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おーい☆MADぐんしょー  作者: ジェイのすけ
16/19

#16【その 素敵な刀の錆にしてくれる】

 雄々しく空を駆るパイターン3。その姿は金銀派手な装飾を身に纏い、しかも夕日を然るべく存分に浴びたような、なんとも奇妙奇天烈、眉目秀麗な“傾奇者かぶきもの”の鎧武者を見ているようである。

「ワハハハハハ! ボクちゃんたち【オーラ・ムンド】が臥薪嘗胆がしんしょうたんの念、ついぞ晴らす時がやって来たのよ。祐天寺、いやジャンガラ戦隊ドナイダー軍団。そのあんた達の偽りの正義感などをぶっ潰してやるんだからぁ! 覚悟して頂戴!! 行くぞ、パイターン・スウォォド!」

 松戸博士――パイターン3は、腰の辺りから「これは見事な!」光輝く長刀を抜いた。

 これぞ『パイターンソード』。

 その硬度はダイヤモンドの127.3倍。そして軟度も非常に優れ、叩いても砕けない性質を備えている。そう、いかに硬い性質を持ったダイヤモンドでも、衝撃には非常にもろい。しかしこのパイターンソードは、それまでの金属の欠点を克服した、前人未到の究極の“ソード”なのである。して、その美しく反り返ったフォルムは、柳生十兵衛三厳やぎゅうじゅうべえみつよしが愛刀『三池典太』をモチーフにしたマニアック且つ、この世界にたった一つしかない天下無双なものなのである。

 マッド軍曹は、それをざっくばらんな大上段の構えで振りかぶって見せ、

「この思い、戦闘員アイツらの純真な御魂と共に敵を斬り裂けぇ!」

 と、寸分のぶれも無い振りで空を斬ってみせた。

「――やあ!」

 それは、毎度毎度の特攻のみを想定とした、怒涛の如きうねりを伴った攻撃ではない。刀を振り下ろした後の、何ともいさぎよい心地よさがパイターン3の辺りをうかがう。高度300メートルの上空に聳え立つパイターン3を取り巻く《氣》が、一縷の乱れもなく、ただ、ただ、佇んでいた。


 しかし、しかしだった!!

「ゆ、祐天寺博士! 大変です。こちらに何のエネルギー反応もなく、凄まじい攻撃がやって来ます!」

 祐天寺博士が愛用の母艦『羞花閉月しゅうかへいげつ』は、混乱した。索敵オペレーターのその慌てぶりと言ったら、それはもうただ事ではない。

「ええい! 落ち着かんか、このブァカ者がぁ!! ぬしの日本語はまるでなっておらぬぞ!」

 おとこは腕を組み、凛とした構えで遠くを見つめたまま部下に一喝する。

 そう、この男こそ、自らが世紀の大天才と自称する『祐天寺秋嗣』、その人である。

「ええい! 総員構え――来るぞ!」

 その祐天寺博士の掛け声と共に、一瞬であった。

 音もない、揺れもない、微かに響く超音波の類いもない。そんな波動が彼らの艦を襲った。それは正に“キレ”としか言いようのない凄まじい攻撃であった。

 ――『羞花閉月』の左舷の翼が瞬く間に本体と決別し、一筋の間をおいて、艦橋まで轟く爆発音が鳴り響いた。

「うああああ――!!」

 断末魔の如き嘆きの声が、艦橋一杯に広がった。各種配置に就いたジャンガラ軍団の兵たちは皆、初めて出会う恐怖に『三途の河岸』で戸惑う陶酔感を禁じえなかった。

 しかし祐天寺博士のみ、天変地異の如き揺れの艦橋にも屈せず、腕を組んだまま――あの《パイターン3》方向を睨み返していた。

「ええい! やってくれたな、松戸の愚連隊。否、マッド軍曹。敵ながらやるではないか! まぁ良い、それもまた然り!――こうでなくては英雄譚えいゆうたんの最終話を華々しく飾れんというもの。――大人しくその償いを全うするのなら、それも善し! そちらがあくまで徹底抗戦を気取るなら、それもまた善し!――ならぶぁ、我らが義をもって介錯かいしゃくつかまつる。行けぃ! ジャンガラ戦隊ドナイダー。ドナイダーロボ発進!!」

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