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黒魔法使いと白魔法使い-1

 二人組の男の方がアクストリウスを睨みつけながら叫ぶ。

「この邪悪な黒魔法使い達め!エメリア様の御遺体を返せ!」

 アクストリウスがやれやれといったポーズを取りながら、それに答える。

「返せと言われても、私は正当な手順で彼女の脊柱を手に入れたんだ。それを流したのは帝国の役人なんだから、私に文句を言われても困るね。それにこの国では黒魔法は合法だ。そういった物言いは辞めたまえ!ここは帝国ではないのだから」

 それを聞いて俺は納得した。帝国の冒険者ギルドでは黒魔法使いは出禁だったが、この国では宮中に黒魔法使いが居る。黒魔法と言っても、国によって扱いが違うらしい。

 男は歯を食いしばってこちらを睨んでいる。そんな男を女が窘める。

「やめなさい、クルス」

 クルスと呼ばれた男は、悔しそうな顔をしながら、呟くように言う。

「済まない。マリア」

 マリアと呼ばれた女は、アクストリウスに目を向けて、慇懃に言う。

「申し訳ございません、アクストリウス殿。確かにエメリア様の御遺体が流出したのは、こちらの手落ちです。ですが、どうか御返還頂けないでしょうか?彼女の御遺族も悲しんでおられます」

 そういうマリアを、アクストリウスは馬鹿にしたように見つめる。そして召喚したモリガンの腰を掴んで抱き寄せると、見せつけるようにべったりと自分にくっ付けながら言う。

「いや、それは中々難しい注文だな。御覧の通り、私はエメリアをとても気に入っている。朝も昼も夜も、寝室でも、いつも一緒なんだ。返せと言われて、返す気にはならないな」

 そう言うと、反応の無いモリガンの唇を、これまた見せつけるように奪う。それを見せられたマリアの目つきにも、流石に怒りが浮かんできた。クルスは完全にキレている。そんな二人を見て、アクストリウスは滅茶苦茶嬉しそうな顔をしていた。

(すげえ。こんなに性格の悪い人、初めて見た)

 過去最高に残念なイケメンを見て、俺はある意味で感心してしまった。


「死者を冒涜する邪悪な黒魔法使いどもめ!お前のような輩、成敗してくれる!」

 クルスが剣に手を掛けた。マリアはそれをなんとか手で制する。アクストリウスは引き続きモリガンを弄びながら、馬鹿にしたように言う。

「とはいっても、死体は死体だ。そのまま放置したら土に返って行く存在だ。そんな物を活用しても、別に誰も困らないじゃないか。彼女は死んでいるのだから困らない。死体を流した者は儲かる。私は楽しめる。Win-Win-Winじゃないか?」

 俺はどこかで聞いたようなセリフを、イケメンの爽やかな声でもう一度聞くことになった。

 マリアは肩を震わせて、怒り心頭だ。今度はマリアが罵倒し始めた。

「いい加減にしろ!お前たち黒魔法使いはいつもそうだ!他人の悲劇を気にせずに、自分の事しか考えない!」

 それを聞いて俺は今までやって来たことを思い浮かべる。

(まあ、そうかもしれない)

 俺は、目の前の二人を見つめる。そしてオズロ兄弟を思い出した。

(でもアイツらも、俺の悲劇には興味なさそうだったな……)

 

 アクストリウスは面倒くさそうに言い返す。

「別に私たちに限ったことでもないだろう。帝国だって散々悲劇を量産して来たんだ。君たち白魔法使いだって、少なからずそれに加担していたんだろ?私は別にそれについて何かを言うつもりはない。良くある話、というだけだ」

 そして、モリガンの顎を指でクイっと動かして、その顔を二人に見せつけて続ける。

「大体、エメリアだって黒魔法使いだ。裏社会ではモリガンという名前で高名だった魔女だぞ。今さら何を言っているんだ!」

 それを聞いた二人は、明らかに狼狽の様子を見せ始めた。とうとう剣を抜いたクルスが、叫び始めた。

「そんなわけあるか!あの方は個人で孤児院を運営していた、慈悲深い方なんだ。俺はその孤児院で育った。だからあの方に尽くすと誓ったんだ!あの方を、侮辱するな!」

 俺はモリガンが孤児院を運営していたことを知っている。そして、その目的も今なら何となく察しがついている。

(たぶん生贄にするためだったんだ。ランク8からは支配している組織から人を生贄にする必要があったから)

 俺はクルスとマリアを見つめる。

(何にも知らないんだな。コイツら……)

 俺は少しだけ、イラっとした。

 

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