召喚の極意-2
「召喚魔法って多重召喚と合わせて二体。でも貴方はいくつもの召喚体を操作していたようだった。どう極めたらアレが出来るの?」
俺はエアリスから受け取った服を着ながら、気になっていたことをアクストリウスに聞く。アクストリウスは自慢げに答える。
「あの秘密は召喚体にあります。私が検証したのですが、召喚体が黒魔法使いであれば、召喚体は黒魔法を使うことが出来るのです。ただし制限があり、召喚者か召喚体のランクのうち、低い方の魔法しか使えません」
そしてアクストリウスがエアリスに目を向ける。
「生前のエアリスはランク8の黒魔法使いでした。その彼女がランク9のエメリアを召喚する。エメリアがそれ以下のランクを召喚する。これを繰り返していけば、多くの召喚体を同時に運用することが出来るのです」
俺はエアリスに目を向けた。豊かな赤髪が一本にまとめられ、右肩から流れるように垂れ下がっている。目は碧眼で、くっきりとした顔立ちの美人だった。
アクストリウスが続ける。
「これで理論上は何体もの召喚体を同時に運用することが出来ます。もっとも、召喚体の黒魔法のコストは召喚者持ちになるので、現実的な制限はありますがね」
俺は意志疎通魔法にも知られていない効果があったことを思い出した。黒魔法にはこういった思わぬ使い方があることもあるらしい。
俺は娼館で召喚魔法を使っていた時のことを思い出して、疑問を口にする。
「でも20体以上も操作するのって大変ですよね?」
俺は二体ですら手こずっていた。それを戦いながら何体も操作すると言うのは至難の業だ。アクストリウスが嬉しそうな顔をして答える。
「その秘密は召喚用の魔法陣にあります。お見せしますので、こちらに来ていただけないでしょうか?」
そう言って、アクストリウスは隣の部屋に向かっていく。俺もそれについて行った。
「これを見て下さい。これが私の作り上げた召喚魔法陣です!」
そう言って地面に掛かれたいくつもの魔法陣を見せつけた。俺は膝を付いて覗き込むように、それを確認していく。そして驚いた。
(凄い。いくつもの戦闘ケースに対応できるように、複数の命令をセットにまとめてある。そしてそれを組み合わせて、複雑な指示を瞬時に出せるよう組み込んである。学校で習ったプログラムみたいだ……)
戦闘の状況に応じてモードを切り替えるだけで、ほぼ自動で行動してくれるのだ。手動操作は最低限ですむので、自身は戦闘に集中できると言う訳だ。
俺はアクストリウスを見上げた。
(凄いなこの人。これがランク7の筆頭黒魔法使いか……)
俺の見上げた先のアクストリウスが、自慢げに前髪を掻き上げた。
俺は魔法陣の膨大な命令文を読み続ける。そして気がついた。
(なんかコレ、夜の生活用の記述が混じっているぞ……)
娼館運営をしていた俺はには分かる。これはどう考えてもそれ用だ。そして、更に気がついた。
(つーか、7割ぐらいそれ用じゃねーか!)
俺の見上げた先のアクストリウスが、よくぞ気がつきましたと言わんばかりに話し始める。
「ええ、師のお気づきの通りです。師から頂いたインスピレーションを元に、そのための記述を極めました。そして成功したのです!」
アクストリウスが右手を天高く掲げ、叫んだ!
「私の、私による、私のためのハーレムの構築に!!!」
俺の見上げるアクストリウスの背後のシャンデリアが、妙に輝いているように見えた。
アクストリウスが腕を組んで続ける。
「そしてそれを応用することで、戦闘シーンでも複数の召喚体を活用できるようになった。これが私の戦闘力を大いに向上させることに成功したのです」
それを聞いて、俺はアクストリウスをまじまじと見つめた。
(戦闘用がハーレムの副産物ってマジかよ……)
アクストリウスがそのハンサムな顔に、素晴らしい笑顔を浮かべている。
(この人変態だけど、凄い。凄いけど、変態だ。この人は、凄い変態だ!)
過去最強で過去最高に残念なイケメンを、俺は微妙な表情で見上げていた。




