肯定される理由にはならない。
(ていうか、イジメやら差別なんか、エーミール辺りが放っておかなさそうだけど――)
「……おい貴様ら。今すぐその臭い口を閉じろ」
「はぁ?」
――っと、そりゃ止めるか。
しかし、思ってたよりもずっとキツい物言いだな。
王子ってこんな、感情を表に出して怒るタイプだったんだ。
「なんだぁ? お前には関係ねーだろ?」
「そーだそーだ! 俺たちは悪魔を退治してやってんだよ。むしろ感謝してほしいね」
「引っ込んでろよ王子サマ」
うわわわわわ……王子様になんて口利いてんだこいつら……
それに言ってることがいかにも小物っぽい。すぐ消えるタイプのモブだ。
自殺志願者かなんかなの?
「知ってんだぜ。陛下が学校でのことには、一切口出ししてこねーってことはよ」
「……」
「つまりお前も、俺らと変わんねーただの生徒ってわけだ」
え?
そうなの?
…………流石にそれはないよね? エーミールくん?
どっかに御付きのSPみたいなのがいて、いざとなったら飛んで来て頭ブチ抜いてくれるんだよね?
「……その通りだ。だがそんなことは関係ない。俺は一生徒として、下らないことをするなと忠告しているだけだ。貴様らはマーヴィック貴族の品格を地に落とすつもりか?」
……まじで?
私たち市民風情と同等の関係を築けなんて言っちゃう王様だ。
中々ワイルドだと思ってはいたけど……流石にそこまで放任主義だとは思ってなかった。
「はっ……俺らがそんな大層なもん背負う訳ねーだろ。それに、そいつの髪見ろよ。何言ったって俺らが悪者にはなんねーんだよ!」
言われ、女の子の方に目をやる。
この子の髪……水色の髪が悪魔呼ばわりされる原因ってこと?
透き通った綺麗な髪だと思うけど……
「なるほど……消えかかった風習を持ち出してまで行為を正当化したい訳だ。所詮餓鬼だな」
「あ? お前も歳は変わんねーだろうが。それに、消えてなんかいねーよ。お坊ちゃんはそんなことも知らねーのか?」
「貴様らのような奴らが異端なんだ」
今にも殴り合いを始めんばかりの勢いでお互い食ってかかる二人。
ど、どうしましょ。身体張って止めようにも相手はオトコノコなわけで。
武術の心得も何もないひ弱な女の子が3つ上の男子の殴り合いをどうにかできるだろうか。否、できない。
「――――どうしたんだい? 散開するように言ったはずだけど、何かあったの?」
そこで、ミハイル先生が何事かとやってくる。
雰囲気が険悪なのは見て分かるだろうけど、会話の内容までは聞こえてないっぽいね。俺が言ってやってもいいんだけど……
「「……いや、なんでもありません」」
双方これ以上言い合うつもりもないようで、大人しく引き下がる。
そりゃそうだ。ここは日本とは違う。
イジメの事実が露見した生徒なんかは何らかの処分は受けるだろうし、最悪退学まであり得る。
それに、生徒の親がーだのPTAがーだのといった問題はここメルフィン学園においては起こりえないだろう。
いくら国王が生徒同士の干渉に口出しはしないとはいえ、例え貴族の親でも子供が王子様と起こした諍いに出張ってくることは流石にないはずだ。
相手にそのつもりがなくとも権力者をわざわざ敵に回すような奴はいない。
エーミールは……まあ、チクりを嫌ったって感じなのかな。
言っちゃっていいと思うけど、王子様は色々考えることがあるのかもしれない。
「……そっか。ならいいんだ。ほら、さっさと散開しなさい。授業時間がもったいないからね」
そう急かす先生。
当人達が引き下がったんだからこれ以上グダグダしてても仕方ないな。
周りと距離を取るべく4人で移動する。
しかし……結局、水色髪の女の子の名前を聞いてない。
今更もう1回「あ、あの……恐縮ですがお名前を教えては下さりませんかね……?」なんていうのもアレだよね。
ダサい気がする。
いや、変なプライドだってのは自覚あるよ。でも仕方ないじゃない。
一応精神的には20代後半に差し掛かるお年頃なんだから。
「ふう……横槍を入れてごめんね。えっと、アリシアさん、だっけ?」
「……はい。アリシア・クレスピです」
おお。
王子は名前を憶えてたらしい。
彼は彼で昨日の自己紹介の時は、色々考えることもあったはずだけど……ちゃんと自己紹介も聞いていたのか。
まあ彼女の髪は目立つし、耳にさえ入れてれば俺も憶えてたよ? うん、多分。
背中の中ほどまで伸びたサラサラの長い髪に、小さな輪郭に端正な顔立ち。瞳は神と同色で少し薄目の色彩を放つ碧眼。
その容貌も相俟って、黙っていれば妖精のような可愛らしい女の子だ。
……明らかに、その言動は伴ってないけども。
「先ほどはその……ありがとうございました。横槍なんて、とんでもないです」
「いや、大したことはしてないよ。思ったことを口にしただけだからね」
思ったことでもそれを口に出来る人は少ないのだよ、エーミール君!
