戦争-3
(なぜ女の召喚体を戦場に連れて来た?)
レオルドンが大盾を構えながら、アクストリウスの繰るエアリスとヴェロニカを見つめる。舞踏会ならともかく、戦場なら、それこそキマイラの召喚体を連れてきた方が有利だからだ。
(舐めているのか?いや、それはない。恐らく何か仕掛けがある……)
アクストリウスは軽薄を装っているが、やることは合理的だ。何度も戦ってきたレオルドンはそれを分かっている。それゆえに、まずはその仕掛けの解析を優先し始める。
(さて、どう攻めるか……)
アクストリウスがレオルドンを見つめる。アクストリウスとしても、今後を考えると多重召喚は隠し通したい。それでもレオルドン相手に出し惜しむのは難しいと判断した。
アクストリウス、エアリス、ヴェロニカがそれぞれ召喚した魔手に乗る。そして、それぞれがその手から、青い炎を剣のように作り出した。
一人二体が魔手でスライドするようにレオルドンに向かっていく。
それを見たレオルドンが持っている大槌を変形する。それは長い鞭へとその姿を変えた。レオルドンの鞭がしなやかに放たれ、音速に達した切っ先がアクストリウスに向かう。
アクストリウスが寸前で回避するが、それを予測したレオルドンが手元を繊細に動かし、新たなうねりを作り出す。レオルドンが手元で作ったうねりが鞭を伝わり、変化した切っ先が、躱した先のアクストリウスを再び襲う。
アクストリウスは手元の青炎を解いて、鞭の切っ先を加速魔法で弾いた。この時点でアクストリウスの前進が止まる。
レオルドンは前進してくるエアリスとヴェロニカに標準を向ける。鞭を手放すと、新しく魔法で武器を作り出す。今度は剣だ。
レオルドンはエアリスとヴェロニカの手元の青炎を見ながら洞察する。
(アレはアクストリウスが練り上げた、ヤツの二つ名の由来となった技。それを召喚体が使っている……少し分かってきたぞ)
レオルドンが二人を迎撃しようとした瞬間、エアリスとヴェロニカがその前進を突如として止めた。
(不味い)
そう思ったレオルドンに大きな影が差した。影の主は、キマイラ。それも4体。4体12頭の8腕のカギ爪が、突如としてレオルドンを襲う。流石のレオルドンも地面に叩きつけられた。
キマイラのカギ爪がレオルドンを引き裂いていく。それに合わせてエアリスとヴェロニカが再び前進する。その青炎で止めを刺すためだ。二体四本の青炎が到達しようとする、その時だった。
レオルドンを切り裂いていたカギ爪が掴まれ、そのままもぎ取られ始める。そしてその腕を掴んだレオルドンが起き上がり、掴んだ腕を力ずくでへし折っていく。 血だらけになったレオルドンがその折れた腕を掴んだまま、砲丸投げのように体を回転させ始めた。エアリスとヴェロニカが巻き込まれないために、後方へ下がる。
回転した勢いのままに、振り回したキマイラをキマイラにブチ当てる。その瞬間に掴んでいた手を放し、思いっきり二体とも吹き飛ばした。
残った二体のキマイラの獅子はレオルドンを引き裂き、かじりつく。レオルドンは攻撃されるままに、その両手をキマイラたちに向けると、そのまま解呪を放った。キマイラの召喚体が解ける。
レオルドンは無事でないが、無事だった。防御障壁で急所を重点的に守りつつ、喰らった攻撃以上に回復魔法を使うことで、ゴリ押したのだ。
血だらけになって顔が怒りで引きついているレオルドンは、解呪した召喚体の脊柱をその手で砕く。そしてアクストリウスに指をさして、大声で叫び始めた。
「そういう事だったか!つまり、アレだな!お前の召喚したクソ黒魔法使いが更に召喚して、クソキマイラを増やしたのか!お前が直接召喚してなかったから、俺が解呪出来たってワケだ!良し!タネは分かった!今からお前はぶっ潰す!」
レオルドンはブチ切れつつ、冷静に状況を理解した。
「マジ切れしながら冷静に解説するの、本当に止めてくれないかな?いつも怖いんだけど……」
アクストリウスが少しだけ汗をかきながら、呟いた。




