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青剣

 ファンズのかざした手に、クルスとマリアの目が変わる。彼らは戦闘態勢に入った。二人とも優秀な戦士であり、突如として発生する殺意に対応し始める。

 クルスが白魔法で正面に強固な障壁を作る。マリアは二人を覆うように、球状の障壁を作り出す。


 アクストリウスもまた、その殺意に対応する。召喚したエメリアを抱きかかえ、魔手を召喚し、それに乗って後方へスライドしていく。そしてファンズに向かって叫んだ。

「おい、馬鹿、止めろ!こんなところで、そんな魔法を使うな!!!」

 彼はファンズが使おうとしている魔法を知っている。そして腕で目を隠しながら目を細めてそれを見つめる。


 爆裂


 コスト:

 寿命(5年くらい)


 効果:

 爆発を起こす

 

 字面では単純な魔法。だが、その規模は下位の魔法とは比べ物にならない。


 突如として巨大な爆発音が、舞踏会場の片隅で発生した。


 鳴り響く轟音。突如として発生した爆発で会場がパニックになった。男性の驚きの声と、女性の悲鳴が響き渡る。

 会場で一人暇そうにして椅子に座っていたダズも、この轟音に驚いて立ち上がった。

「一体、何が起きたんだ?」

 

 俺は我に返った。そして自分のやったことを思い出した。

(ヤバい……)

 キレて思わず爆裂魔法をぶっ放してしまった。土煙の巻き起こる中で俺は考える。

(考えなしにやっちまった。これは不味い。逃げなければ)

 そう思って駆けだそうとしたとの時だった。

 誰かが俺を抱擁するように後ろから抱きしめる。そして自分ごと拘束魔法を使って、俺を縛り付けた。俺は首を動かして、何とかして後ろを見る。どうやら赤髪の女のようだった。

「おいおい、まさかこんなことを仕出かしておいて、逃げるつもりか?」

 アクストリウスの声がする。俺はそちらに目を移した。アクストリウスは最早笑ってはいない。真剣な表情へと変わっていた。アクストリウスは目線を動かさず俺に言う。

「こうなっては君を逃がすわけにはいかない。エアリス、その人を絶対に逃がすなよ!」

 俺を抱きしめる腕の力が強くなった。恐らくこの女性がエアリスなのだろう。

 

 アクストリウスは漂う土煙の先を見つめる。その先には二つの影があった。クルスとマリア。白魔法の障壁は完全に砕け散ったが、彼らは何とか無事だったようだ。それを見て、アクストリウスはほっとした。アクストリウスは腰に手を当てて、それとない様子で二人に言う。

「いやー本当に無事で良かった、良かった。お互い幸運だったね!」

 場を和ませようとしているが、クルスとマリアの臨戦態勢は解けない。

「ふざけるな!どういうつもりだ!王国は帝国と戦争をするつもりか!?」

 クルスがアクストリウスに叫ぶ。アクストリウスは頭を搔きながら困った顔をした。

(これは不味い。非常に不味い……)


 もちろんアクストリウスにそんなつもりはない。彼はまるで狂人のように振舞っていたが、ギリギリの線は分かっていた。その駆け引きを楽しんでいただけで、その線を越えるつもりなどなかった。彼は変態かもしれないが、それでも王国の筆頭黒魔法使い。狂っている者に、そんな役割は務まらない。

 しかし彼は現状を客観的に見て、自分と関係ない状況には見えないだろうというのも分かっている。彼が弄んでいたエメリアにそっくりの恰好をした黒魔法使いが、帝国の騎士に向かって黒魔法をぶっ放したのだ。何を言っても言い訳にしか聞こえない状況であった。


 「いや、この人は我々とは無関係なんだ。たまたま出くわしただけで、本当に赤の他人なんだよ……」

 アクストリウスは一応弁解するが、クルスは剣を引かない。それどころかミリアもその剣を抜き始めた。

(参ったな、これは……)

 アクストリウスは本当に参っていた。

 

 クルスが一歩足を踏み出す。その時、その足元に針が飛んできた。マリアがその針を投げた主を探す。そこに空中を飛ぶ魔手に腰かけて、手にいくつもの針を握るエメリアの姿があった。

「ハイ、ストップ!それ以上進んだら、本当に戦争だからね!分かってる?分かって!本当に、お願い!」

 アクストリウスは目線を切らない。それでも本心から言った。だがクルスは激怒している。

「いきなり爆裂魔法をぶっ放して、その上エメリア様に襲わせて、いい加減にしろ!もう、許さん!」

 クルスが踏み込んだ足を更に踏み込む。それを見たマリアが、クルスを止める。

「それは駄目だ!クルス!」

 だがクルスは強化魔法で脚力を強化して加速する。一気に針で引かれた線を越えて、アクストリウスに突っ込んだ。間合いに入ると同時に、クルスは剣を振り下ろす。

(獲った!)

 クルスは内心で確信した。だがアクストリウスに変化はない。クルスは戸惑って、自分の剣を見つめる。しかし、剣が無い。正確には、途中から焼き切れていた。

 それがクルスの見た最後の光景となった。


「クルス……」

 マリアは目の前の光景を、絶望の眼差しで見つめている。クルスの身体を、青い光が貫いていた。クルスは絶命していた。

 

 俺は目の前の光景を見つめていた。

(青い光の剣?ランク7にはそんな魔法があるのか?)

 そしてその光の剣を見て、自分の見間違いに気がついた。

(アレは炎だ。青い炎だ。炎撃の炎がガスバーナーみたいに高温になって、赤じゃなくて青い炎になっているんだ……)

 黒魔法の練度。オルドの言っていたその言葉を象徴するような青い炎がそこにあった。


「もしかして最近の若いやつらは、僕の二つの名を知らないのかな?敵国のランク7の魔法使いの事くらい、ちゃんと調べておけよ!」

 そう言ってアクストリウスはクルスの屍をその場に下ろす。


 黒魔法使いはランク9から次元が変わり、ランク8から火力が変わる。そしてランク7からは二つ名で呼ばれて警戒される。

 王国の筆頭黒魔法使い、アクストリウス。ランク7。その二つ名は、

「青剣」

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