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おーい☆MADぐんしょー  作者: ジェイのすけ
9/19

#9【その 傲慢な人間どもよ!】

「くはぁっ! もう、どうにでもなれよ! 煮るなり焼くなり好きにしてチョウダイ!!」

 博士は、そのか細い体を、ベニヤ板の残骸が散らばる床にあずけ、大の字になって寝そべりました。

 どうやら覚悟を決めたようです。こんなでっかい宇宙人に逆らったってどうにでもなる事もあるまい。いくらあがいたって、もがいたって、ボクちゃんはペシャンコにされて、グチャグチャにされて、血反吐なんかとんで、はらわたなんかブニョーンとか飛び出して、目玉なんかプチッとかいっちゃったりして潰されちゃうんだわ! なんて、完全に頭の中だけの妄想で、自分の体をスプラッタ化しちゃったのです。

 でも、それはホントに妄想です。完璧な被害妄想です。被害妄想は危険です。被害妄想は完全なる仮想敵国を作り、ありもしない憎しみを生み、やがて増幅し、風船のようにパンパンに腫れ上がった状態にまでなったときにはもう、手遅れなのです。

 博士は、もうそれの一歩手前まで来ています。何てことでしょう! 

 マッド軍曹、いいえ、親愛なる松戸博士に少しでも理解を得ようとする無垢な宇宙人オゲル君は、ただ博士に自分の発明を評価して欲しかっただけです。見てもらいたかっただけなのです。それがどうでしょう。博士は自らの安全と保身ばかりを考えて、オゲル君の純真な気持ちまでを理解しようとはしていないのです。悲しいです。悲しいのです。そんな悲劇があってよいのでしょうか!

 いいえ、博士は決して悪い人ではありません。確かに若いころ、悪の組織の参謀とまで言われた経験を持つ彼ですが、絹子さんの温かな笑顔で心を入れ替えたのです。

 しかし悲しいかな人間。人間の持つ許容量は既に限界なのです。我の持つ力量より上の存在に対峙してしまうと、もう本能的に蛇に睨まれたカエル同然なのです。カエルならまだいいです。だってカエルさんは睨まれてから、別に何も考えないでしょうから。でも人間はさかしいのです、小賢こざかしいのです。下手に前頭葉なんてものが、少しくらい他の動物よりも大きくくっついているものだから、余計な事を考えてしまうのです。

 恐い。怯える。逃げようか、留まろうか。いや待てよ。妄想妄想また妄想!

 それは多大なる被害妄想へと変換され、やがては憎しみへと変わって行くのです。酷いです! 非道すぎます! オゲル君にはこれっぽっちも博士を攻撃する意思なんてないのに! これっぽっちも威圧する意識なんてないのに……


「OH!ハカセ……」

 オゲル君には、博士の恐怖心の意味が分かりませんでした。しかし、自分を恐怖して、おののいている事だけは伝わってきます。

 何故なんだろう? どうしてなんだろう?

 自分は何も悪い意思なんて持っていたわけではないのに……。自分はちょっぴり博士の物をいじってしまっただけなのに……。これだって、この博士の大事だと今知ったこの『箱』だって、「元の姿に戻しなさい!」となじってくれれば今すぐにでも簡単にもどせるのに……。(ええっ!?)

 ただ、オゲル君は博士にかけてあげる言葉が見つからなくって、とても困っていました。だからこの際、強引でも博士に自分の発明品を見てもらうことにしました。結果、博士がどんな態度に変わろうとも、見てもらって評価を得られるのなら、それが満足ってものなのだと腹をくくりました。

 あの素敵な『箱』に手をかけるオゲル君。その慈しみの通った素敵色の箱は、たった今開けられたのです。小さな引き出し。小さな取っ手。何もかも絹子さんとの思い出で素敵色に染め上げられてきた箱は、中味のものでさえ、素敵色一色で染め上げられていました。

「OH! ハカセ!ヤッテクサーイ! ミテクダサーイ! コレガワタシの最新の作デース!」

 オゲル君のそのドデカイ手の中に預けられた発明品は、小さくて長細い先端にブラシのようなものがついた物でした。

「オッ、オゲルちゃん! そ、それはっ!?」


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