放課後―3年生
三題噺もどき―きゅうひゃくよんじゅうきゅう。
「ありがとうございました」
久しぶりに来た2年生の教室から出て行き、廊下に出る。
小論文の採点と、評価をしてもらうために、担当の教師の下に来ていた。
いつもなら職員室に居るのだけど、今日は教室に来てくれと言われたので。
「……」
夏休みからこちら、推薦のための勉強ばかりしていてさすがに疲れてきた。
小論文は正直いい具合に行くと思うのだけど、面接がどうにも……担当の教師はいい感じだと言ってくれるがどうしたって不安が残る。
「……」
試験当日はまだ先ではあるが……とはいってももう2ヶ月を切っている。
同じ県内ではあるから、雪が降るような心配はしなくてもいいが、なんで試験って冬にするんだろうな……。毎年雪で足止めをくらったり、大雪の中で歩いたりしている受験生をテレビで見る。
「……」
まぁ、なんでも何もないのだけど。
そんな先の、しなくてもいい心配をするまえに、自分のことの心配をしなくては。
とはいえ、小論文も面接も実践をして改善をしていくしかない。
高校受験でもこんなに勉強していない……頭が毎日パンクしそうである。
「……」
先程の教師の評価を思い出しつつ、自分の教室へと戻っていく。
2年生の教室や廊下では、もちろん2年生はいるのだけど……あちらからは、フルートの音色が聞こえ、あっちからはトランペット。
あの教室にはクラリネットがいるらしい。
「……」
放課後の教室からはいろんな音が聞こえる。
吹奏楽部がいろんな教室や廊下で練習しているから。
音楽室ですればいいのにと思うが、まぁあまり広い場所ではないから仕方ないのだろう。
音楽室は大型の楽器が占めているのかもしれない。
「……」
それはそれとして、うるさいけれど。
教師の声を聞くのも精一杯な程にはうるさかった。
何で教室でしたのかと問いたいくらいには、周りの音が気になって仕方なかった。
「……」
騒がしい廊下を抜け、階段を昇っていても音は聞こえてくる。
教室に対して防音性なんてないんだから、仕方ないとは思うが。
一応、3年生は受験の時期で、この時間に教室に残って勉強をしている人も居る。
「……」
比較的静かな3年生の教室の並ぶ廊下。
教室の明かりがついている所は、生徒が勉強をしているかただだべっているか。
それなりに時間が経っているから、多分勉強をしている人しか残っていないだろう。
「……」
私も荷物を置いていた自分の教室へと戻る。
後ろから入ると、教室で残っていたらしい生徒が振り向いた。
荷物が置いてあるんだから来るの分かってただろうに……そんな睨まなくても。
まぁ、集中を切ってしまったのなら申し訳ない。
私はもうこの教室には用はないので、さっさと出て行くから気にしないで欲しい。
「……」
何故かこちらがもやもやとしつつ、ロッカーへと向かう。
ここに必要な教科書を置いてあったのを思い出したのだ。
……先日まで文化祭の飾りや衣装でいっぱいだった教室のロッカーの上は、もう空っぽになっている。設置された黒板には、受験の事ばかり。
「……」
文化祭の余韻に浸る事もなく、さっさと切り替えていかないといけないというのも、寂しいものだ。
手に持っていた小論文などを鞄に片付け、リュックをもち、教室を出る。
ほんとは勉強するなら自分の教室でしないといけないんだけど。
「……」
そんなものモチベーションは上がらないし、何よりあの子がいるのにあの子の教室に行かない理由はない。
放課後なんて、周りの目も気にせず、他から横やりを入れられることもなく、たくさん話しながら、休憩もして、勉強も一緒にできて。
楽しいことしかないのだから。
……そもそも、学校に来る理由がほぼ、あの子に会えるから、なんだから。
「おまたせ」
「おつかれ~」
教室に入ると、既に勉強を始めていて、机にはテキストが広げられている。
自分で行きたい大学を探して、自分の意思で考えて勉強をしているあの子は凄いと思う。
「どうだった~?」
「まぁまぁ、いいかんじ」
隣の席に座り、鞄を広げる。
時間がおしてしまったので、あまり時間はないが。
教師の催促が来るまではここで2人で、勉強をする。
お題:フルート・夏休み・雪




