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選択-3

「ランク8からの契約条件は、自分の支配する組織の住民の命」

 それを聞いて俺は疑問に思った。それを目の前のオルドに伝える。

「それが条件なら、なんでオルドは契約しなかったの?」

 オルドは集落を支配していると言ってもいい。やろうと思ったらできたはずだ。

 オルドは、俺から目を逸らした。そんな俺たちを見て、悪魔は残酷そうに笑う。

「ねえねえ、いいお話をしてあげる!」

 そう言うと、悪魔は勝手に語り始めた。


 昔々、あるところに、とても大きな蛇が住んでおりました。大蛇はとても残酷で、残忍でした。

 ある日、大蛇は悪魔と契約することにしました。しかし、大蛇は悪魔の差し出した条件を満たすことが出来ません。

 そこで大蛇は、条件を満たすために、ある鳥に近づきました。それはとても美しい山鳥でした。

 山鳥の元には、たくさんの雛が居ました。大蛇はその雛を狙ったのです。

 大蛇は雛を手に入れるため、山鳥に協力するフリをしました。

 最初は山鳥も警戒していましたが、時間が経つにつれ、大蛇を信用していきました。

 大蛇は、ぶっきらぼうではありましたが、とても山鳥に協力的だったからです。

 ある時、山鳥の巣を、大蛇よりももっと巨大な蛇が襲いました。

 大蛇と山鳥は協力して、その巨大な蛇を追い払いました。

 しかしその時、大蛇のせいで山鳥は命を落としてしまいます。

 こうなっては山鳥の雛を守る者はいません。

 大蛇にとって、これはチャンスでした。

 でも、何を思ったのか、大蛇は雛を守るようになりました。

 なぜなら、大蛇は……


「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 悪魔の話を、オルドの叫びが遮った。そして大剣を掴むと、思いっきり悪魔にぶん投げる。

 大剣は回転しながら悪魔の方に向かって行く。だが、悪魔がその剣を指さすと、その剣は空中で突然停止した。

 悪魔がお茶を飲みながら、フレイヤの顔で言う。

「やあねえ。貴方が全然自分の事を話さないから、私が替わりにお話しをしてあげてるんじゃないの。人の親切を無下にしないでよ」

 そして悪魔は、そのフレイヤの顔をオルド向けて、笑った。

 とても、残酷そうに……


 オルドが何も言わずに悪魔を返還した。そして、俺を見て言う。

「お前は、集落のヤツらを見て、どう思う?」

 俺はフレイヤに集まってくる集落の住民たちを思い出した。

 フレイヤが召喚されたモノだと気づかず、麻薬漬けになり、祭壇での訳の分からない儀式に何も疑問を持たず、ただ朽ちていく人たち……

「凄く、どうでもいい」

 俺は思ったことをそのまま言った。俺にとって彼らはどうでもいいし、彼らにとって俺もどうでもいい。どうでもいい関係だった。

 オルドは、そんな俺を目を細めて見つめる。

「だよなあ……俺も心底、そう思う」

 オルドは、しみじみと言った。


 オルドはゴホゴホと咳をしながら、悪魔に投げた大剣を拾いに歩く。そして大剣を拾うと、ミストの方を向いて言う。

「これで俺の悪魔の譲渡は終わった。ミスト、お前は自由だ。お前に試験を与えたが、どうするかはお前の勝手だ」

 そしてオルドは大剣を掴むと、自分の頭上に放り投げた。

 オルドはミストを見つめる。そして、ミストがオルドの顔に変化していた時の光景を思い出す。


 あの顔は、やけに俺に似ていやがった。ミストのやつは、俺のことをずっと見ていやがった。


 オルドはその太い首を差し出す。


 フレイヤは俺を見なかった。俺はミストを見なかった。

 俺はフレイヤを見ていた。ミストは俺を見ていた。

 ままならんもんだな……


 回転した大剣が、重力に従い落下していく。まるで、断頭台のように。



 俺の目の前で、オルドの首が落ちた。

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