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 ミリアがドナルドを、ファンズを見つめる。

「私の事、覚えてる?」

 ファンズはミリアを見つめながら考えているようだ。

「覚えていないか……私は大人になったからね!ドナルドは相変わらず、変わらないけど」

 それを聞いて、ファンズは思い出したような顔をした。それを見て、ミリアが少しだけ笑う。

 そしてミリアはポケットから方位磁石のような物を取り出した。

「これは貴方を探知する魔道具。冒険者ギルドに匿名で送られて来たの。指名手配犯を指し示す魔道具という説明書きが添えられて。それで私たちの誰かが、貴方を追うことになった……」

 ミリアが魔道具を仕舞うと、再びファンズを見つめる。

「私は魔王軍との戦いの戦線に向かう途中だった。でもそれを聞いて、無理を言ってでも、私が行くことにしたの。私が行かないと駄目だと思って……」

 ミリアが今度はペンダントのようなものを取り出した。

「私は貴方を助けたい。でも立場上、貴方を捕まえなければいけない。貴方はそれだと困るよね……貴方は、死なないのだから」

 それを聞いたファンズが目を丸くする。それを見たミリアが言う。

「大丈夫。そのことは誰にも言っていないから。だから他のメンバーにそれを秘密にしたまま、貴方を捕らえることにした」

 そう言うと、ミリアはペンダントをその手に巻きつけて、ファンズにかざした。


 封印


 効果:

 対象を宝石に封印する


「ごめんね……」

 ミリアは、ファンズを、そのペンダントに封印した。



 ミリアは南の戦線の将軍に言付けを伝えると、すぐにその場を離れて魔王軍との戦いに向かった。彼女は多忙なので、長くこの戦線に居ることは不可能だった。

 その後、南の戦線は均衡した。帝国軍はファンズによってほぼ壊滅しており、何とか立て直したものの、侵攻を進める力は無くなっていた。

 北の戦線では、レオルドンとアクストリウスが激戦を繰り広げ、こちらも均衡した。

 

 

「師が封印されたか……」

 アクストリウスは拠点で部下からファンズの行方を聞き、呟いた。そしてエアリスとモリガンを連れて、外に出て今まで起きたことを振り返りながら歩く。


 舞踏会で突然爆発事件を起こし、王国と帝国の決戦が早まることになった。

 その犯人の正体が、かつて自身にインスピレーションを与えた者だと知り、意気投合した。

 互いに魔法に関する情報を共有して、互いに学び合った。

 魔の森から大量のキマイラの脊柱を持ってきて、それによって王国軍の戦力が強化された。

 帝国軍の一方面の軍団を壊滅させた。

 そして、最後には封印された。

 

 封印されたことで、悪魔を貸すという約束も有耶無耶になった。結果だけを見れば、王国にとって有利となることだけをしてくれたと言える。

「何者かが、師をこの国に遣わしてくれたのかもしれないな……」

 アクストリウスは、そう独り言ちた。


 外を歩いているアクストリウスに、一つの影が忍びよる。その影はアクストリウスの不意を突き、その斧を振り下ろした。だがその斧は、護衛として引き連れていた召喚体であるモリガンに阻まれる。

 驚いたアクストリウスが、その曲者の方を振り返った。

「何者だ!?」

 叫んだその先にいたその曲者は、白髪で髭まで真っ白な大男だった。ダズだ。ダズはその問いには答えずに、叫んだ。

「お前……モリガンを、モリガン達を、俺の女たちを返せ!」

 ダズはファンズからの簡単な手紙で手切れにされたと知って、頭が変になりそうだった。ダズの中ではファンズとモリガンがごっちゃになって、最早わけのわからない感情になっていた。

 だからあっさりと裏切られ、捨てられたという怒りに任せて、冒険者ギルドにファンズの正体を記した手紙と追跡魔道具を送り込んだ。そして、ファンズを奪ったアクストリウスに復讐するため、彼をつけ狙っていた。

 ダズは良く分からない憎悪と嫉妬にまみれた、とても惨めな男となっていた。

 

 アクストリウスがそんなダズを見つめる。そしてモリガンの召喚体に、呟くように言う。

「君は本当に、罪な女だね……」

 ダズは弱くない。弱くはないが、ランク7のアクストリウスにはまるで及ばない。最初の奇襲で仕留めきれなかったダズに、最早勝ち目などあるはずも無かった。

 だが、それでもダズはアクストリウスに立ち向かった。そんなダズを、アクストリウスはモリガンを繰って迎え撃つ。

 懸想した女の手で、懸想する男を打ち取る。同情したのか、馬鹿にしたのかは、よく分からない。

 

 結果は明らかだ。故に、ここに記述する必要はあるまい。

 

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