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神隠

 北の戦線の帝国軍の陣幕で、レオルドンが椅子に座りながら手当を受けている。左目が失われており、包帯が巻かれていた。それ以外にも多くの傷が体に刻まれている。手当をしているマリア言う。

「随分とやられましたね。左目は回復では直しきれないので、再生が必要です。この戦いには間に合わないかと……」

 やられたと言われて、レオルドンがむくれたような顔をした。そして反論するように言う。

「アクストリウスを見飽きた左目が根を上げたんだ。アイツとやるのも、いい加減飽きて来たからな……」

 マリアは笑いながら、レオルドンの手当てを続ける。

 そんな陣幕に、兵がやってきた。近くにいる将軍とレオルドンにお辞儀をして、報告を始める。

「南の戦線の被害が甚大です」

 そう言うと、南で起きたことの詳細を語り始めた。


「……ですので、レオルドン様に南の戦線へ来ていただけないかという要請が来ております」

 兵の報告を聞いたマリアが、渋い顔をする。レオルドンが椅子に座ったまま、答える。

「それは難しいな。私がここを離れると、今度はアクストリウスが抑えられなくなる」

 マリアは黙って手を握りしめる。前回の舞踏会の戦いで、マリアはアクストリウスに手も足も出なかった。レオルドンの替わりが務まらないのは明らかだったからだ。

 将軍がレオルドンに聞く。

「代案などはないのでしょうか?」

 その問いに、レオルドンが答える。

「戦闘開始前に連絡を受けました。あの方が南に向かっているそうです。そろそろ到着するころですな。であれば、特に私が行く必要も無いでしょう……」

 それを聞いたマリアが、不思議そうに言う。

「あの方は、魔王軍との戦線にいたはずでは?よく来られましたね……」

 レオルドンも頷きながら、答える。

「私もそう思っていた。だが何かタレコミがあって、至急来ることになったそうだ。私も事情はよく知らない……」

 そう言ったレオルドンは、空を仰ぎ見た。


「レオルドンのヤツ。本当に厄介だ!ヴェロニカが完全にやられた!」

 アクストリウスが拠点の城で、椅子に座って疲れたように喚いている。傍らには砕かれた脊柱が転がっていた。

 アクストリウスも少なからず怪我をしている。それをエアリスとモリガンの召喚体が手当てをしていた。ランク8のヴェロニカがやられたので、ランク9のモリガンを替わりに召喚している。

 そんなアクストリウスに、兵士が南の戦線の報告を始めた。


「流石は師だ。これほどの戦果を上げるとは……」

 アクストリウスは驚嘆した。有利とは想定していたが、これほど一方的になるとまでは思っていなかったのだ。アクストリウスが報告した兵士に尋ねる。

「それで師は今どこに?」

 それに兵が答える。

「どうやらワームと一緒に敵陣へ向かったようです。まだ帰還されておりません。そして、それとは別に気になる情報が入っております」

 そう言って、兵はその情報をアクストリウスに伝える。それを聞いたアクストリウスが、椅子から立ち上がった。

「馬鹿な!?ヤツは魔王軍の方面に居たハズだ。なぜここへ来る!至急、師に連絡しろ!」

 そう叫んだアクストリウスは、部屋のベランダに出て南の戦線の方面の空を仰ぎ見る。

 そこには、光を纏って飛んでいる何かが見えた……


 

 俺はグリフの鍵縄を解いている。リザードマンはオルドが抑えていた。

「グリフも結構手ひどくやられているな……飛んで帰れそうにない。ワームに乗って帰るか」

 俺はワームにこちらへ来るように命令を出す。そしてオルドとリザードマンの戦いの方に目を移した。

 リザードマンはオルドと互角に打ち合っている。オルドの操作命令は俺が作ったので、本来のオルドほどの実力ではないかもしれない。それでも結構やり手の戦士のようだった。

 俺は自決用に用意していた矢じりを、加速魔法でリザードマンに飛ばしていく。それを察知したリザードマンが、剣でそれを弾く。その隙にオルドの大剣の一撃がリザードマンに向かって放たれた。リザードマンがそれを避けるために後方へ跳躍する。俺はそこ向けて手をかざした。爆裂魔法を叩き込んで、さっさと終わらせるつもりだ。そんな俺をみて、リザードマンが言う。

「遅いぞ!」

 その声は俺でなく、俺の後方に向けられていた。そしてその瞬間、俺は気がついた。

 俺に向かって移動していたワームが、解呪されたという事に。

 俺は後方を振り返る。


 一人の女性が、光る何かから飛び降りて、ファンズの後ろにゆったりと降り立ってきた。長いパーマの掛かった金髪に、白いローブを着た、美しい女性だった。

 ファンズが反応する前に、グリフも、オルドも解呪されていく。

「ごめんなさい。遅れちゃって。後は私一人で大丈夫だから、貴方は下がっていて」

 それを聞いたリザードマンは、剣を背負ってその場を去る。彼の仕事は足止めだったので、これ以上の危険を冒すつもりはない。

 その女性は歩みを止めない。一瞬で光の拘束剣の魔法を使い、それでファンズを拘束する。ファンズは何も出来ない。

 ファンズの目の前で、その女性は足を止め、彼を見つめる。

 彼女は、ファンズを、彼がドナルドと名乗っていた頃から知っていた。


 レオルドンは帝国唯一のランク7だが、それでも帝国最強ではない。最強はその1つ上、ランク6の彼女だった。

 彼女は幼少の頃、帝都へ向かう道中でキマイラに攫われて、行方不明になった。だがその1か月後に、奇跡の帰還を果たす。皆がそれを奇跡だと喜んだ。

 彼女はその行方不明だった頃を語らない。いつの間にか1か月経っていたと語った。

 その後、彼女はその白魔法使いとしての才能を開花させ、ランク6 まで昇りつめる。


 彼女が、ファンズを、ドナルドを見つめる。

 彼は彼女の恩人だった。誰も知らない1か月の間、彼女は闇ギルドに攫われていた。その彼女を助けたのが、彼だったのだ。

 だが、それを誰にも語ったことは無い。なぜなら、それを語ると、彼が死なないことも話さないといけないからだ。


 魔法使いはランク7で二つ名を冠され、ランク6に至ると歴史にその名が刻まれる。

 

 歴史に刻まれたその名は、

「神隠、ミリア」


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