表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勉強の神様は人見知り  作者: 京夜
神様の自信
83/123

学問の神様

 翌日は、一日自由時間。

 まどか、誠、曜子、悠太の4人で京都市内を歩いて回ることになった。


 最初の目的地は、北野天満宮。

 行きたいと希望したのは誠だった。


「どうして北野天満宮に行きたいのですか?」


 まどかが誠に尋ねる。


「学問の神様といえば、誰だと思いますか?」

「えーっと、菅原道真?」


 まどかの答えに、誠は笑顔でうなずく。


「ここはその菅原道真公が奉られているのです。」

「あっ、なるほど」


 まどかも納得して笑顔になった。


「ちょっと早いですが、合格祈願をしましょう」

「はい!」


 電車を乗り継ぎ、4人は北野天満宮にたどり着いた。


 荘厳な木造の門をくぐり、境内の石畳を歩いていく。

 まだいくらか時間が早いせいか人もまばらで、ゆっくりとあたりの様子を見ながら歩くことができた。


「そもそも、なんで菅原道真公が学問の神様と呼ばれるようになったか」

「はい」


 まどかは誠の隣にいたが、曜子と悠太も誠の声が聞こえる位置で歩いていた。


「道真公は学者の家に産まれ育ち、5歳で和歌を詠み、11歳で漢詩を作ったと言われています。いわゆる神童ですね。その後も、その才能からどんどんと出世していき、天皇に次ぐほどの地位を手に入れます」


 4人は中門をくぐり、大きな社殿へと向かって歩き続けた。

 かたわらには、梅の木が立っていた。


「ところが、彼をよく思わない藤原家と新しい天皇が、彼に罪をきせて太宰府に流してしまいます。そしてその二年後、道真公は息を引きとってしまいます。才能がありながら、最期は恵まれない境遇にあってしまったのです」


 社殿にたどり着き、それぞれにお参りをする。

 願いは口にしなかったが、心の中に秘めた願いをこめたようだ。


「お守りを買って、絵馬を書きましょう」



 社務所によって、合格祈願のお守りを購入して、またもとの道を戻り始めた。


「道真公の死後、敵対していた藤原家や天皇家の人間たちが、たちまち病死したり、落雷により亡くなったりしたのです。そこで、道真公の祟りを鎮めるために建てられたのが、この北野天満宮と言われています」


「そうなんですか。太宰府の天満宮は知っていけれど、北野天満宮は知りませんでした」


「太宰府は亡くなったところですね。鎮魂のためなのでしょう。……あと道真公のお父さんは、今でいう塾の先生をされていて、たくさんの優秀な人材を送り出していたそうです」


「そうなんだ」


 曜子も思わず感心して、そう言った。


「バスガイドがいらないな」


 誠のことを感心した悠太が、そうつぶやく。


 誠は恥ずかしそうに頭をかいた。


「こんな話しか出来ませんが」


 誠が自嘲気味につぶやくと、まどかが励ますように手を握ってくれた。


「勉強になりました。有り難うございます」


 そんなまどかの心遣いが嬉しくて、誠は「はい」と言って笑顔になった。


 4人は絵馬所で絵馬を書い、それぞれに願い事を書いて吊るした。


 まどかは、医師になれますように。

 誠は、人の役に立てる人になりたい。

 曜子は、いい出会いがありますように。

 悠太は、恋愛成就。


 願いを込めて。



 そして、4人は次の目的地に向かった。

 今度は悠太の希望で早めのお昼を取ることになった。



 京野菜と漬物を美味しく食べさせてくれるお店で、狭い店内だったが多くの人で賑わっていた。

 旬の野菜を、京都らしい落ち着く味付けで料理されていて、漬物とご飯と合わせると、とても美味しい。

 女性陣にもカロリーの少ない野菜づくしの料理に好評の様子だった。


「ほんとうに美味しいね」


 まどかは京野菜の滋味を、舌の上で確認するようにゆっくりと食べていた。


「何杯でも、ご飯がいけそう」


 やや量に走りがちな曜子がつぶやいた。


「喜んでくれて良かった」


 まどかが喜んでくれて悠太は嬉しそうだったが、感情はやや抑えている様子。


「そうか、こうして料理をするといいんだ……」


 誠はブツブツ言いながら、ノートにレシピを書き込んでいた。

 家に帰ったら、早速試してみようと考えている様子だった。



 そして、次の目的地は曜子の希望。

 八坂神社近くの一つのお店に入る。


「これも、ひとつのコスプレよね」


 曜子が嬉しそうにそう言ったのは、ここが舞妓姿になることができるお店だったからだ。

 着物の着付けと化粧をしてもらい、即席の舞妓姿を堪能できる。

 写真撮影まで入り、やや値段は高いが、曜子をこれを絶対にやってみたいと希望していた。

 もちろん、まどかも一緒にやることになっている。


「少しお金を足すと、外の散策もできるんだ」


 悠太が料金表を見て、そうつぶやいた。


「そうみたいね。でもけっこうするから」


 曜子がすこし残念そうに答える。

 悠太はしばらく考えていたが、まどかと曜子に聞いてみることにした。


「その分は俺が出すから、一緒に外を歩かないか?」

「えっ?」

「本当?」

「俺が一緒に歩きたいんだ。出させてくれ」

「…………」


 まどかは戸惑ったが、曜子は悠太の気持ちを理解して、申し出を受けることにした。


「有り難う。そうさせてもらう」

「曜子……」

「まどかも、一緒に。記念だから」

「……うん。有り難う」

「どういたしまして」


 悠太は口元だけで笑った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