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エピローグ 新しい指標
半年後。 東都格付研究所は信用失墜により解散し、業務は外資系の大手格付け会社に引き継がれた。 黒田には懲役五年の実刑判決が下り、鬼頭は裁判中に病死した。彼の不正な利益はすべて没収された。
結城は、茅場町の小さなオフィスにいた。 『結城信用リサーチ』。 彼が新しく立ち上げた、独立系の調査会社だ。 大手のような権威はない。だが、しがらみのない、公正なレポートは、一部の良心的な投資家から高く評価され始めていた。
ドアが開き、美咲が入ってきた。 彼女もTCRを辞め、結城の元で働くことを選んだのだ。
「所長、新しい依頼です。新興のバイオベンチャーですが、財務諸表に怪しい点があると……」
「よし、徹底的に洗おう。数字の裏にある『経営者の顔』を見るんだ」
結城は眼鏡の位置を直した。 格付けとは、単なる記号ではない。 それは、企業と投資家、そして社会との信頼の架け橋だ。 その橋を守る番人として、彼はこれからも市場を見つめ続ける。
窓の外には、東京の空が青く広がっていた。 どこまでも透明で、嘘のない空だった。
(完)
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件等とは一切関係ありません。