にしても顔はいいし魔術は出来るし、悪事は見過ごさない。
昨日も思ったけど彼、出来すぎじゃなかろうか。
今までは人の事見下してたとか言ってたけど、俺と会ったからってそんな変わるもんなの? 影響力大きすぎない?
サラっとかっこいいことを言われたアリシアも、照れたような恥ずかしいような顔をしている。心なしか顔色は赤い。
イケメンって得だねぇ……。
俺のときはすっごい当たり強かったのに!
……いや、原因は分かってるけどさ。
「あの……アリシアさん」
「な、なんですか?」
「えっとね。さっきのことだけど、彼女たち、俺の友達なんだ。班も一緒になるんだし、良かったら俺共々、仲良くしてもらえないかな」
と、そこでエーミールのファインプレー。流石にコミュニケーションお化けは分かってるね。
このチャンスを逃さず、すかさず先手を打つことにする。
「あの、さっきはごめんなさい。ちょっと馴れ馴れしかったかも、です……。改めて、よろしければ同じ班員として仲良くしませんか?」
「……べ、別に私も、本気で言ったわけじゃないわ。ちょっと、虫の居所が悪かったの」
……ツンツンしてるようで、意外と偏屈ってわけじゃなさそうだ。
エーミールの前だからって訳でもないだろう。
そんな打算がありそうには見えない、と思う。
「さっきは言い過ぎたわ。こっちこそ、ごめんね。アリシアでいいわよ」
「……はいっ。よろしくです、アリシアさん! わたしは――」
「シーラ・カイゼル、よね?」
「――え?」
名乗ろうとした口の動きが止まる。
「ちゃんと憶えてるわよ。飛び級で入学してきて、初級魔術は全部使えるなんて言うんだもの。憶えてない方がおかしいでしょ……あなたは、私のことなんて憶えてなかったみたいだけどね?」
「それはその……ごめんなさい。昨日はちょっと、色々悩んでて……」
「い、いや、冗談よ? それに、さんも敬語もいらないわ。仲良くしてね」
そういうことか。
俺の自己紹介は先頭だったし、飛び級入学ということもあってインパクトはあったのかもしれない。
憶えられているのは別段不思議なことじゃないってことね。
……それにしても、さっきまでの険悪な空気が嘘のようだ。
物凄い剣幕で怒声を挙げたかと思えば、こんな人当たりのいい一面もあるとは。
やっぱり、あの悪ガキ3人組が言ってた悪魔云々の罵倒が原因だったんだろうか。
「それと、そっちの子、さっきはごめんね。えっと、名前は……」
「あっ……わ、わたし、パトリシア・レンツです! ぱ、パティって呼んでくだしゃい! よろしくお願いしましゅ!!」
「え、えぇ、よろしく……」
先ほどファーストコンタクトに失敗し、所在なさげに立っていたパティは、急に掛けられた声に慌てて返事をした。
噛みっ噛みの幼児のような話し方で。
……勇気出して声掛けたのに、無視された形になってたしね。私よりかわいそうだった。
「……あらかた散らばったみたいだね。じゃあ、今からやることを説明します! みんなしっかり聞くように!!」
ステージの上から体育館に響き渡る声。
もちろんミハイル先生が話してるんだけど…何かを口に当てて話しているように見える。
「エーミール君、先生が持ってる物って何か分かる?」
「ああ、あれは声を増幅する魔法具だよ。ほら、入学式のときにも使われてたの憶えてない?」
「何か持ってるようには見えなかったけど……」
「あの時は固定されてたからね。用途に応じて取り外して使うこともできるんだよ」
あれも魔法具、ね。
声を大きくする道具ってことはマイクの働きをする魔法具ってことか。
例によって原理はよく分からんけど……いや、ファンタジー世界で原理を求めるのが間違ってるのか?
