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おーい☆MADぐんしょー  作者: ジェイのすけ
11/19

#11【その 熱き心に……】

 そげん博士ば見たこともなかった。今の今までの博士とはまた一味違って激辛な感じだった。

 そう、少年時代に売りさばくことが出来ず、クソまみれになるほどの借金を抱えてしまったあのメンタイコ味のう○い棒のように中途半端に辛かった。

「見てらっしゃい、祐天寺! 見てらっしゃい、ジャンガラ戦隊ドナイダー! アンタたちのひょろい正義感なんか叩きのめしちゃってくれるんだからぁっ!! あんだらみだいなデレスケどもにカックラつけてやんだがら! こっちゃこ。ぶっ潰しちゃる!」

 ???……博士は意味不明なものにとり憑かれた。

 だが、人の勢いというものは侮ってはならない。その博士の体から溢れ出るパワーは並々ならぬものだ。本物だ。

 少々吊り上がり気味の一重まぶたからは刃先鋭い剣のような稲光が放出し、ドクロのなりそこないのような口や鼻からは紫や桃色といった細かい粒子状のエクトプラズムが不気味に湧き出てきたのであった。

 燃え上がる、燃え上がる、熱く燃え上がる。燃えるほどヒート!

 灼熱、灼熱、燃やし尽くせ我が命!

 命は力なんだ。魂の雄叫びだ! 力が正義ではない。正義は茗荷なんだ!

 勝ち続ける人生なんて面白くないぜ。負けても負けても負け続けても勝利に向かって這い上がってゆく旅路が面白いのさ!

 やってやる、やってやるぜ! やってやりますともこの命燃え尽きるまで! せっかく産まれ出でたこの人生。五体満足そろいもそろって沸き出でたこの体! やって出来ない事などあるものか! やってやれない事などあるものか!

 ボクちゃんは負けやしない! ボクちゃんは負けやしない! 祐天寺なんかに負けやしない! 熱い熱い情熱だけは負けやしない! 誰にも誰にも負けやしない!

 雨の日だって風の日だって雪の日だって嵐の日だって、ボクちゃんはずっと生き延びて来たじゃない。どんなに腹ペコだって生き抜いてこられたじゃない。

 ボクちゃんは強いのよ! ボクちゃんは天才なのよ! ボクちゃんはマッド軍曹なのよ!

 必ずやってみせる。必ずアンタたちをやっつけてみせる!

 御八百万おんやおよろずの神! 南無八幡台菩薩! 日光の権現! 那須の湯泉大明神! ボクちゃんはね、祈ったりなんかしない。願ったりなんかしない。そんな他力本願な事で勝とうだなんて思ったりしない!

 ……でもね、誓うわ。

 あんた達偉そうに上から見下ろしている、あんた達に誓う。

 ボクちゃんは負けない。負けたりなんかしないんだからぁ! あんた達がもし全員敵になったとしても、ボクちゃんは絶対負けたりなんかしないんだからぁ!! やってやるんだからぁ!!

 ――さんざめく木々の山あいが揺れた。一片の曇りもない神々しい空が唸った。心の父である大地が震え出し、人類の母である大海原が轟き出した。そして、尽きる事のない茗荷帝国建国を夢見て止まぬ、マッド軍曹の魂の鼓動が震え出した!

「うおぉぉっ!! スーパーエレクトリックサンダー炎の水魚のポーズコマヨツビシハイユニット発明二枚返しぃっ!!」

 博士は飛んだ。

 世界屈強の発明部屋とも言えるオーラ・ムンドの秘密のアジトの一室で、一人寂しく飛んだ。組織の部下も上司も同僚もいない、個別の研究室の片隅で飛んだ。だーれも見ていないのにも関わらず、飛んだ。しかし、その博士の姿は、神か天使と見紛うほどであった。

 普段から研究研究で外になんか出たことのないモヤシの如き体躯は、床より17フィートほど飛び上がり、ひとしきり発明品の立ち並ぶ宙へと舞った。そして宙を舞った体は、縦に反転し、足が天を指し、頭が地に向かう。その体躯のしなり具合の見事な事といったら、余りにも美しくて例えようがない。しかし、あえて例えるのなら、それは名古屋城にその幽玄な風格で態を成すしゃちほこと言っておこう。否、鯱の姿をした炎!

 ――博士は腕をクロスさせている。一重まぶたをつむっている。伸身の体躯を菊一文字きくいちもんじいや、和泉守兼定いずみのかみかねさだの如く反り返させる。

「むふぁぁぁ……たあ!!」

 掛け声は一瞬であった。光陰の如き一瞬であった。

 クロスさせている貧弱な腕から、炎が舞い出でた。そして、コマの形をした炎と水魚の形をした稲妻とチビた鉛筆の形をしたオーラが、発明台の上にあったものをひとつのユニットに変えた。あのゲ○の聖地とも言われる夜の東神奈川公園のくずかごの中にあったガラクタを、一瞬にして地上最強のパワーを持つユニットへと変換させてしまった。

 これは凄い。これは凄いことなのだ。

 これを奇跡と呼ばずして何を奇跡と呼ぶのであろうか!? 何を偶然と呼ぶのであろうか!? うーん、やっぱり偶然なのか!?

 だいたい博士は発明家だ。科学者だ。それなのに、奇妙奇天烈へんちくりんな技を使って、何でこんな事ができたのであろうか!?

 それは作者が悪いのだ! 作者が変な脱線をするから悪いのだ。当初、SFサイエンスフィクションというカテゴリーで書いていたこの作品を、昨日からファンタジーに変更してしまったせいなのだ!!

 ――ブハァァァ!!『錬金術!』

 なんて事だ。なんて事だろう。まるで収集がつかない。オチは決まっているのに、そこに辿り着くまでがこんなに困難だったとは!

 急がば回れというが、回りすぎなのは良くないという証拠だ。

 さあどうなる、軍曹。さあどうなる今後の展開! 明日の地球の命運は君の双肩にかかっている。君の――フゴッ!!

「さっきからうるさいわねぇ。どこのどいつかしら? ボクちゃんの研究室に『おしゃべりくまちゃん人形』なんておいたの。まったくうるさいったらありゃしない!」


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