選択の結果-1
俺の頭にランク10の魔法が刻まれた。ランク11の魔法も刻まれている。ランクによる魔法習得は、どうやら上位互換の関係にあるようだ。俺は契約の終わった悪魔を見つめる。
「さて、これで私の仕事は終わりです。それでは今後ともよろしくお願いします」
そう言って丁寧に45度の角度でお辞儀をする。そして去り際に言う。
「実は、貴方のことは我々の間でも噂になっているのですよ。我々は、これからの貴方の活躍をとても楽しみにしています。では!アディオス!」
悪魔が消え去った。
「え!?悪魔ってそんな横のつながりがあるの?」
俺は一人で呟いた。別に回答は求めていない。ひどく疲れたので、そんなことを頭の中で自問自答するのもダルかっただけだ。
俺は気絶しているミリアを見つめる。そしてここから脱出する方法を考え始めた。
元来た道をミリアを連れて戻るのは不味い。ルイスが居るし、ダズとガロが戻っている可能性がある。かと言って屋敷を抜けられるか分からない。貴族であるモリガンの衛兵が居るかもしれない。
俺は考えて、何をするかを決めた……。
俺は屋敷の正面から、ミリアを背負って堂々と歩いて行く。歩いている俺を屋敷の衛兵が止める。
「おい!お前は何者だ?なんで屋敷から出て来た。誰か、コイツを知っている者はいないか?」
俺の後ろから、その言葉に反応した女性の声がする。
「その人は私の客人よ。そのまま、帰してあげて頂戴」
そこには、胸ほどの長さのプラチナブロンドの髪に、大きな灰色の瞳。鼻筋の通った高い鼻を持つ美女が居た。
衛兵は、その声の主に敬礼をして言う。
「そうでしたか!それは失礼いたしました、エメリア様。なるほど、彼らは孤児院の関係者なのですね!」
俺は頭を衛兵にを下げて、屋敷を正面から出て行く。
俺は残された魔法陣を使って、モリガンを召喚した。触媒には、生物の脊柱を使えばいい。俺は、モリガンの遺体から、モリガンの短剣を使って、脊柱を取り出した。短剣だけでは大変だったが、やり方は知っていた。オズロ兄弟が、俺の身体を使って、何度も練習していたからだ。
(貴族のモリガンはエメリアって名前だったのか。そう言えばダズも「慈善事業」をしているとか言っていたな……)
オズロ兄弟と同じく、モリガンにも二面性があったらしい。俺の殺したモリガンのことを、人として扱う者もきっと居るのだろう。
俺も、オズロ兄弟も、モリガンも、あまり変わらないのかもしれない……。
そんなことを考えながら、俺は屋敷から離れて行った。
冒険者ギルドの裏口に着くと、俺はミリアを下ろしてその場から離れた。
モリガンを殺した俺には、闇ギルドから追手が掛かるはずだ。ダズに言わせれば、「殺られたなら殺らないと、落とし前がつかない」ってヤツだ。俺は誰も居ないところに行くと、その辺りに落ちていた石を拾って、自分の口に咥える。そして、新しく覚えた加速魔法を使って、自分の脳天を吹っ飛ばした。俺は死んだ。
生き返った俺は、この世界に来た時の、大学生の年齢に戻った。屋敷から出た俺は、モリガンに拘束魔法を使って老化していたし、ダズとガロに会った時も、オズロ兄弟を拘束した対価で歳を取っていた。若い姿であれば、多少は撒けるはずだ。俺はこの帝都から逃げることにする。隣の国まで逃げられれば、何とかなるはずだ。
俺は、ひっそりと帝都から立ち去った。
闇ギルドの拠点リーダーであり、貴族でもあったモリガンの死は、大きな波紋を生んだ。
闇ギルドと冒険者ギルドの戦争は立ち消えになった。それどころではなったからだ。
闇ギルドからは当然ドナルドに対しての追手が掛かる。闇ギルドでは普段は功を取り合ってあまり連携をしないが、裏切り者の情報の共有は別だ。ドナルドの人相と特徴は、全ての闇ギルドの拠点で共有された。もはやドナルドが闇ギルドに接近することは不可能だろう。
そしてモリガンは、表向きはエメリアと言う高名な貴族であった。その彼女に対する酷い死体の扱いと、それを利用した侮辱行為に、帝都の支配者たちも激怒した。ドナルドの手配書が配られ、指名手配される。
ドナルドは、表の社会からも、裏の社会からも狙われることとなった。
ミリアは、その後で無事にエミリの元に保護された。死んだと思われたミリアの生存は、エミリを始めとした冒険者ギルドのメンバーを喜ばせた。ミリアは、闇ギルドの者に攫われたことを語ったが、自分が助かった時の話は覚えていないようだった。
実は、これは嘘だった。彼女は、ドナルドとモリガンのやり取りの時から、気絶したフリをしていたので、その全容を知っていた。だが、話さなかった。ドナルドがモリガンに殺されたことも、蘇って奇襲したことも、全部知っていたが、話さなかった。ドナルドは、とても残忍な行為をしたし、全ての組織から狙われる裏切り者ではあるが、少なくとも彼女の命を救ったのは確かだったからだ。
だから、彼女は話さなかった。死ぬまで、話さなかった。彼女からは、ドナルドが死なないということは、最後まで語られなかった。
一旦はここまでになります。反響があれば、また続きを書くかも。
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