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再会-2

 ひとしきり泣き終わったダズが、床に座って語り始めた。俺も胡坐をかいて、それを黙って聞く。


「お前がモリガンを殺して闇ギルドを裏切ってから、俺たちの拠点は大騒ぎだった。何と言ってもリーダーが殺されたんだ。お前を殺さないと示しがつかない」

 そう言って、ダズは近くにあったボロ布の袋を漁りだすと、何か方位磁石のようなものを取り出した。

「これは、お前に反応する探知魔道具だ。雑魚寝部屋でお前が寝ていたハンモックから、お前の髪の毛を集めてルイスが拵えた。これでお前を見つけて、サクッと殺す。簡単な仕事のはずだった」

 その方位磁石のようなものの針は、俺を強く指し示している。

(関所にダズが居たのは、これで追ってきたからだったのか)

 俺は20年前に関所でダズを見たことを思い出した。ダズが探知魔道具を置いて、続ける。

「そしたらお前、魔の森の中に行っちまいやがった。こうなると面倒だ。入ったら出てこれない森。そんなところまで追う訳にはいかない。だからお前がくたばって探知魔道具の反応が無くなるのを待つつもりだった……ところがだ」

 そう言って、ダズは俺を指さして言う。

「お前は全然くたばらなねえ!探知魔道具はお前を刺したままだ!生きているけど、追いに行けない。それが20年、20年だ!!!」

 そして、再びダズの目に涙が浮かび始めた。

「ドナルド……お前、俺の20年を、返してくれ……」

 ダズはまた泣き始めた。


 俺はガン泣きするダズを見つめる。そして闇ギルドに居た頃のことを思い出した。

「ガロはどうしたの?」

 俺はダズの舎弟だった犬の獣人を思い出した。「兄貴」と呼んでダズを慕っていたはずだ。だが、その名前を聞いたダズはびくっとして、嫌そうな顔をして俺の方を向いた。

「アイツは、今は拠点のリーダーだ。俺がお前を追い続けている間に、俺よりも出世しやがった」

 あまりにもやるせない話に、俺は流石に同情した。

「お前を闇ギルドに誘った俺は、その責任を取るためにお前を追わなきゃいけない。俺は帰れなかった。全部、全部、お前なんかに関わったからだ。全部、お前のせいだ!」

 ダズは怒りとか悲しみとか、色々な負の感情が混じった顔で俺を見つめて言った。

 

「で、どうするの?俺のことを殺すの?」

 我ながら何を言っているんだ?と言う気がする質問を、俺はぐしゃぐしゃの顔をしているダズにぶつける。ダズは感情の消えた表情で俺を見つめて言う。

「……そうだな。正直、もう、どうでも良くなっちまった。今さら殺してもなあ……」

 ダズは本気で悩んでいるようだった。

「昔、母なる冥府の女王に誓う、とか言っていたけど、それはもういいの?」

 ダズが俺を闇ギルドへ勧誘する時に、ダズが言っていたことを思い出した。確か闇ギルドの神とかだったはずだ。その名前を聞いたダズが、心底嫌そうな顔をした。

「もうどうでもいい!俺を助けてくれない神なんて、神じゃねえ!ふざけんな!そんなモン、クソくらえだ!」

 ダズは吐き捨てるように神を罵倒した。


 俺はひねくれて、摩耗しきったダズを見つめた。そして魔の森の集落に居た住民を思い出した。俺が生贄にした、麻薬漬けになって朽ちていくだけの人たち。

(あの住民入りの一歩手前だな。こりゃ……)

 俺は立ち上がった。もうほっておいても良さそうだからだ。殺すのは流石に可哀そうなので止めることにした。

「おいおい、ちょっと待てよ!」

 立ち去ろうとする俺を、ダズが呼び止めた。

「なに?どうでもいいんでしょ?俺もどうでもいいから、もういいじゃん」

 そう言いながら、俺はダズを見下ろす。ダズも立ち上がった。ダズは必至の形相で俺に食って掛かる。

「いや!お前には責任がある。俺の20年を奪った責任がある。お前は俺に協力すべきだ!」

 ダズが面倒なことを言い始めた。俺は露骨に顔をしかめて、ダズに言う。

「協力って、何だよ?俺はやることがあるんだけど」

 その俺に、ダズがせせら笑いをしながら、縋るような表情をして言う。

「お前の目的は黒魔法だろ?俺の計画に乗れば、それに近づけるぞ!」

 それを聞いた俺は、ダズを見つめる。そして言う。

「どういうこと?」

 興味を持った俺に、ダズがニヤニヤしながら、その計画を語り始めた。


「ふーん」

 俺はそれとなく呟く。ダズの申し出は物凄く予想外の物だった。俺はダズを見上げる。

「どうだ?お前にとっても悪くないんじゃないか?」

 ダズはそう言いながら、卑しい顔をしながら俺を見下ろす。俺よりも大きいのに、どこか小さく見える。そんなダズを見ながら、俺は考える。

(このまま空手で王宮に行くよりも、ダズの計画に乗ってみるものアリかもしれない……)

「分かった。協力するよ」

 俺は言った。それを聞いたダズは、大喜びで言う。

「流石はドナルドだ!話が分かる。だったら善は急げだ!明日から行動開始しよう!」

 突如として生き生きとし始めたダズを見て、俺は内心で呟く。

(善、ではないような気がするけど……生きがいとは、かくも人を変える物か……)

 俺はアルガスのところから逃げ出した時の、自分のことを思い出した。

 俺はやる気なったダズに言う。

「とりあえず、ドナルド呼びは止めてくれない?手配されているかもしれないし……」

 ダズはそれを聞いて答える。

「だったら、何て呼べばいい?」

 俺は少し考えた。そしてダズの計画を聞いて、思いついた名前を言う。

「ファンズ」

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