しかし、エーミールは物知りだね。リアル出木杉君じゃなかろうか。
今度色々話を聞いてみよう。
「エーミール君……って、やっぱりシーラ、殿下と随分親しいわよね? 昔からの仲だったりとか? だったらあなた、もしかして貴族の生まれなの?」
「それは……ま、また後で説明するね」
苦笑しつつそう返しておく。馴れ初めから話すと長くなるし、後にしとこう。
今は、授業に集中しないとな。
―――――――――――――
その後授業を終え、私は昨日の3人に、アリシアを加えた4人で食堂にやって来た。あれだ、親睦を深めるには同じ釜の飯を食う所からって言うし。
……ちょっと違うかな?
「それで、さっきの話だけど……実は――――」
相変わらず本当に学食かと疑うレベルの食事を終えひと心地付いたところで、先ほどの件について話し始めるエーミール。
国王の教育方針であるという、敬語やら関係性やらの事情は彼から話してもらうことにした。
本人の口から聞けばアリシアもすぐに納得がいくだろうしな。
……さっきは、割とひどいこと言われたからなぁ……。
ちょっと話し辛かったりもする。
「……だから、アリシアさんも俺のことはエーミールって呼んでほしいんだ。敬語もナシで。どうかな?」
「……そ、そうなんだ。頑張る、ね。エーミールくん」
なんとも心地悪そうに話すアリシア。やっぱ、そういう反応になるよな?
俺たちが変なのかもとか思ってたけどちょっと安心。
「シーラも、さっきはごめんね? ひどいこと言っちゃったよね……」
「いや、気にしてない……ことはないけど……。あの、1つ聞いてもいい?」
「う、うん。なに?」
「あの時、なんか様子変じゃなかった? その、今と全然違うっていうか……悪魔って、なんのことなの?」
「……」
(……あ、コレ、聞いちゃいけないやつだったな……)
無言で押し黙るアリシア。それは明らかな拒絶を示していた。
いやでも――正直気になる。
明らかにエーミールが言うには貴族であるというあの3人組は、彼女に対して剥き出しの敵意を向けていた。
男子が好きな女子をからかうとかそういう可愛い類のものではなく、侮蔑の念を込めた言葉による迫害。それが適切な表現だ。
その原因は知っておかなくてはいけないことだと思う。
「……ごめん、ちょっと、話したくないんだ。先に戻るね」
「あっ……」
急激に話す興を失ったかのように、そう言い残して引き留める間もなく、アリシアは急ぎ足で教室に戻っていく。
……思ったより根の深い問題だったのかもしれない。
ちょっと性急すぎたか。
「……シーラ、知らないの?」
唐突にそう尋ねるのはパティ。
「えっ? な、何を?」
「アリシアの髪って、綺麗な水色じゃない? 水色の髪って、その……周りにあんまりよく思われない色なんだよね」
「……よく思われないなんてレベルじゃなかった。それこそ最近まで、マーヴィック国内では大っぴらに彼女の一族が迫害され続けてきたんだ」
と、そこにエーミールから補足が入る。
そこから語られるのは、なんともまぁ理不尽で、救いのない話であった。
――――――――――――
クレスピ公爵家は200年程前までは有力貴族の筆頭であり、マーヴィック王国の建国初期から国を支え続けてきた、由緒ある家柄だった。
マーヴィック王国は建国以来ずっと王制を貫く歴史ある大国だ。
民衆の意見も取り入れるべく建国以来権力の分散が行われ、国内で反乱が起こることは少なかった。
しかし、その長い歴史には、勿論少なからず一部の武力を持った勢力による王制への反逆、所謂クーデターなんてものが起きることもる。
多くは大した影響もなく軍によって鎮圧されることになったが、歴史的に見て一度だけマーヴィック王国存立の危機にまで国を追い込んだ大規模クーデターがあった。
その首謀者が、当時のクレスピ家当主だったのだ。
それこそがクレスピ家が長年に渡って迫害され続けるに至った原因となる事件であった。
なぜ公爵という立場をかなぐり捨ててまで王制への反乱を企んだのか。
そのクーデターを計画するに至った理由、それは、戦死者をいたずらに増やす当時の王への不満が募ったことにあったという。
戦争が起こる理由なんてのはこっちも前世の世界もそう変わらない。
相容れない宗教思想だったり、王族が国外で殺されたり、資源を欲した上での侵略だったり。
当時の戦争は、最後の資源争奪にあった。
地球の資源でいうところのレアメタル。
つまりは希少な金属の利権を巡っての衝突が開戦の理由だった。
