潜入任務-2
俺はその後も、度々エミリへ会いに行った。俺は闇ギルドの任務として会いに行っているはずなのだが、単純にエミリに会いたくて行っている面もあった。この世界に来てから、まともに話せる人が全然いなかったから、どこか他人に飢えていたのだ。何も知らないエミリは、そんな俺を歓迎してくれた。
「ドナルドは何をしに帝都へ来たの?」
打ち解けて来たエミリが、俺に尋ねる。
「探し物のために来たんだ。物は見つかったんだけど、手に入れるまでに少し時間が掛かりそうで。それまで帝都に滞在しようと思ってる」
俺は予め準備しておいた、適当な言い訳を言った。エミリはそこにはあまり突っ込まない。何かを隠していそうなことには気がついていそうだが、職業柄、無理に探ることはしないようにしているのだろう。
「それじゃあ、あんまり長居はしないんだね。ちょっと残念」
エミリは本当に残念そうに俺に言う。俺は、少し照れた。
俺とエミリは色々な話をした。と、言っても俺から出来る話は少ない。前の世界の話をするわけにはいかないし、来てからの話など更にするわけにはいかない。なのでもっぱら聞き役だった。エミリはに日常の話、どこのパン屋がおいしいとか、住んでいる家の近くのおばさんがマナーにうるさいとか、そんな仕事とは関係ない話をひたすらする。彼女の仕事柄、部外者に仕事の話をするわけにはいかないのだろうし、彼女もそんな話はしたくないのだろう。
そんな他愛もない会話をして、適当に帰る。こんなことを繰り返していた。
闇ギルドの拠点に戻って、エミリと話していた会話をルイスにする。ルイスはあまり聞いていない。俺は疑問になって聞く。
「潜入捜査って何をすればいいのか全然分からないんですけど、これでいいんですか?」
本当に雑談しかしていない。エミリは仕事の話をしないので、情報収集にすらなっていない。ルイスが答える。
「別に、それでいい。そのまま続けてくれ」
そう言うと、モリガンの部屋に向かって行く。
(一体全体、何を考えているんだろうか……)
俺は不気味だった。かと言って、他に何をすればいいのかも分からない。バズとガロも、あの件から一度も見たことが無い。俺の知らないところで何かが進んでいるのだろうが、俺には全くわからない。
雑魚寝部屋のハンモックに揺られて、寝られない頭で考えている。それでも何も分からない。ハンモックに揺られるように、何かの流れへ乗った船に揺られて進んでいる。
そんな生活を1か月ほど続けていた。
俺に会った時、エミリが言った。
「ドナルドの用事って、そんなに時間が掛かってるの?」
俺は内心で少し焦りながら答える。
「うん、なんか先方が忙しいみたいで、妙に待たされてるんだ……俺もちょっと事情が分からなくて、少し困ってる」
これは割と本心だ。そんな俺に、エミリが笑顔で言う。
「でも、私はちょっと嬉しいかも」
俺はドキっとした。俺も思っていたのだ。こんな日が、ずっと続けばいいのに、と。
だが、そんな事にはならなかった。闇ギルドの拠点に帰ってルイスにいつものように報告すると、いつもとは違う指示が返ってきた。
「よし、準備は良さそうだな。次はモリガンへ会いに行け。彼女から次の指示が来る」
それを聞いて、俺はモリガンの部屋に向かう。そして、その場違いなほど豪華な扉を開けた。
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