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旧友-1

 俺たちはオーガ一行と坑道の出口に向かって歩いている。

「魔王ってどんな人だったの?」

 俺は最初に会ったオーガに話しかけてみた。オーガは顎に手を当てて考えるような素振りを見せると、思い出したように言う。

「強い人だった!」

 俺は天を仰ぎながらグリフを思い出した。魔物と会話が出来ても、細かいことを話せるようになるには時間が掛かる。

 俺は後ろを歩いているカレイド達に聞いてみようと思って振りかえった。だが二人とも疲労と睡眠不足でヘロヘロになっている。


(魔王軍の残党って言ってたよな。魔王が黒魔法使いだったのであれば、黒魔法の情報があるかもしれない)

 俺の中のファンズが言った。

(魔王のランクはいくつだったんだろう?意思疎通が使えたなら8以上かな?)

 俺の中のミストが言った。

(俺やお前みたいに、たまたま覚えただけかもしれん。ただ魔物に意思疎通をバラ撒けるなら生命吸収は使えただろう。最低でもランク9だろうな)

 俺の中のオルドが言った。

(カレイドは「主の命令」と言っていたわね。その主は魔王の関係者なのかしら?)

 俺の中のモリガンが言った。

(思考を進めるにしても情報が足りないですね。どうします?このまま彼らについて行きますか?)

 俺の中のアクストリウスが言った。

 

「とりあえず、カレイドの主に会ってから考えるか……」

 俺は小声で呟いた。


 坑道の先に刺すような光が見え始めた。どうやら出口のようだ。

 カレイド達はほっとした表情で先導を再開し始めた。

 俺は振り向いてオーガの方を向いた。

「じゃあね!」

 俺はオーガたちに挨拶をして手を振った。オーガたちも、その獰猛な顔に軽く笑顔を浮かべながら手を振り返した。

 俺はカレイド達について出口へ向かって行った。


 坑道を抜けた俺は、先導しているカレイド達に話しかける。

「目的地にはまだかかるの?一旦休む?」

 国境は抜けたから、ひと段落はついたはずだ。一休みするにはちょうどいいタイミングのはずだ。

 だがカレイドはその疲れ切って、頭の回っていなさそうな顔にも関わらず、それを拒否する。

「ここからそれほど遠くはありません。行きましょう!」

 そう言うとその体に鞭を入れて、棒になった足で歩み始めた。



 そこから暫く歩いた先に、城のようなものが見え始めた。黒い古びた城だ。かつて舞踏会の開かれていた艶やかな王都の城とは違い、もっと無機質で冷淡な印象のする窓の少ない城だ。

「あの城が我々の拠点です」

 城門の前に着くとカレイドが門の上を見上げて合図を送る。城門の落とし格子がゆっくりと上がり始めた。


 門の先に進んだ俺たちは階段を上がり、その先にある長い階段の前に辿り着いた。

 カレイドが俺の方を向いて言う。

「この階段の先に私の主がいます。貴方を助け出したのは主の指示です。お会いして下さい。申し訳ありませんが、我々はここで……失礼します……」

 最早限界を突破しているカレイドはそう言うと、ベルフェ一緒にフラフラと歩きながら別の場所に歩いて行った。

「お疲れ様です……」

 俺はその後ろ姿に一言だけ言った。


「誰なんだろう?会ったことのある人なのかな?」

 俺は呟きながら階段を上っていく。階段を少し上った先に、フードを被った人が居た。

 どうやら少女のようだ。フードを目深にかぶっているので表情は分かりにくいが、青い肌をしているところを見ると、魔族のようだった。

「貴方がファンズ様ですね!私はルシルフと申します!」

 ルシルフと名乗った少女は俺に向かって丁寧にお辞儀をする。俺はルシルフに尋ねる。

「貴方が俺を助けるように手配してくれたんですか?」

 お辞儀を終えたルシルフは、軽く首を振って否定した。

「私ではありません。この先におわします、城主様でございます。私に付いて来て下さい!」

 ルシルフはそう言うと、弾むように階段を上がって先導し始めた。

 

「城主様はこちらの扉の先におわします!どうぞ、お進みください!」

 周りの扉よりも少しだけ大きく豪華な扉を、ルシルフが綺麗な手の平で指し示した。

 俺は言われるがままにその扉を開いて先に進む。進んだ後でルシルフもついて来た。扉がガタンという音をたてて閉まる。


 俺は入った部屋の中央を見た。そこには車いすに座っている一人の男がいた。

 長い金髪に金刺繍の施されたスーツ。その目には包帯が巻かれている。

 その車椅子の手押しハンドルを掴んでいる、赤髪の女性には見覚えがあった。その女性が俺を見つめる。

「師よ。お久しぶりですね!」

 車椅子に座っている男が爽やかな声で俺に向かって言った。


(まさか……!)

 俺の中のファンズが絶句する。

 俺の中のアクストリウスが無言になった。

 

 車椅子の男は、本物のアクストリウスだった。

 

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