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魔剣士オルド-2

 後ろからのそのそと出て来たグリフは、目の前のオルドと呼んだ大男に頭を垂れた。

(グリフの野郎……しれっと戻ってきやがった……)

 俺は横目でグリフを睨みつける。オルドは絶叫しているキマイラに近づいて行くと、その手をかざした。キマイラの獅子のたてがみが抜けていく。急速に老化していっているようだ。暫くすると、キマイラは動かなくなった。

(あの魔法は、モリガンが俺に使ったのと同じ魔法か?)

 俺はモリガンとの戦いの時を思い出す。あの時はモリガンのキマイラに抑え込まれた状態で、モリガンにあの魔法を喰らったのだ。

 オルドはキマイラが動かなくなったのを確認すると、蛇をぶった切った両刃の剣を拾いに行った。剣を肩に担ぐと、オルドは俺の居る方向に戻ってくる。

 そして腰を抜かしている俺に近づくと、思いっきり俺を蹴っ飛ばした。


「うごぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 デカい足で蹴っ飛ばされた俺は、九の字に折れ曲がって息が止まった。オルドを俺を見下ろしながら言う。

「こんな枯れてる森の中で、考えなしに炎を使ってんじゃねーよ!あぶねーだろーが!」

 そう言ってから、オルドは先ほどのキマイラとの戦いで使っていた空を飛ぶ手である魔手を使って、炎上している木々を引っ張ってきて積み上げた。

 オルドは近くの大石に腰を下ろすと、近くに大剣を置いた。そして、うずくまっている俺を見つめる。

「で、何なんだ?オメーは?」

 そう言われても、息も絶え絶えで俺は喋れない。グリフが近づいてくると、替わりにと言わんばかりに説明を始めた。

「ミストという名前らしいです」

 それを聞いたオルドが興味深そうな表情を浮かべる。オルドがグリフに尋ねる。

「という事は、コイツはお前と話せるのか?」

 その問いかけに、グリフは肯定の頷きで返す。オルドが俺を見ながら、勝手に話し始めた。

「意思疎通の魔法にはあまり知られていない特性があってな。それを掛けられた者同士に限っては、魔物と人間であっても会話が出来るようになる」

 そう言って、オルドはグリフを見つめて言う。

「俺はグリフに意思疎通魔法を掛けた。俺は自分にも掛けている。だから喋れる」

 オルドは俺に目線を戻して、続ける。

「そのグリフと喋れるオメーには意思疎通魔法が掛かっているという事だな?先ほどオメーが使っていた魔法は獄炎だった。意思疎通のランク8で獄炎は11。8って感じはしないから、たまたま意思疎通を覚えた、10か11くらいか?」

 俺は息を整えてオルドを見上げる。オルドの推理で大体は合っている。

「にしても、随分とポンコツだな。そのランクでキマイラと戦うのがキツイのは確かだが、それでも程度ってモンがあるだろう?」

 オルドは俺を馬鹿にしたように言う。グリフは肯定の頷きをする。俺は馬鹿にされっぱなしだが、実際その通りという自覚しかないので、何も言い返せない。

 何も言わない俺を見て、オルドが言う。

「で、そんなオメーがなんで魔の森に居るのか?なんかをやらかしたお尋ね者だからだな。何をやったんだ、オメーは?」

 ようやく息が整った俺は胡坐をかいて地面に座る。そして大石の上に座っているオルドを見上げる。

(どの程度話せばいいのだろうか?)

 オルドを信用できるかと言うと、まだ怪しい。とは言え、何かを話さないと駄目そうな流れだ。俺は、俺が死なないことを隠しながら、俺がやらかしたことを説明することにした。


 俺の話を聞いたオルドは、驚いたよう顔をして俺を見つめた。

「つまり、何だ。オメーは闇ギルドと帝都の貴族に喧嘩を売って、ここへ逃げて来たのか?頭おかしいんじゃないか?」

 オルドに要約されて、俺も気がついた。よく考えたら、とんでもないことをしてしまった。

(俺って、本当に計画性が無いよな……)

 そんなことを考えつつ、俺にも疑問が湧いて来た。俺はオルドを見て聞く。

「俺からも疑問なんですが、オルドさんは何でこんなところに居るんですか?」

 なにせキマイラの住んでいる森の中で、グリフォンという魔物を従えているのだ。どう考えてもまっとうとは思えない。

 俺の疑問に、オルドが面倒くさそうに一言だけ答える。

「趣味だ」

 散々俺には喋らせておいて、自分が話す気は無いらしい。俺は嫌な顔をしてオルドを見つめる。そんな俺の顔を見て、オルドがイラっとした表情をして言う。

「なんだ?文句でもあんのか、テメー!?」

 俺はその顔のまま答える。

「別に無いですよ。狼男だったら森に住んでいてもおかしくないし」

 それを聞いたオルドが立ち上げって、座っている俺の顔を足の裏で蹴っ飛ばした。

「誰が狼男だ!」

 俺は起き上がって、思わず返事をする。

「え!?違うんですが?てっきりそうだと……」

 オルドはもう何も言わずに、もう一度俺を蹴っ飛ばした。


 夜が明けて来た。オルドが石から立ち上がる。枯れ木もちょうど燃え尽きて、火が消えていた。

 オルドは魔手を使って燃えがらに土を掛けながら、俺に言う。

 「で、オメーは特に用事なんかは無いんだな?」

 俺はオルドを見て考えた。オルドに魔法を学ぼうを思っていたけど、なんか嫌な気分になってきたのだ。

(まあ、いいか。別の人でも探そうかな)

 俺はオルドに答える。

「そうですね。とりあえず森を抜けてから考えます」

 そう言ってその場を去ろうとした俺を、オルドが呼び止めた。

「おい、ちょっと待て」

 そう言うと、オルドは地面に置いてあった大剣を掴んで持ち上げた。そしてそれを地面に突き刺すように置いてから、俺に言う。

「この剣を持ってみろ」

 俺は不思議に思いつつ、その剣を掴んでみた。オルドが手を放すと、その重さが思いっきり俺に掛かってきた。

「え、なにこれ。すげー重い」

 よくこんな剣を振り回せるな、などと俺が思っていると、オルドが俺に手をかざしてきた。そして拘束魔法で大剣に俺を縛り付けた。

「ちょ!え!何するんだよ!?」

 叫んでいる俺に構わず、オルドがグリフを呼んだ。

「おい、グリフ。コイツを背負っていけ。集落まで戻るぞ」

 グリフが了解して、俺を背負い始めた。俺は抗議を口にする。

「ちょっと待てよ!何なんだよ!どいうつもりだよ!」

 オルドがそれに答える。

「ちょうど人手が足りなくてな。ポンコツでも黒魔法使いならちょうどいい。オメーは俺が、持って帰る」

 あまりの傍若無人に、俺は抗議を続けたが、オルドはどこ吹く風のようだ。

 こうして俺は、オルドに拉致されることとなった。

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