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戦争-5

 将軍が小高い丘の上から戦場を見下ろす。確かに敵陣から巨大な何かがうねるようにこちらに向かってくるのが見える。

「なんだ……アレは?」

 それは白い、長細い、蛇のように見えた。近づいてくるにつれ、その正体が分かってきた。

「ワームか!?それも、デカい」

 

 森の主

 20年前に魔の森に君臨していた頂点捕食者。白くて太くて長い蛇のような、巨大なワーム。その体躯は、数百年を生きる巨木すら上回る。

 その顔のある辺りには巨大な口があり、口にはこれまた巨大な乱杭歯が生えている。それに対して、目はとても小さい。

 

 俺は再びグリフに乗って、敵陣に向かっている。その下で這うように進んでいく、先ほど召喚した森の主を見ながら、用意するまでの行程を思い出した。


 魔の森で20年前にオルドと退治した森の主。その巨大な死骸は長い間、放置されていた。魔の森に戻った俺は、この森の主の脊柱が使えないかどうかを確認していたのだ。

 そのままでは欠落した情報が多くて使えなかった。その情報を埋める魔法陣を四苦八苦して作って、何とか完成にこぎつけた。後は王国の人手を借りて、移動魔法も使って、南の拠点まで運んできた。

 そしてこれを見せたアクストリウスと王国の将軍とも打ち合わせて、今回の作戦に森の主を組み込むこととなった。


「いやー本当に大変だった。大変だった分は、ちゃんと活躍してくれよ!」

 俺は一人呟く。森の主はその命令通りに、帝国軍の陣地に突っ込んでいった。俺もグリフを繰って、再び敵陣への爆撃を開始し始める。


 帝国軍はパニックになった。何せキマイラなどよりも巨大なワームが、その巨体のままに陣地へ突っ込んでくるのだ。槍も弓矢も通じない。ひたすら暴れまわり、蹂躙し尽くしてくる。

 体を振り回すだけで、兵も柵もまとめて薙ぎ払われ、口を開いて突っ込んで突撃してこれば、一飲みで5,6人は兵士が持っていかれる。白魔法使いの防御障壁も役に立たない。障壁は薙ぎ払い一発で砕かれるし、小さな防御障壁ならそのままワームに飲み込まれていく。

 白魔法使いが解呪を試していくが、効く様子はない。

 更に上空から再び爆撃が始まった。陣地が崩壊しているので、迎撃も白魔法による防壁も出来ない。そして爆撃によって空白の出来た陣地に、ワームが突っ込んでくる。

 空と地上からの蹂躙劇が、帝国軍で始まった。


「おい!ふざけるな!あんなもの聞いてないぞ!何とかならんのか!?」

 帝国の将軍が慌てふためいて叫んだ。隣の白魔法使いは呆然として、ワームを見つめながら答える。

「高ランクの白魔法使いによる解呪、もしくはワームごと吹き飛ばすような高出力の魔法、術者の排除。この辺りでしょうか?レオルドン様にこちらへ来ていただけないと……」

 それを聞いた将軍は、すぐさま撤退命令を出す。だが最早指揮系統がズタズタになっており、撤退は困難を極めつつあった。


 俺は上空から帝国軍を眺めながら考える。

(軍の三割がやられたら壊滅って、昔なんかで見た気がする。だったらこれって、もう壊滅してないか?)

 やけに出来すぎな気もするが、戦車と爆撃機で歩兵に突っ込んだら、そうなるのかもしれないと思いなおす。

「よし!もう一発爆撃を叩き込んだら退却だ!」

 そう言ってグリフを旋回して、敵陣の外れから森の主の方向に追い出すように標準を合わせる。

 グリフが高度を下げ低空飛行に移った、その時だった。

 突然、空中に飛んできた鍵縄のようなものがグリフに巻き付いた。それに引っ張られるように俺たちの飛ぶ軌道が固定され、遠心力のままに地面へ墜落した。


「痛いな。なんだ?誰だ?」

 俺は墜落したグリフから降りると、周りを見渡す。俺の近くに、一人の男が近づいて来た。リザードマンのように見える男の、その出で立ちは戦士のようだが、帝国の正規兵という感じではない。

「お前が指名手配中のドナルドだな?俺は冒険者ギルドの者だ。お前を捕らえるためにここへ来た」

 その男はそう言うと、背中の大剣を抜いた。

「あちゃー、とうとう見つかったか。今は忙しいんだけど、また今度にしてくれない?」

 俺は駄目元で言ってみた。リザードマンはそれをガン無視して、剣を振りかぶって突っ込んでくる。

 だが、その剣戟は別の大剣によって阻まれた。俺は立ち上がって服に付いた土を振り払いながら、その方を向いて言う。

「ちょっとグリフに巻き付いた縄をほどいてくるから、暫く時間を稼いでおいてよ」

 俺を守った大剣の主が答える。

「ちったあ、自分で戦えよ。オメーは本当にポンコツだな!」

 召喚体なので、自我はない。自我は無いが、俺は感情らしきものを書き込んだ。俺が書きたかったから、書いた。

 だからその返答を聞いて、俺は笑った。オルドなら絶対に、そう言うと思ったからだ。

 

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