選択-4
集落を、フレイヤがいつものように歩いて行く。
いつものように集落の住民はフレイヤの元に集まり、好き勝手に喋って行く。
フレイヤは祭壇に向かう。そしていつものように薬草を炊いた部屋で、経典を暗唱していく。
いつものように集落の住民は部屋で正座して、大人しくそれを聞いていく。
いつもの光景。いつもの儀式。朽ちゆく人たちの、朽ちぬ儀式。
誰も疑っていない。いつもと同じ儀式。
儀式を終え、部屋から住民が出て行く。部屋の換気をして、フレイヤが別の部屋に移動していく。
部屋の鍵を閉めると、フレイヤの顔が変わって行く。
俺は変化を解いた。
俺は胸の詰め物を取り出して、フレイヤの服を脱ぐ。俺とフレイヤの身長は同じくらいだった。服を多少調整する必要はあったが、線の細い俺は何とか着ることが出来た。フレイヤはスレンダーだったので、誤魔化し切れるか不安だった。だが、麻薬漬けの住民からは疑われなかったようだ。
長年フレイヤを召喚してきた俺は、フレイヤの顔は嫌と言うほど見続けた。その声も口調も、暗唱する経典の内容も、散々頭に刻まれた。
俺は完全にフレイヤへ成り代わることに成功したのだ。
(もう、これくらいでいいだろう……)
そして俺は換気を終えた部屋に戻ると、再び部屋を閉め切って、ドアに鍵を掛ける。そして魔法陣を描く。
悪魔召喚のための魔法陣を……
俺は魔法陣に手をかざし、悪魔召喚の魔法を使った。魔法陣からはいつものように、銀のテーブルと椅子。そしてフレイヤの顔をした悪魔が出て来た。
俺は悪魔に言う。
「新規契約をしたい。ランク8だ!」
悪魔は静かに俺を見つめる。そして答える。
「いいわよ。条件のことは分かっているわよね」
俺は悪魔の顔を見つめて言う。
「ああ、集落の住民を生贄にする。これで足りるか?」
具体的に何人必要なのかは分からない。流行り病で数が減っているので、そこが少しだけ不安だった。
悪魔が考えるように天井を仰ぐ。そして言う。
「いいわよ。集落に属するモノ、その全ての命と引き換えであれば、大丈夫」
「だったらそれでいい」
俺は了解の回答をする。悪魔が俺を見つめて、再度確認する。
「本当に良いのね?」
俺は答える。
「それで構わない」
契約が成立した。俺の頭にランク8の黒魔法が刻まれた。




