触れていたい ( R-15 )
たぶん、ギリギリ大丈夫だと思いますが、保険のためにR-15とさせていただきます。
年齢的、こういった展開がお嫌いな方は飛ばして下さい。
誠が唇を離し、じっとまどかの瞳を見つめた。
何かをしようとしているのはまどかも感じたが、それが何か解らず、しばらくそのまま待った。
誠はためらいながらも、相手を求める衝動に突き動かされるように、つぶやいた。
「本に書いてあった……キスをしてもいいですか」
本に書いてあったこと。
それは、今のキスとはまた違うキスをしてみたいということ。
誠が言いたいことをまどかも理解し、こくん、とうなずいた。
まどかも初めての経験だったが、恥ずかしさよりも、もっと触れていたいという気持ちがまさっていた。
誠がゆっくりと唇を近づける。
変わらぬキスの後に、ゆっくりと舌が唇を割ってきた。
まどかの唇の間を、誠の舌が入り込んでくる。
まどかは身体をくねらせた。
舌が入ってくることで、まるで誠と一つになったような一体感に包まれる。
舌が口の中をゆっくりとなぞるのが、とてつもない快感と、一つになっている充足感をまどかに与えていた。
思わず、まどかからも舌をからめてしまう。
互いの舌が触れ合い、確かめ合う。
部屋に、くちゃっ、ぴちゃっ、と舌を確かめ合う音が響いた。
唇を触れ合うよりももっと強い、快感と充足感がふたりを包んでいく。
恥ずかしさはどこかへ消えてしまい、もっとつながっていたい、快感を感じていたい、という気持ちばかりが身体に満ち溢れていた。
口腔内を蹂躙し、舌を絡め合い、相手を求め合う。
何度も舌を求め合い、ようやくふたりは離れた。
舌と舌が離れることを拒むように、糸を引きながら。
「…………」
快感が波打つように身体に押し寄せるのを感じながら、ふたりはまた見つめ合う。
まだまだ夜の時間は残されていた。
誠はずっと言葉に出来なかった、でも果たしたい思いを口にした。
恥ずかしさよりも、いまはもっと触れてみたい。
「胸を……触ってもいいですか」
まどかの鼓動が、どくっ、と強く打った。
もっと身体は触れて欲しいと叫んでいるが、まだ恥ずかしさの方が先にたっている。
どう返事をすればいいか迷いはあったが、触れて欲しいという欲求のほうがゆっくりと次第に高まっていく。
まどかは返事をせず、そのまま誠の手が触れてくるのを待った。
誠も胸を触れたい気持ちが強くなり、返事を待たずに右手を伸ばした。
まどかの胸に触れる寸前の、誠の手をふたりで見つめる。
あと少しで触れる。
誠は触れることにためらいがあったが、まどかは思っていた以上に触れられたい気持ちが溢れてきた。
ためらい、動かなかった誠の手に、まどかは自分から胸をあてた。
ふいに感じた柔らかい感触に、誠は鼓動が急激に高鳴る。
まどかの胸は、想像していたよりももっと柔らかく、そして温かかった。
服越しに触れているだけなのに、手から気持よさが伝わってくる。
経験したことのない柔らかさに、誠はもっと直に、両手いっぱいに触れてみたい衝動にかられていた。
まどかは触れられる恥ずかしさよりも、感動の方が強かったが、服一枚の壁をもどかしく感じていた。
直接触れられるのはとてつもなく恥ずかしいが、キスの時の互いの肌が触れるような快感が押し寄せてこない。
恥ずかしさと、触れて欲しい欲求とで、まどかは思わず身体をよじった。
まどかの変化に誠もそれとなく気づいたが、自分からは「裸になって欲しい」とは言えず、胸に添えた右手をそれ以上動かせずにいた。
気持ちはいいが、もどかしい時間がすぎる。
まどかの方が我慢できずに、提案をしてきた。
「後ろから……抱きしめてくれますか?」
あらわな胸を見せるのは恥ずかしい。
それでももっと、肌と肌を触れ合わせていたい。
まとがは後ろから抱きしめてもらうことで、それを叶えようと考えた。
戸惑う誠の前で、まどかは寝返りをうって背中を向ける。
そして、恥ずかしそうに、ゆっくりと浴衣を脱ぎだした。
「…………」
肩があらわになり、まどかが浴衣から手を抜いていく。
浴衣はいつしか腰元まで下ろされ、まどかは上半身が裸の状態になった。
月夜の光の下で、まどかのうなじ、柔らかな背中、引き締まった腰のラインが浮かび上がっていた。
女性らしい白くて透き通る肌が、触れられるのを待っているように光っている。
そして、背中の背骨のラインが艶めかしく波うち、見ているだけで誠の性的な欲求をかきたてる。
誠もまどかの気持ちと同じだった。
もっと肌を触れ合わせていたい。
誠は浴衣を脱いで、上半身を同じように裸にした。
そっとまどかに寄り添う。
誠の胸とまどかの背中が触れ合う。
そして誠は手をまわし、まどかを抱きしめた。
まわした手は、まどかの胸を直に触れていた。
「あっ……」
まどかの口から、悩ましい吐息が漏れる。
体全身が包まれるような感触。
背中が触れ合い、足も絡めあうように触れ合っている。
胸も交差した手があたり、手のひらの温かい感触をまどかは胸いっぱいに感じていた。
キスした時とはまた違う気持よさと、安心感がゆっくりと身体を包んでいく。
愛する人に抱かれる喜びと安心感。
胸が触られている恥ずかしさよりも、いまは包まれる喜びが大きい。
触れられたい欲望と緊張が、しだいに満足感と気持よさに置き換わっていく。
まどかは触れられ、抱かれている喜びの中、一日の疲れのせいか、しだいに眠気が来るのを感じていた。
そしてそのまま、いつしかまどかの意識は眠りの中に落ちていった。
「まどかさん……?」
まどかから寝息が聞こえ始め、誠が思わず問いかけたが、返事はなかった。
本当に寝てしまったようだ。
誠の性的な興奮は、ゆっくりと落ち着いていった。
危なかった……。
確かに、曜子の言っていたことは正しかった。
まどかの意識が続いていたら、どこまで誠の理性が働いたかあやしい。
もっと、もっと……と言う心の欲求に任せていたら、最後まで行っていたかも知れない。
安堵の気持ちとともに、残念な気持ちも、誠の心のなかにはあった。
以前までは全くなかった、もっと触れていたい欲求が心のなかに確かに存在している。
好きな人への強い欲求。
誠はあらためて、まどかをぎゅっと抱きしめた。
すみません。長引いて。
あともう少しだけ、続きます。