#17【その 夢の唄にささぐ】
天才! 祐天寺の目が光った。
それは漢としての意地、そしてプライド、そして天才としての生き様でもあった。何にも敗北する事ない! 何にも平伏す事ない! 何にも侵害される事ない! 万事これ、我の為すものに間違いは無し!!
――それが祐天寺流の人生訓なのである。
「行けよ、我が私兵! 我が下僕ども! 我らに仇なすものを見ん事蹴散らして見せよ!」
「ラジャー!」
祐天寺のその号令と共に、五人のカラフルな若者達が立ち上がった
ドナイダー紅
ドナイダー群青
ドナイダー山吹
ドナイダー李
ドナイダービリジアン
彼らはあの『念仏スピリチュアル因果サイクロンシステム』の申し子である『ドナイダーロボRX―ゴルゴ38』へと乗り込んでいった。
「アクション!!」
ドナイダー紅の軽快な雄叫びと共に、彼らは奇妙なポーズを取りながらマシンを動かした。
それは一体どんな意味があるのだろう。どんな作用で動くのだろう。などとそんな野暮な詮索は置いといて、ドナイダーロボは、そのぎこちなく、無理矢理箱が連結した鈍い動きと共に、マッド軍曹の操る『パイターン3』の元へと飛んで行った。
♪ジャンガラ戦隊ドナイダーオープニングテーマ
『ゆけ! ジャンガラドリーム』
作詞/やばもとまさゆき 作曲/綿飴酎命 編曲/平和島健太郎
前奏(鐘と太鼓の鈍調な音) 台詞(念仏念仏ジャンガラだー)
♪腐れ切ったアイツの町に 死人の声が聞こえるよ〜
紅く染まったTシャツに お前の憎しみ届くとき〜
みんなの絶望救うのは
群青色の涙だけ (いいえ、そんな事ないわ!)
そうだ! 山吹の 山吹色の小判が 我らが目の前ザックザク!
そうして李色のネオン街に繰り出せば〜
突けずやらせずぼったくり〜
嗚呼気分はビリジアン 嗚呼気分はビリジアン
一体その色どんな色
緑でいいんじゃないビリジアン〜
行け行け! ジャンガラ戦隊 ドンと行ったれ〜
(二番割愛)
ジャンガラ戦隊の五人の魂は燃え上がっていた。ジャンガラロボのコックピットの中に、今どきレコードプレーヤーがあったのだ。
しかし、コックピットの揺れが酷く、レコードの針が跳びに跳びまくっていた。
「ええい! こうなったらアカペラで勝負!」
「ラジャー!!」
五人揃って二番を唄おうとしたそのときだった――
五人の目の前に、一瞬にして閃光がはしり抜け、この上ない灼熱の炎が舞い上がった。
「うわあぁぁぁー!!」
それは目を疑うまでもない、紛うかたなき一瞬の光景だった。
彼らは目映いばかりの光とその膨大な熱で、その姿を、その全てを、息をのむ間もなく蒸発させてしまったのだ。
「見たか、祐天寺。見たかジャンガラドリームに溺れる者達よ。ボクちゃんのこの『パイターン3』は、文字通り無敵なのよ」
マッド軍曹――松戸博士は、かのコックピットの中で不敵な笑みを浮かべ、左団扇で麦茶を飲んでいた。