開戦当初から国内では、わざわざ関係を危うくしてまで得られる程のメリットがあるのかという声は大きかったが、当時の王による周到な根回しは完璧で異を唱える者はいなかった。
しかし、当時からマーヴィックは大国であったとはいえ、周辺国家との争いによる被害は決して小さいものではない。
その戦争はマーヴィック王国宮廷騎士団に、宮廷魔術師団に甚大な被害を及ぼした。
前線で戦う兵士達の戦死者数は全軍の2割に上り、その中には――騎士団の将軍として戦地に赴いていたクレスピ家の次男の名があった。
それがクーデターの引き金となったのだ。
元々当代の王の統治に対する諸侯貴族の不満は高く、愚王だと蔑む声もあったため、戦力の確保はある程度行うことが出来るという目算は立っていた。
勝算は十分。あとは計画通りに実行するだけ、そのはずだった。
しかし、クーデターは失敗に終わった。
なんでも、王にはべらぼうに強い親衛隊が隠されており、クーデター成功もあわやと思われたタイミングで現れた彼らを倒すことが出来ず仕舞いだったのだとか。
勝てば官軍。当時の王は反乱を企てたクレスピ家の思惑をでっち上げ、厳しく非難し、迫害した。
その結果、水色の髪を持つ者への迫害と形を変えて世に浸透していくこととなったのだ。
それが、アリシアに厳しい目を向ける者が多い理由だった。
――――――――――――
まあ、聞いてみれば単純な話だった。
要するに、犯罪者の子供がイジメられるのと変わらないんだろうな。良くはないけど、よくある話だ。
「……でもパティ、なんでそんなこと知ってるの? 私、知らなかったんだけど……」
「私は初等部の授業の時、先生に聞いたから……。多分シーラは、本で読んだだけだから、そこまで書いてなかったんじゃないかな?」
なるほど。
表立ってクレスピ家を非難するような書籍は世に出てないってことか。
検閲的なフィルターを設けることで迫害の歴史を閉ざそうとする動きはあったのだろう。
エーミールが言うには、今ではだいぶ薄れてきているって言ってたしな。
「クレスピ家は爵位剥奪の上、お家取り潰しになったけど……迫害の理由は家名にあるんじゃないからね。時が進むにつれて水色の髪が悪者という形になったのさ。もっとも最近じゃ、そういう話を知識として知っているってだけで、差別に繋がることは少ないって聞いてたけど……」
苦虫を噛みつぶしたかのような表情をするエーミール。
聞いてたけど、アリシアの場合は違うということだろう。
自分に非があるわけじゃないのに、生まれた時から周りから蔑まれ生きてきたのだ。そりゃ、やるせない気持ちにもなるよな。
「……パティとエーミール君は、どう思ってるの?」
「……え?」
「アリシアのこと。あの子とできれば関わりたくないなーとか、思ったりする?」
迫害は鳴りを潜めたといっても、完全に消えたわけじゃないんだろう。
前世でも未だにイエローモンキーだの、カラードだのの差別用語が某国では飛び交ってたし、結局一度汚名を被った特徴を持つ人間にはそういった感情を持たずに接することが出来ない人間も多い。それは仕方のないことだと思う。
そう思って聞いたんだけど……
「……シーラは、私がそんなこと思ってると思うの?」
「え?」
返ってきたのは、予想外の強い口調の返答。
パティの目を見れば、その目には強い意志が宿っているように感じた。
「シーラは、私がそんなことする子に見えるの?」
「い、いや……そういうわけじゃないよっ。ただ、みんなは実際どう思ってるのかが知りたかっただけで」
「……じゃあ、知っておいて。私は差別したりとか、イジメたりとか、そういうの、嫌いなんだ」
パティからは今までにない、静かな怒りの感情が感じられた。
……普段は臆病な性格の裏に隠れてるんだろうけど、そういうことは許せないタイプの子らしい。
「俺もさっき言ったけど、ああいうのは下らないと思ってるよ。アリシアは悪くないのに人の一部分だけを見て貶める行為は許されるべきじゃない」
エーミールは当然、といった様子でそう言った。
ああいうのとは、先ほどの貴族3人組のやったことだろう。
……王子、しっかりしすぎじゃなかろうか。ほんとに9歳児?
俺がこの年の頃は、女子の気を惹こうとしてスカート捲ったりしてたクソガキンチョだった気がするけども。
――――けど、二人がそう思ってるのなら話は早い。
「それじゃ、アリシアのとこ行こっか!」
「……! う、うんっ!」
「ああ、そうだね」
言うが早いか3人揃って席を立つ。
彼女とも友達に、なれるだろうか。




