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#1【その マッド軍曹という博士】
門松は 冥土の旅の 一里塚
めでたくもあり めでたくもなし
一休宗純
時は、西暦20XX年。
南国の優しい潮風と、北国の厳しいオロシとがぶつかり合う、丁度都会と田んぼの真ん中へんから森の奥深く入った山岳地帯のその下の、大きな河が流れるずぅーっとずぅーっと下流辺りに佇む赤い鉄塔の展望室から、舶来品の双眼鏡でジーッと見つめていると思わずゴックン頭の中に浮かんでくる垂涎ものの手作りお弁当に本能的に舌鼓など打って、瞳のキレイな恋人と「はい、アーン!」とか言って戯れている妄想にウットリとしてしまいたくなる場所に、御平家支払町という名の町があった。
そのひどくふざけている町の外れには、ちょっぴりおしゃまで、ちょっぴりセンチな発明好きの博士が住んでいた。
その博士の名前は、『松戸群荘』。
彼は、“発明”という二文字に沈溺する事半世紀余り。近所の住民達は、そのひねくれた性格ありのままの容貌と、どこか憎めない喋り口調から、彼を敬愛し包み隠さずこう呼んだ。
『お〜い! マッド軍曹(ぐんしょ〜)!!』と。