娼館-1
二人の男が街道を歩いている。どうやら旅の商人のようだ。一人は恰幅が良く、もう一人は背の高い男だった。彼らは王都の一つ手前の町に到着すると、町はずれに向かって行った。
恰幅の良い男が歩きながら言う。
「確かこの辺りのはずなんだけどな……」
背の高い男が不安そうに相方を見下ろしながら言う。
「本当に、大丈夫なんだろうな……」
恰幅の良い男がそれに答える
「俺も聞いた話だからな。まあ、こういうのは一種の冒険だよ」
そう言いながら見つめた先に、蔦の絡まったやや古びた屋敷が見えた。
「あれだ。良し、行くぞ!」
そう言って恰幅の良い男が先導していく。背の高い男は不安そうな顔をしながら、それについて行った。
屋敷の呼び鈴を鳴らすと大柄な男がやって来た。白髪となった髪と髭は丁寧に整えられている。服は上等なスーツだ。
「お待ちしておりました。お二人様でいらっしゃいますね。それではこちらへどうぞ」
そ言うと、大男は屋敷の中へ二人を案内する。そして応接室へ通されると、二人ともそこにあったソファへ腰を下ろした。
大男は銀のトレイにワイングラスを乗せて、二人のソファの前にあるテーブルへと置く。そしてそこにワインを注ぐ。
二人ともワインで旅の疲れを癒しつつ、ソファでくつろぎ出した。
暫くして、大男が恰幅の良い男に耳打ちをする。そして大男に先導されて、応接室から出て行った。一人残された背の高い男は少し不安に思いながらも、残ったワイングラスを一気に空にする。
(なんかいい気分になって来たな……)
度の強いワインだったのか、少しだけ不安が紛らわされてきた。
大男が再び応接室に戻って来た。そしていい気分になってきている背の高い男に言う。
「準備ができましたので、私に付いて来て下さい」
背の高い男は大男に先導され、個室に案内された。
「それではごゆっくりと……」
そう言って大男はその場から立ち去る。背の高い男は個室の椅子に腰かけ、緊張した様子で縮こまっている。
暫くして、ゆっくりとドアの開く音がした。そして入ってきたのは……赤くて露出の多いドレスを身に纏った金髪碧眼の美女。
(うわぁ、思っていたよりも凄い美人が来た)
男は立ち上がり、必死で顔がにやけないように取り繕う。美女は少しだけ微笑みながら、飛び込むように男に抱きついて行った……
事が終わって、二人の男は満足した様子で屋敷を後にする。
「いやー情熱的だったな!時々止まったように動かない時があったけど、それが逆に良い!」
恰幅の良い男が満面の笑みで言った。
「こっちは大人しい人だったよ。時々ギクシャクしていたのが初々しくて良かったよ」
背の高い男もあの時を思い出しながら満足そうに言った。
二人は王都への帰路へ着く。きっと今日の話を仲間に自慢するのだろう……
そして誰も居なくなった屋敷では……
「おい、ファンズ!途中で動きが止まってるぞ!もう少し、しっかりやれ!」
小奇麗な恰好をしていたダズが、俺に駄目出しをして来た。
「いや、二人同時の操作って難しいんだよ!一人でも大変なのにさ……」
俺は疲れ切った顔をしながら、ダズに抗議する。
「馬鹿野郎!今日の客はまだ素人だったから良かったけどな!お偉いさんを相手にするなら、もっとマニアックな要求が来るんだ!」
ダズが両手を握りながら力説する。俺は魔法陣の召喚用の術式を見直しながら言う。
「ああゆうのって意外と動かし方がテクニカルで、全部自動で出来ないんだよな。二人同時をマニュアルで動かすのはキツイし……」
そしてダズを見上げて訴える。
「一体ぐらいダズが動かしてよ。俺の悪魔を貸すから、ダズが契約すればいいじゃんか」
ダズは腕を組みながら、嫌そうな顔をして答える。
「ふざけんな!20年も駄目にしたのに、これ以上時間を無駄に出来るか!」
俺はため息を付きながら、召喚用の魔法陣を修正し始めた。
そう。俺たちは召喚魔法を使って、娼館運営を開始したのだ。




