襲撃-2
メンデルスを倒した男が魔手に乗って、スライドするように二人の兵士に襲い掛かる。兵士たちは剣を抜いて応戦の構えを取りつつ、大声で叫ぶ。
「メンデルス様がやられた!」
一人の兵士は向かってきた男に必死で剣を振り下ろし、もう一人が同時に剣を突き出す。
だが振り下ろした剣は右手の青剣によって焼き切り落とされ、突き出した剣は左手の加速魔法で弾き飛ばされた。右手の返しの青剣が突き出され、剣を振り下ろした兵士の胸を刺し貫く。
胸を貫かれた兵士は青剣の腕を掴もうともがいたが、すぐに動かなくなった。
武器を失った兵士は短剣を抜きながら後ずさり、大声で屋敷の向こう側の兵士に伝える。
「駄目だ!勝てない!逃げろ!」
そう叫んだ時点で、男の左手が兵士の顔を掴んだ。そこから青剣が突き出て兵士の顔面を貫く。兵士は一瞬で絶命した。
アクストリウスは二人の兵士を地面に下ろすと、振り返って倒れている白魔法使いに向かって行く。
アクストリウスは肉の焼ける臭いに顔をしかめながら、倒れている白魔法使いの持ち物を探る。その懐には探知魔道具があった。
探知魔道具を懐に入れたアクストリウスは、屋敷に向かって叫ぶ。
「探知魔道具を見つけた。カレイド!ベルフェ!行くぞ!」
屋敷から走り出た二人を確認したアクストリウスは、獄炎を廃屋に放った。廃屋は見る間に炎上していく。
カレイドは少し驚いた風に後ろを振り返った。
アクストリウスは走って来たカレイドに言う。
「次の場所まで案内してくれ。探知魔道具は奪ったから、追跡は巻けるはずだ。隠れながら進もう」
それを聞いたカレイドが驚きを隠しながら頷く。
アクストリウスは炎上が進んだ廃屋に爆裂魔法を放り投げた。爆発した魔法が炎上した廃屋を吹き飛ばし、辺り一帯に濃霧のように煙をまき散らす。
躊躇の無い爆発に、カレイド達は流石に屋敷の合った方を振り向いた。
「これで多少は目くらましになるだろう。とりあえず、その森に逃げ込もう」
アクストリウスはそう言うと近くの森を指さした。カレイドはそれを聞いて、森の先導を始める。
アクストリウスたちは煙に紛れるように、近くの森の中に逃げ込んでいった。
帝国の後続部隊が到着した。到着した白魔法使いが、残された二人の兵士に話しかける。
「おい、メンデルス達は無事か?」
兵士の誘導に従って、白魔法使いたちは倒れているメンデルスと兵士に近づいて行く。
「兵士は……二人とも駄目だ!」
兵士の状態を確認した白魔法使いが、悲痛な様子で叫んだ。
メンデルスに向かった白魔法使いが叫ぶ。
「メンデルスはまだ息をしている。応急処置を始めるから、お前らもここに来てくれ!」
そう言うと、白魔法使いが回復魔法を使い始める。他の白魔法使いたちも集まり、皆で協力してメンデルスに回復魔法を重ね掛けし始めた。
カレイドが先導して森をかき分けていく。
アクストリウスを中に戻して、俺は先導しているカレイドに質問を投げかける。
「俺たちってどこに向かってるの?」
真剣に先を急いでいるカレイドの替わりにベルフェが答える。
「我々の拠点となっている、旧魔王軍の城です。我々魔王軍の残党は、そこに集結しているのです」
俺たちは丸一日かけて帝国の国境付近まで来た。
全員疲労困憊だが、眠くならない俺よりも、二人の方が辛そうだった。睡魔が過ぎて、逆に目が見開いている。
「少し休む?」
俺の提案に対して、カレイドが目をギラギラさせながら答える。
「いいえ。休むと逆にへばりそうです。この近くの廃鉱山の洞窟から国境を抜けられるので、そこまで突っ切りましょう!」
そうして徹夜でハイになっている魔族二人と一緒に、俺は廃鉱山に向かう。
廃鉱山に人影は無かった。人影どころか動物のいる様子もない。
「ここを抜けるの?何か魔物が巣を作っているとかないよね?」
少し不安になった俺は、辛そうな顔をするカレイドに聞いた。カレイドが面倒くさそうに答える。
「私たちも来るときにここを通ったので大丈夫です。中は迷路になっているので、引き続き案内します。明かりが欲しいので、松明の準備をして貰えますか?」
(フラグじゃないよな……)
余計なことを考えながら、俺は松明に出来そうな材料を探しに、近くの廃材置き場に向かった。
ベルフェがカレイドにこっそりと耳打ちする。
「あの人、廃屋での戦いと全然人が違うんですけど、なんなんでしょうか?」
カレイドが疲れた顔をしながら答える。
「分からん。分からんがもういい。主の指示なんだ。とりあえず、連れて行ってから考えよう」
そう言って、カレイドは主の顔を思い出した。
(そう言えば、戦闘中の彼はどことなく主に似ていた気がするな。気のせいか……)




