師弟-2
オルドの大剣に真っ二つにされて、俺は死んだ。
オルドの魔手に目を潰された上に頭を揺さぶられ、俺は死んだ。
オルドの獄炎に焼かれて、俺は死んだ。
etc
俺は負けまくって、死にまくった。
「ミスト、お前はもう少し考えろ!お前が俺と同じことをして、勝てるわけねーだろーが!」
生き返って寝転がっている俺を、オルドが呆れたように見下ろしながら言った。俺は身体を起こしながら、負けた回数兼死んだ回数を思い出す。かれこれ50回くらい死んだ気がする。
オルドが説教を続ける。
「お前の長所は死んでも大丈夫なところだ。変に小細工を考えるよりも、惜しみなく寿命を突っ込んだ方が良い」
それを聞いた俺は、反論をする。
「そうは言っても、デカい一撃を狙うと、オルドに詰められて終わりじゃん」
オルドが答える。
「そりゃ当然だ。デカい一撃は隙もデカい。やられる前にやるのが一番だ。まあその辺も含めて、色々と考えろや」
そう言って、オルドは剣を背負いながら言う。
「これでまた俺の勝利。お前の命ストックはプラス1だな」
俺は悔しさで頭を抱えた。
(チクショー!!!)
こんな感じで、俺は時々オルドに決闘を挑み、やられている。連日挑むのは流石にオルドも嫌がるので、大体一週間に1回くらいだ。
オルドの持っている俺の残機、もとい命ストックはどんどん積みあがっている。たまに生命吸収魔法での寿命補充に使われたりする。
そして今日は、オルドの魔法契約の更新のために使われることとなった。
オルドがフレイヤの家の奥で、悪魔召喚の魔法陣を描いている。魔法陣を描いているオルドの後ろから、俺が質問をする。
「オルドの悪魔って、ランクいくつまで契約できるの?」
俺の悪魔はモリガンから手に入れたモノなので、ランク9が最高位のはずだった。
「8だ」
オルドは振り向かずに答える。オルドはランク8の意思疎通魔法が使えるので、オルドはランク8のようだ。
魔法陣を描き終わったオルドが、魔法陣に向かって悪魔召喚の魔法を使う。魔法陣の真ん中から、何か色々なものが生えて来た。
銀のテーブル。テーブルにはティーセットが置かれている。銀の椅子。その椅子に女性型の悪魔が優雅に足を組んで座っている。その悪魔の顔には見覚えがあった。
「フレイヤじゃん!え?フレイヤって白魔法使いなんだよね?でもフレイヤって悪魔なの?」
椅子に座っているフレイヤは、俺の反応を見て、物凄く嬉しそうな顔をしている。オルドは滅茶苦茶嫌そうな顔をして、吐き捨てるように言う。
「そんなわけねーだろ。そいつは滅茶苦茶嫌な性格をした悪魔でな。嫌がらせみたいなもんだ」
フレイヤ、もとい悪魔が、悲しそうな顔をして抗議する。
「酷いことを言うわね。貴方のためになると思って、こうしているのに……。本当に、酷い……」
オルドはガン無視して話を進める。
「契約更新だ。さっさとしてくれ」
悪魔はティーカップから紅茶らしきものを飲みながら、優雅に答える。
「連れないわね。一年に一回しかない再開なんだから、もっと交流を深めましょうよ。その子は何なの?貴方の弟子?」
オルドは不貞腐れた顔で答える。
「弟子、兼、生贄だ」
それを聞いた悪魔が、涙を流しながら訴える。
「そんな、なんて酷いことを。貴方って人は、本当に人のことを何だと思っているの?どんな人であっても、かけがえないと言うのに……」
オルドはうんざりしたような顔で答える。
「うるさい!弟子の物は師匠の物。師匠の物は師匠の物だ。いい加減、さっさと手続きを進めろ!」
それを聞いて、俺はオルドを見上げた。まさかジャイアニズムが異世界共通だとは思わなかった。
悪魔は涙を拭きながら、俺を見つめて言う。
「あら?貴方は噂になっている例の子ね。本当に災難ね。可哀そうに」
それを聞いて、俺はモリガンの悪魔と契約した時のことを思い出した。あの時も、初対面の悪魔は俺のことを知っているようだった。やはり、何か横のつながりがあるようだ。
オルドはイライラしながら足先で床を叩く。悪魔は涙を拭くと、突如としてけろっとした表情に変わった。そして俺を見つめて言う。
「じゃあ、そう言うことで。またね!」
俺は急激に老化していった。俺は死んだ。
生き返った俺は。起き上がって魔法陣を見つめる。オルドが俺を見ずに一言いう。
「滅茶苦茶性格悪いだろ」
「そうだね」
俺は同意した。
こんな感じで、俺は決闘と修行と生贄の日々を過ごしていった。




