再会-1
俺は森を歩き続けた。今回は磁石と地図を持ってきたので、来た時ほど無計画ではない。
時折魔物が出て来る。キマイラにも何度か遭遇したが、どれも蹴散らした。
時々寿命を回復するために、適当に頭をぶち抜いてリセットする。
そして歩き続ける。
そして、一週間ほど歩き通して、ようやく森を抜けた。
俺は目の前の草原と、そこを横断する石造りの街道を見つめる。
「すごい、久しぶりだな……」
俺は誰ともなく、呟いた。
街道には、それほど人はいない。俺は王都に向かう方向へ歩みを進め始める。
(とりあえず王都に行って、黒魔法の情報でも集めるか……)
例によって何か計画があるわけでもない。とはいえ何かをしないことには始まらない。
暫くの間、道なりに歩いて行く。時々馬車が追い抜いて行き、以前のように御者が「乗らないか?」と提案してくる。
俺は丁寧に断る。街道沿いの魔物くらいなら、もう何とでもなるからだ。
俺は歩き続ける。
朝も、昼も、夜も……
時々、適当に腰を下ろして休憩する。
今は夜だ。俺は夜空を見上げる。元の世界と違って、くっきりとした星空が広がっていた。
「やっぱり、元の世界とは星座とかは違うのかな?」
星座なんか詳しくないので、その辺は良く分からない。それでも俺は、星空を何となく見上げていた。
歩き続けたら、街道の途中で町を見つけた。別に素通りしても構わないのだが、この町を抜けると次は王都のはずだった。
服は着っぱなしなので、一度くらい洗濯しておきたい。それに、王都へ入る前に多少は情報収集なんかもしておきたかった。
俺がドナルドだったころの顔がまだ手配中かもしれない。あれからどれぐらい経ったのかも、良く分かっていない。
(王都へ行く前に、一度変身しておきたい)
俺は周りを見渡す。森を抜けてから草原ばかりだったので、遮蔽物になりそうなものが何も無かった。
「町で廃屋でも探してみるか……」
見た感じは城壁などもない、簡素な町だ。衛兵などが見張っているわけでもない。
(王都が近いから、治安が良いのかな?)
そんなことを思いながら、俺は町に入って行った。
既に夕方となり、夜が近づいている。俺は街の外れの方で、人気のない廃屋を見つけた。
「もしもーし、誰かいませんかー?」
俺は人気が無いことを確認すると、人目から隠されていそうな部屋へ向かう。そして歪んだ壁で外れたドアの隙間から、部屋の中に入って行った。
「ここでいいかな?」
そう呟いて荷物を置いた、その瞬間だった。
「おい!誰だ!ここは俺の部屋だ!」
部屋の片隅から声が聞こえた。
(先客が居たのか……)
完全に背景と同化していたので気がつかなかった。
「すみません。気がつきませんでした。お邪魔しました」
揉め事を起こす気は無かったので、さっさと退散しようとした、その時だった。
「おい、お前。ちょっと待て!」
そう言って男は体を起こす。そして立ち上がった。俺はその男を見つめる。髪も髭も白くなっているが、体格が良く、普通の人よりも頭一つ大きい男だった。その男は、俺を見つめながら続けて言う。
「お前、ひょっとして、ドナルドか!?」
指名手配中の俺の名前が出されて、俺は警戒した。そしてその男を見つめながら、記憶を探る。
(どこかで見たような気がする……)
そして思い出した。
「ひょっとして、ダズ!?」
ダズは俺を見つめる。俺はダズを見つめる。
(不味いな……ここで見つかるとは)
俺はダズに手をかざそうとする。「殺るなら殺らないと、落とし前がつかない」と言っていた男だ。先に殺った方が良いだろう。
そう思っていた矢先だった。
「お前……お前……」
ダズが声を震わせて呟く。
そして、大声で泣き始めた。
俺はあっけに取られた。まさか大の大人がガン泣きするとは思わなかったのだ。しかも、俺を狙っているはずの男だ。
「え、なんで泣いているの?」
あまりの疑問に、俺はさっきまでやろうとしていたことを完全に忘れた。
ダズは泣きじゃくりながら、俺に答える。
「お前よう……20年だぞ、20年……。今さら……今さら……なんで……」
そう言って、更に泣き始めた。
「え!?そんなに経ったの?」
思った以上に経過していた時間に、俺は驚いた。そしてダズをもう一度見つめる。
(年取ったな……ダズ……)
俺は何となく、抜け羽根を気にしていたグリフを思い出した。




