王国vs帝国-1
「そう言えば師は何か私に用事が御有りのようでしたが、一体どういった御用だったのでしょうか?」
アクストリウスが魔法陣を読んでいる俺に声を掛けて来た。当初の予定を完全に忘れていた俺は、立ち上がってアクストリウスを見る。
「忘れていました。貴方の悪魔を貸してもらえないかなと思ってここに来たんです。ランク7ですよね……」
それを聞いたアクストリウスが真剣な顔で考え始めた。
(ランク8の爆裂魔法を使っていたことと、今の発言から合わせると、師のランクは8だ)
そしてファンズを見つめる。
(ランク8からの契約条件は自分の支配する組織の者。貸すのは良いが、契約をこの王国でやってもらうのは、正直困る!)
彼は王宮の筆頭黒魔法使い。この国の黒魔法使いを管理する責任がある。ランク8の黒魔法使いを野放しにすることは許されない。
「念のためにお聞きしますが、生贄の当てはあるのでしょうか?」
その問いに、ファンズが答える。
「今のとこは特に。とりあえず悪魔を借りて、それから考えようと思ってます」
アクストリウスは更に考える。
(とりあえず、一旦私の客分として召し抱える形にするか?貸しても貸さなくても、ウロウロされるのは不味い……)
考え終わったアクストリウスが、ファンズの方を向いて言う。
「分かりました。でしたら条件があります。これから始まる帝国との戦いに参加してください」
俺は少し悩んだ。ランク7の悪魔は欲しいが、戦争に参加するのは正直面倒くさい。だが……
(王国と帝国が戦争するのって、ぶっちゃけ俺のやらかしのせいなんだよな……)
なのでこう言われると今さら断り辛い。そして、気になることをアクストリウスに聞く。
「そう言えば、俺のやったことにお咎めは無いのでしょうか?」
いつの間にか許されている流れになっているので自分から掘り返したくはないのだが、戦争に関わるなら聞いておきたい。アクストリウスが答える。
「私はやるつもりが無かったので、師のやったことには正直困っています。ただ、いずれ一戦交えるだろうという状態ではありました」
アクストリウスがため息を付いた。俺は気まずい。アクストリウスが続ける。
「今さら犯人を突き出して帝国に謝っても、この流れは止まらないでしょう。なので意味がありません」
そしてアクストリウスが、俺の目を見つめて言う。
「なので、もし師が謝罪をお考えであるのであれば、是非とも戦争に参加して頂きたい!正直なところ、ランク8の戦力は貴重なのです」
(駄目だ、断る理由が何も見つからない……)
俺は観念した。
「分かりました……協力します」
俺はアクストリウスが戦っていた時のことを思い出しながら聞く。
「帝国と戦うのって、白魔法使いと戦うってことですか?」
俺は白魔法使いのことなどほとんど何も知らない。生前は白魔法使いだったというフレイヤを召喚して操作していたが、あの時は演技にしか使っていなかった。アクストリウスが答える。
「ケースバイケースですね。各々のランクと戦闘スタイルにもよりますから。私とレオルドンのやったような戦いは、戦場ではそれほど発生しません」
アクストリウスが図を書いて説明し始めた。
「戦場での黒魔法使いの最大の武器は召喚魔法です。しかし白魔法使いは、魔法によってそれを解除できる。そんな白魔法使いですが、彼らはそれほど火力が無いので、普通の兵士の大軍には弱い。こんな三竦みの関係にあります」
俺は先ほどの戦闘のことを思い出した。
「先ほどの戦闘でモリガンが杖に戻っていましたけど、アレは白魔法で解除されたんですか?」
アクストリウスがそれに答える。
「そうです。解呪というランク11の白魔法です。自身のランクより低いランクの魔法使いの魔法を解除できるという魔法です。レオルドンは私と同じランク7なので、彼であればランク8までの魔法使いの魔法が、解呪の対象になります」
俺はモリガンがエアリスによって召喚されていたという事を思い出した。
「貴方のランクは7だけど、モリガンを召喚したのはランク8のエアリスだから、レオルドンに解呪されたという事ですか?」
アクストリウスが頷く。
「そういう事です。レオルドンは多重召喚のことを知らないはずですが、それでもエメリアに解呪を撃った。その時に本来なら解除されないはずのエメリアが解呪出来た。そこで違和感を覚えて、即撤退を決めたのです」
俺は驚愕した。あの一瞬でそんな駆け引きがあったとはまるで気がつかなった。そんな俺を見たアクストリウスが面倒そうな顔をして言う。
「最初に解呪を撃ったのは野生の勘。その後は理性的に対処。本当に厄介な男です」
それを聞いて俺は思った。
(マジか。そんな奴らと戦うのかよ……)




