娼館-2
話を、ダズがファンズに計画を打ち明けた時に巻き戻す……
「俺とお前で、高級娼館をやらないか?」
ダズが突然訳の分からないことを言い出した。
「ハァ!?」
何言ってるんだ、コイツ?という感情を隠さないままに、俺はダズを見つめる。そんな俺を見ながら、ダズは続ける。
「これは今思いついたことじゃねえ。ずっと前から、20年前にお前がやらかした頃から考えていた」
俺にはさっぱり分からない。
「どういうこと?」
疑問しか湧かない俺に、ダズはチッチという感じで続けていく。
「お前がモリガンを召喚して屋敷から出たという話が、俺にインスピレーションを与えたんだ。超絶美人だが、クッソ性格の悪いモリガンでも、召喚してしまえば従順だ。召喚と言えば戦闘用というイメージがあったが、これは目から鱗だった」
それを聞いて俺は思い出した。屋敷から脱出する時に、モリガンの脊柱を使ってモリガンを召喚し、護衛をだますのに使ったのだ。オルドもフレイヤを召喚していたので一般的な使い方だと思っていたのだが、そうでもなかったらしい。
ダズが得意げに続ける。
「残念ながらモリガンの遺体は当局に回収されてしまった。だが、美人の死体なんで墓に行けばいくらでも見つかる。それを使って美女ばっかりの娼館を作って一儲けする。帝都に居た頃、この手の仕事をしていた俺が言うんだから間違いない。これは絶対に儲かる!」
自信満々にまくし立てるダズへ、俺は冷たい目線を向けて言う。
「え、でもそれって、俺の目的に関係なくない?俺は別に儲かってもしょうがないし」
そんな俺を手で制しながら、ダズが答える。
「ノンノン、高級娼婦であれば、お偉いさんとコネクションが出来る。つまりこの国であれば、王都の王宮へ行くことが出来るかもしれないってことだ。王宮には有名な黒魔法使いが居る。これはお前さんの目的に合致するんじゃないか?」
以前モリガンが言っていた、王宮の黒魔法使いの事だろうか。確かランクは7。俺は少し興味が出て来た。
俺はその計画に乗ることとした。周辺の別の町の墓守を買収して、夜な夜な美人の墓を掘り起こす。そして脊柱を集めて、俺が召喚する。その中から更に美人を選んで、娼館で働かせる脊柱を吟味する。
「遺体だから、女は傷つかない。客は何をしてもいいから満足する。俺たちは儲かる。三方良しのWin-Win-Winだ!」
ダズが俺の召喚した女を見ながら、ノリノリで言っている。
俺は召喚魔法用の魔法陣を調整しながら、以前オルドが言っていたことを思い出した。
「魔法陣によって召喚対象の操作精度が全然変わってくる」
(まさか、こんな使い方でそれを実感するとは思わなかった……)
死ななくなってから性欲が無くなって久しい俺は、クッソ冷たい目線で魔法陣とダズを見ながら思った。
こんな感じで、野郎の、野郎による、野郎のための娼館運営が始まった。
俺は時々、転送魔法で魔の森のフレイヤの家に戻る。森から出る前に、フレイヤの家に転送用の魔法陣を残しておいたのだ。
戻る目的は娼館のワインに入れる麻薬を調達するため。召喚魔法の精度に少し不安があるので、客の判断を狂わせるために使っている。
(客を麻薬漬けにして、召喚した女に相手をさせる。なんかこの集落でやっていたことと、あんまり変わってないな……)
そんな事を考えながら、鞄に詰めた麻薬を持って帰るために、フレイヤの家の魔法陣に向かう。転送魔法を使う前に、魔法陣の近くに立てかけてあったフレイヤの杖が目に付いた。
(フレイヤも美人だった。娼館に持っていくか?)
そう思って、フレイヤの杖を手に取る。その時に脊柱の焦げ跡を目にした。そして、オルドの顔を思い出す。
俺は杖をそのままその部屋に置いた。
そして魔法陣で町に戻った。
こんな感じで、町の娼館運営が進んでいく。運営はとても順調だった。ダズの言う通り、とても儲かった。
客の相手をするのに召喚体を操作する俺の技量は、上達していった。魔法陣に書き込む操作命令の記述も、精巧になっていく。
操作精度だけでなく、トークも重要だった。この内容はダズが異様に詳しかった。
俺は娼館の隠された一室にある、彼女たちの脊柱を管理している部屋にいる。壁には脊柱が所狭しとならび、それらを判別するため描かれた似顔絵と、娼婦の源氏名の書かれた紙が貼ってある。
(映画で出て来るシリアルキラーの部屋みたいな光景だな……)
俺は何となくため息を付いた。




